2011年4月4日月曜日

クラウドプレイヤーのポジション分析(2) 
             -Magic Quadrant for Analysis-

前回に続き、クラウドプレーヤーのポジション分析を見ていこう。
分析にあたってMagic Quadrantでは利用形態と市場を以下のように定義している。

◆ 利用形態
クラウドユーザーの利用形態は以下の3つだ。

=Self-Managed IaaS=
セルフマネージの利用形態では、まず自己設定 (Self-Provision)や自己運用(Self-Manage)が前提だ。つまり自分でクラウドにかかる殆どの処理出来ること。その上で機器購入やデータセンター利用の代わりとしてクラウドを使う。大方は開発やテストが目的だが、中には自動化や拡張性、俊敏性などを利用した複雑なアプリケーションの本番もある。

=Lightly Managed IaaS=
次に、ライトマネージの利用形態では、ユーザーはSelf-Managed IaaSと同様の機能を要求するが、運用に関しては全を実行することを望まない。通常、彼らのスキルはパッチレベルであり、難しいセキュリ ティー管理などは用意されたメニューを利用する。これら幾つかの運用サービスは近い将来自動化される見通しだが、現時点では手作業であり、もっと も一般的な利用シナリオである。

=Complex Managed Hosting=
この利用形態は典型的な従来型Webホスティングユーザー向けで、彼らは複雑な要求を持っている。例示すると、高度な企業Webサイトや会話型マーケティング、さらには
ダイナミックアプリケーションポータルやコラボレーション、サプライチェーン、eコマース、SaaSなどだ。しかし、これら全てをサポートできるところははない。ニッチプレイヤーには優れたものもあるが部分的であり、実際にはどこが自分の要求にマッチするのかを見極めることさえ難しい。


◆ 市場の定義
次 に市場についての定義は以下のようだ。

=Colocation=
ここで言うコロケーションとは、データセンターの場所(Facility)置きだけでなく、関連するWANやLANなどの機器も含まれる。

=Dedicated Hosting=
ファシリティーとネットワーク、そして専用サーバー(Dedicated Server)を用意し、加えてマネージド&プロフェッショナル・サービスをオプション(下記参照)として提供する。

=Utility Hosting=
これにはファシリティーとネットワーク、ユティリティーコンピューティング・プラットフォーム が含まれる。このプラットフォームはハイパーバイザーによる仮想化などで他ユーザーと共有され、オンデマンド利用ができる。また、往々にして専用サー バー(Dedicated Server)と共に提供され、Dedicated Hosting同様、サービスオプションがある。

=Cloud IaaS=
ユティリティーホスティング同様にファシリ ティーとネットワークを含み、オンデマンド利用で、専用サーバー(*1)か仮想型(*2)が選択出来、共にマルチテナントの弾力性のあるプラットフォー ム(Elastic Platform)である。ここで弾力性とは、オンデマンドで自由にスケールアップ/ダウンができることを言い、この仮想データセンターを管理するGUI かAPIが提供される。勿論、サービスオプションが提供される。
                 *1)Hosted Private Cloudを指す、 *2)所謂、Public Cloudを指す

サービスオプション(マネージド&プロフェッショナル)
  1. サーバーOSの管理
  2. Webサーバー、APサーバー、DBサーバーなどインフラソフトの管理
  3. バックアップ&リカバ リーを含むストレージの管理
  4. セキュリティーの管理
  5. APデリバリーコントローラーなどネットワーク機器の管理
  6. アーキテクチャー、キャパシティープランニング、パフォーマンステスト、セキュリティー監査、データセンター移行など、ホスティングに関するプロフェッショナルサービス

◆ プロバイダーの強みと留意点
このような条件をベースとした各プロバイダーの概要と評価、推奨は以下のようになる。
(アルファベット順)

=Amazon=   
AmazonのクラウドIaaSはXen ベースで、自動化と廉価なコモディティープラットフォームというビジョンを純粋に追求したものだ。利用上、契約のコミットは要らないが、一方でマネージドサービスやコロケーション、専用サーバーと組み合わせるオプションがないので、本格的な利用にあたっては注意が要る。
Recommended Use(推奨適用例);
-Scale Out Computing
-Self Managed IaaS for Test and Development

=AT&T=
AT&Tはグローバルキャリアのホスティングビジネスリーダーとして、長い経験(2006年、当時最大手だったASPのUSiを買収)を持ち、コロケーション、専用サーバーによる
マネージドホティング、VMwareベースの仮想ホスティングSynaptic Hosting、クラウドIaaSはSynaptic Compute as a Service(CaaS)を提供。AT&Tはクラウドに強力なコミットメントをしているが、セールスとサービス/サポート間の融通性に欠ける面が見られる。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS for Web-based Applications
-Lightly Managed IaaS
-Complex Managed Hosting
-Enterprise Application Hosting

=Carpathia Hosting=
Carpathiaは小柄ながら独立系Webホス ティングとして、中規模市場と政府系に絞ったCitrix XenベースのクラウドIaaS、コロケーション、マネージドホスティングを提供。強みは政府系のセキュリティー規格やコンプライアンスに準拠していること。ただ、同社のAPIはユニークなため3rdパーティとの互換性が低い。
Recommended Use;
-Solution that have Significant Compliance Requirements,
 Especially in the Public Sector
-Managed Hosting with Significant Cloud Component

=CSC=
大手SIerのCSCはアウトソーシ ングに強みを持つ。同社のクラウドIaaSはVMwareベースで多様なサポートを幅広いユーザー層に提供、開発やテスト環境には定評のあるSkytapも提案。課題はサポート力の強化と先進的なポートフォリオの実績作りである。
Recommended Use;
-Enterprise Application Hosting
-Cloud IaaS, Especially Test and Development

=Datapipe=
Datapipeは小さいけれど、コロ ケーション、マネージドホスティングで急速に伸びているWebホスティング企業だ。それらの経験をAmazon上でマネージドサービスとして開始し、またVMwareベースのプライベートクラウドStratoSphereも提供している。同社自身はパブリッククラウドを提供していない。
Recommended Use;
-Mainstream Managed Hosting
-Amazon IaaS as a Managed Service

=GoGrid=
GoGridは小型独立系プロバイダーで Xenベースの低価格なパブリッククラウドを運用、他にプライベートクラウドやマネージドホスティング、コロケーションも提供している。
同社のク ラウド&ホスティングのハイブリッドには定評があるが、一方でエンタープライズ分野ではVMwareが強くvCloud Directorのサポートを望む声がある。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Lightly Managed IaaS
-Managed Hosting where there is a Significant Cloud Component
 to the Solution


=Hosting.com=
Hosting.comも小型独立系で、 VMwareベースのパブリック/プライベートIaaSとコロケーション、マネージドホスティングなどを提供。ターゲットは中小企業市場で、自動パッチ管理や災害対策などのオプションがある。現在、上位市場に移行中であるが米国外にデータセンターはない。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Lightly Managed IaaS
-Simple Managed Hosting
-Cloud-based Disaster Recovery

=IBM=
IBMは一部でコロケーションやマネージドホスティングを提供。クラウドIaaSはユースケース別に対応。同社運営の開発テスト用クラウドサービスではRationalやTivoliが統合されている。またComputing on Demandサービスではスーパーコンピュータのクラウド需要に対応しているが、現時点では全体的にクラウドIaaSよりSaaSなどのソリューションに力点を置いている。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS for Test and Development,
 or High Performance Computing
-Very Complex Managed Hosting
-Enterprise Application Hosting

=Joyent=
Joyentは小型独立系プロバイダーながら、独自開発スタックによるSolaris ContainerベースのパブリッククラウドSmartMachinesを提供(WindowsとLinuxはKVM経由)。同社はエンジニアリングに定評があり、サポートは優秀、ただ規模的な制限がある。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS for Web-based Applications,
  Particularly where Scalability is Important.

=Layered Tech=
Layered Techも同様に小型独立系。XenベースCA-3TeraのAppLogicを採用したクラウドIaaSを提供 し、ターゲットは中小企業。 AppLogicは基本的にLinuxの仮想化のみだが、VMwareやHyper-Vについてはマネージドホスティングとして対応している。
Recommended Use;
-Simple Managed Hosting

=Media Temple=
Media Templeは小型独立系のWebホスティングとして、Parallelsの仮想化をベースにしたクラウドIaaSを提供、主にWebコンテンツに力点をおいた低価格エントリークラウドとして定評がある。
Recommended Use;
-Marketing Micro-sites where low-cost Elastic Scalability is a Requirement

=NaviSite=
独立系のNaviSiteはVMware ベースのパブリッククラウドNaviCloudを提供、中小企業のアプリケーションホステイングに焦点を置きつつ、専用サーバーから徐々にNaviCloudへ移行、クラウド利用のマネージドアプリケーションサービスを提供している。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Managed Hosting
-Enterprise Application Hosting

=NTT Communications=
NTT Communicationsはグローバルキャリアとして大企業向けにコロケーションや
マネージドホスティングを提供。プラットフォームの統合によって、NTT America、NTT Europe、NTT Asiaの壁がなくな り、多国籍企業向けサービスは好転の模様、クラウドはVMwareベース。投資先のOpSourceにはパブリッククラウドがある。
Recommended Use;
-Complex Managed Hosting, where a Global Data Center Footprint
and Network are important Requirement

=OpSource=

OpSourceも小型独立系。これまではISV向けにアプリケーションをSaaS化して提供するプロバイダーとして市場を開発し、このところはエンタープライズ市場向けにIaasクラウドも提供。さらにクラウドのOEMパートナーの開発にも乗り出している。
Recommended Use;
-Managed Hosting for SaaS Providers
-Self Managed IaaS

=Rackspace=
独立系大手ホスティングのRackspaceはマネージドホスティング市場のリーダーの1社。クラウドでもマネージドホスティングを得意とし、XenベースのクラウドIaaS (Cloud Servers)、PHPや.NET向けなどのPaaS(Cloud Sites)、e-Mailホスティング、SharePointホスティング、クラウドストレージ(Cloud Files)、一般向けにはクラウドベースのバックアップ(JungleDesk)を提供。そして、NASAと連携してオープンソースのOpenStackをスタートさせている。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Managed Hosting, Especially where Customer Service is a Priority

=SAVVIS=
独立系最大手ホスティングプロバイダーのSAVVISは、コロケーション、マネージドホスティングに絶大な実績を持つ。同社のプロダクト/サービス・ポートフォリオは幅広く、VMwareベースのクラウドIaaS(Symphony)にも適用、ターゲットはエンタープ ライズ市場。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Complex Managed Hosting
-Enterprise Application Hosting


=SoftLayer=
小型独立系SoftLayerはセルフマネージメント型のホスティングやCitrix Xenベースのパブリッククラウド(CloudLayer)、VMwareのプライベートクラウド(Virtual Enterprise Rack)を提供。昨年、ThePlanetを買収して、コロケーションやマネージドサービスも開始した。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Self Managed Hosting

SunGard=
SunGardは従来型アウトソーシングプロバイダーの大手として、ビジネス継続計画
(Business Continuity Plan)ソリューションに力を入れ、これらを活かしたコロケーションやマネージドホスティング、さらにVMwareベースのクラウドIaaSを提供している。
Recommended Use;
-Enterprise Application Hosting

=Terremark Worldwide=
Terremark Worldwideは独立系大手ホスティングプロバイダーとして、コロケーション、マネージドホスティング、そしてデベロッパー向けパブリッククラウドのvCloud Expressを提供。同社はVMware との資本関係から重要なパートナーであり、vCloud Datacenterの認定プロバイダーでもある。公共向けやデフェンスなどの市場を得意としている。
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Complex Managed Hosting

=Verizon Business=
同社はVerizonグループの企業ビジネスを担当、コロケーションやマネージドホスティングで多く の実績を持つ。企業向けクラウドIaaSはVMwareベースのCaaS(Computing as a Service)を提供。同社もVMwareのvCloud Datacenter認定プロバイダー。
(2011 年1月末、Terremarkの買収を発表)
Recommended Use;
-Self Managed IaaS
-Lightly Managed IaaS

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以 上、米国市場には多様なクラウドプロバイダーがある。
仮想化技術ではXenとVMwareが伯仲し、Solaris Containerもあれば、ParallelsやAppLogicもある。ターゲットユーザーも大企業から、中小企業向け、さらにデベロッパー向けなどに細分化、使い方もセルフマネージメントから複雑なコンプレックス・マネージドホスティングまである。このような多様化によってユーザーの要求を満たさな ければ生きられない。これが現実だ。そして、VerizonによるTerremarkの買収劇が今後も起こることは間違いない。これからが最後の生き残り を賭けた戦いである。