この背景には同社の好調な営業活動がある。
◆ Rackspace、2010年度決算
2月10日に発表された2010年度決算
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この好調の要因となっているのはその戦略 である。
ひとつは価格(提供インスタンス)の細かさ、もうひとつはサービスだ。
Rackspaceの提供するクラウドはAmazon Web Service(AWS)に比べて、インスタンスの種類が多い。AWS最小のSmall Instance(32ビット)は$1.7GBのメモリーと160GBのディスクで¢10($0.10)だが、Rackspace Cloudでは、これ以下にメモリーが256MB、512MB、1GBと3つの仕様(全て64ビット)がある。最小なら256MBのメモリーと10GB ディスクで¢1.5($0.015)-月額$10.95、つまり、1ヶ月使ってたった1,000円だ。さらにEC2のSmallとLargeの間に2つ、 LargeとExtra Large間に1つ、Extra Largeの上に1つと多様なインスタンスが揃っている。昨年9月にAmazonが発表したMicro Instanceはこれへの対抗と考えてよい。サービス面でもAmazonが対応していないホス ティング同様のManaged Service、3rd Party Software Support、ホスティングで使用するDedicated Serverとのハイブリッドなどが武器だ。
◆ Anso Labsの買収とOpenStack
そして2 月11日、RackspaceがAnso Labsを買収すると発表した。
Anso Labsは同社がNASAと進めるクラウドインフラOpenStackのキーコントリビュー タである。
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そのた めの第3版=Cactus=のリリースをどのように円滑に行うか、これが上手く行かなければプロジェクトは成功しない。Anso LabsのCEO Jesse Andrews氏は、ソシアルブラウザーFlockの 元リードアーキテクト、COOのSoo Choi女史は、コンサル企業Booz Allen Hamiltonの元役員で大規模プロジェクト管理のプロである。この2人がAnso Labsの共同創設者だ。さらにNebula Nova開発のリードエンジニアはAnso LabsのVishvananda Ishava氏だ。彼らがこれまで以上、積極的にプロジェクトに関与すればOpenStackは離陸するだろう。
しかしこの買収で OpenStackの運営がどうなるのか、心配がないわけではない。
プロジェクト最上位のOpenStack Architecture Boardは4人で構成され、これまではRackspaceから2人、Anso Labsから1人、Citrixから1人だった。この買収で3/4がRackspace側の人間となった。同様に9人構成のProject Oversight CommitteeもこれまではAnso Labsが3人、Rackspaceから5人、Citrixから1人だったが、今度は8/9がRackspace側だ。買収発表後、Rackspaceは プロジェクトへの説明を繰り返し、この買収はプロジェクトへの貢献のためだとしているが、それでもメンバー構成には今後一考がいるであろう。
◆ Cloud Kickの買収
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複数のクラウドやオンプレミスのサーバーを一元的に管理できるサービスである。対応するクラウドはAmazonやlinode.com、GoGrid、SoftLayer、Slicehost、 Rackspace、RimuHosting、VPS.NETの8社だ。これらのクラウド上のサー バーをダッシュボードでモニタリング(Server Name & Status、IP Address、CPU、Memory、Disk etc)したり、追加/削除などの管理ができる。Cloud Kickのモニタリングの仕組みは、サポートするクラウド提供の運用管理APIを利用して行うが、これも前回述べたRightScaleのようにバラバラ な仕様を繋ぎ合せるのは容易なことではない。
このようなモニタリングでは、オープンソースのNagiosやHyperic、Ground Work、Zenossなどが有名だが、差異はアクセス方法と狙いだ。NagiosなどはSNMP (Simple Network Management Protocol)など多様なネットワークプロトコルを用いて、ネットワークシステム全体を詳細にモニタリングする。一方Cloud KickはクラウドAPIを用い、運用の実務管理という視点から、ひとつのダッシュボードで全てのサーバーが色分けされて管理ができる。かつ、オンプレミ ス監視用にはDebian、Ubuntu、CentOS/RHEL、Fedora、Gentoo、Windowsのエージェントも用意されている。
◆ 目指すはハイブリッドクラウドマネージメント
Rackspace によるCloud Kick買収はAmazonへの対抗だという声もある。
確かに、この買収に先立ち昨年12月3日、AmazonはCloudWatchの機能追加を発表した。この追加でEC2やEBS(Elastic Block Store)、RDS(Relational Database Service)、ELB(Elastic Load Balancer)などのメトリックにアラームやアクションの設定が可能となり、EC2監視の一部も無償化となった。勿論、CloudWatchはAWS だけだが、追う立場のRackspaceはそれでは不十分である。この買収でマルチクラウドをカバーし、その中にはRackspace Cloudだけでなく、傘下のSlicehost(2008年に買収)も含まれている。そして、自社のホスティングを加えたハイブリッドクラウドのマネー ジメントも視野に入った。
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Rackspaceの動きは好調な営 業活動に支えられている。
同社のクラウドの伸びは前年比80%増に近い。Amazonの伸び(1月末速報)も大きく、
(クラウドの個別値は公表されていないが)、推定(当方の試算)では前年比45%程度の増加と見られる。
今回報告した2つの買収は、Rackspaceにとって大きな意味を持 つ。
Anso LabsはOpenStackの実用化に向けたプロジェクトの補強であり、今後の運営が注目だ。OpenStackは通常のオープンソースプロジェクトと は違う。時間に余裕がないからだ。何としても年内に、新たなクラウドインフラの地位を築きあげなければいけない。もうひとつのCloud Kickの買収、これは即戦力としての活用が期待されている。
いよいよクラウドは本物になってきた。