2011年3月4日金曜日

Amazonのクラウド売上げは$500~600M?
          -ついにAWS Tokyoセンターがオープン-

Amazonから2010年の速報値が発表になった。
正式な会計報告書は4月中旬となるが、今回の速報とこれまでの会計報告書から同社のクラウド AWS(Amazon Web Service)の売上げを分析してみようと思う。ただ、残念ながら、Amazonは詳細な商品別売り上げは公表していない。ここでの分析はあくまでも推測である。

◆ 会計報告書から解ること
これまでの報告書に従えば、Amazonは、販売地域を北米大陸(North America)と
その他(International)に区分し、合計値(Consolidated )を総売り上げとしている。そして、地域売上げには、①メディア(Media)、②エレクトロニクスと物販(Electronics and General Merchandise)、③その他(Others)の3つがある。例えば、電子書籍リーダー「キンドル(Kindle)」の購入はエレクトロニクスに、その後のコンテンツ購入は
メディアに計上されるといった具合だ。問題のクラウドAWSは「その他」勘定への計上となる。これには本業のAmazonサイトによる オンライン小売業以外のマーケティングやプロモーション、AWS、他セラーサイト、Amazonクレジットカード(Co-Brand)などが
含まれている。


◆ 「その他」項目を見極める
ここで「その他」の項目に注目すると、2010年度は$953M、2009年度は$653Mだ。
つまり、昨年度のAWS売上げは$953Mが上限で、1㌦82円で換算すると781.46億円となる。 「その他」項目全体では、前年比45.9%の増加だ。問題は、「その他」には前述のようにAWS以外のものが含まれている。この不純物をフィルタリングするために、過去の「その他」データを参考にしよう。AWSのストレージサービスS3が発表されたのは2006年3月、コンピュートサービスのEC2は同年8月だった。しかし、この年は始まったばかりであり、かつ下期にEC2が登場したため、殆ど数字になっていないはずだ。AWSリリース前年の2005年度分の「その他」は$230M、2006年は$283M、さらに遡ると、2004年は$132M、2003年は$111M、 2002年は$87Mとなっている。そこで、AWSリリース以前の「その他」の年平均成長率CAGRを計算すると、2004年($132M)と2005年($230M)の間がほぼ倍増ということもあって、2002-2005年では38.3%、それ以前の2002-2004年は23.2%となる。この数値がフィルタリングには使える。

◆ AWSの売上げが見えた!
ここで仮にCAGR=23.2%を採用して、その後の計算をすると2010年度は$461M、従って、AWSの売上げは約$500M(953-461= 492)となる。右図のピンク線のグラフ推移である。しかし「その他」の多くがAmazonブランド (正確にはCo-Brand)のクレジットカード売上げだと考えると、初期はともかく徐々に落ち着くはずだ。
そこで、もう少し控えめにCAGR=20%としよう。
この場合、2010年度の値は$374M、そして推定AWS売上げは約$580M(=953-374)、右図の青線グラフだ。以上のことから、AWS推定売り上げ額は、$500M~$580Mの範囲と見るのが妥当であろう。邦貨では410億円~475億円(1㌦82円換算)となる。
もちろん、これはあくまで会計情報から読める範囲であり、実際の数値との乖離は否めない。しかし、AWS全体の伸び傾向は確かだ。AWS開始後の2007年以降の「その他」CAGRは、35.3%と大きく、さらに2009年と2010年では45.9%と伸びている。こうなるとAWS売上げは幾何級数的に伸びて、今年度(2011年)は$800Mを軽く超えてくるだろう。

◆ AWS Tokyoセンターがオープン
そして、ついにAWS Tokyoデータセンターが3月3日、オープンした。
新センターでは、一部の機能を除いてAWSのほとんどが提供される。発表内容を知らせるAWSブログによると、日本市場の特徴である高速で低レイテンシーな環境を提供し、さらにセキュリティーやコンプライアンスが絡むストレージの国内設置が可能となる。
まさに新たな時代の幕開けだ。
前掲の会計報告書を良く見ると、今回大きく伸びたのは、米国市場($550M→$828M)の貢献だ。ヨーロッパとアジアなどを含めた国際部門は、2009年が$103M、2010年は$125Mでしかない。ヨーロッパのAWSセンターは、現在、アイルランドのみ。アジアのシンガポールセンターの需要の半分は日本だと聞く。東京を加えてアジアのAWSセンター2つとなった。本年度決算でその効果が出てくるのが楽しみである。