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◆ 統合モニタリングアーキテクチャー(Unified Monitoring Architecture)
2009年、Nimsoftは事業拡張のためCittioからNetwork DiscoveryやTopology Mapping、RCA(Route Cause Analysis)などのIP-Intellectual Property (知的財産)を取得、これによって大きく成長し始めた。Nimsoft製品をひとことで説明すると、「クラウド固有の問題に焦点を当てているCloud Management製品と、きめ細かな監視が可能なオープンソース系のモニタリング製品を統合」した
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さて、同社の提供するNUM(Nimsoft Unified Monitoring)に話を進めよう。
NUMは導入企業の社内外のITリソースを統合的に監視する。社内にあっては、オンプレミスの機器類やPrivate Cloud、社外はAWS、Windows Azure、Salesforce.com、Google App Engine、Rackspace、SoftLayer、1&1、EN*KIなどの多様なPublic Cloudを監視する。
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NUMを構造的に見ると、下図のように3層となっている。
中央がNUMの全体をコントロールするApplication Layer、つまり、本体エンジンだ。
下段はNimsoft Probeと呼ばれるData Collection Layer、上段は採取データを整理してDashboardやReportとして表示するPresentation Layerである。実際のデータ収集をするNimsoft Probeは、自営センター機器や搭載されているOS、Databaseなどを監視する“Datacenter”部、VMwareやWindows Hyper-V、Citrix/Xen、さらにはSolaris ZoneやIBM Power VMの仮想化技術とインターフェースしてデータを採取する“Virtualization”部、AWSやGoogle、Rackspace、 Salesforceなど外部クラウドやWebアプリケーションをモニタリングする“Cloud & SaaS”部等から構成されている。
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◆ 望まれる運用管理とは
以上のように、統合モニタリング環境はユーザーにとってもクラウドプロバイダーにとっても魅力的なものだ。企業ユーザーでみれば、Private Cloudの運用だけなら、VMwareやCitrixなどの仮想化技術ベンダーが提供する運用管理で十分だが、実際にはそうは行かない。多くの米企業の動きをみると、第1段階で ①自社データセンターに仮想化技術を導入し、次に ②AWSなどのPublic Cloudを試用した。これによってクラウドの有用性を理解し、現在は ③Public Cloudとオンプレミス(含む仮想化)の混用の状態か、一部でPrivate Cloudの導入が始まったところだ。ここでのポイントは、Publicとオンプレミス(含むPrivate Cloud)がハイブリッドとなり、これをどうコントロールするかという点だ。「タテとヨコの戦い」で述べたRight ScaleやNimbulaなど、さらには「成功するかマルチハイパーバイザー管理」に出てくるAbiquo、Convirture、Enomalyなど多くのベンダーが参入している理由はここにある。
◆ も うひとつの課題
もうひとつ、クラウドプロバイダーなど大型データセンター運用で大事な要件は、物理環境と論理環境の統合だ。「運用管理領域の改善は進むか」で述べたように、この分野には、現在、2つの勢力がある。IBM Tivoliを筆頭にHPやCA、BMCなど各種サーバーやネットワークなどの物理環境を得意とするもの。もうひとつは、仮想化ベ ンダーが開発提供してきた製品群で、論理的な仮想マシンの作成・実行などの運用に焦点が当てられたものだ。大型データセンターでは、この2つを使い分けながら運用し、これに加えて一部をオープンソース系のNagiosやopenNMS、Zenoss、GroundWorkなども併用している。この煩わしさは想像を超える。今回、紹介したNimsoftのUnified Monitoringなどの利用によって、このような課題は部分的に解決される。さらにもう少し進めば、クラウド利用の企業も、提供するプロバイダーも効果的な運用が出来る時代になるだろう。