2011年4月13日水曜日

統合モニタリングを目指すNimsoft

今回はNimsoft(現CA傘下)の統合モニタリングについて紹介しよう。
Nimsoftはオンプレミスからクラウドまでをカバーする総合システムだ。同社はモニタリングベンダーとして、1998年、スエーデンのオスロで旗揚げ、 2004年、米ディストリビュータと統合してシリコンバレーにやってきた。

◆ 統合モニタリングアーキテクチャー(Unified Monitoring Architecture)
2009年、Nimsoftは事業拡張のためCittioからNetwork DiscoveryやTopology Mapping、RCA(Route Cause Analysis)などのIP-Intellectual Property (知的財産)を取得、これによって大きく成長し始めた。Nimsoft製品をひとことで説明すると、「クラウド固有の問題に焦点を当てているCloud Management製品と、きめ細かな監視が可能なオープンソース系のモニタリング製品を統合」したものだと思えば良い。このため、一部アナリストからは、システム運用管理分野で、CAやBMC、HP、IBMに次ぐ製品として注目されていた。この点を評価し、2010 年3月、CA Technologiesが同社を買収した。CAは、周知のようにシステム運用管理のCA Unicenterで名を馳せ、現在はIT Management Solutionsとして、バックアップ&リカバリーからサービスマネージメントまで、幅広いソリューションを提供している。このような環境から、一時はCAの製品群にNimsoftがマージされるのではないかと思われたが、現在のところそれはないようだ。Nimsoftの経営陣はほとんど変わらず、買収後も共存するEMCとVMwareの関係に似ている。

さて、同社の提供するNUM(Nimsoft Unified Monitoring)に話を進めよう。
NUMは導入企業の社内外のITリソースを統合的に監視する。社内にあっては、オンプレミスの機器類やPrivate Cloud、社外はAWS、Windows Azure、Salesforce.com、Google App Engine、Rackspace、SoftLayer1&1EN*KIなどの多様なPublic Cloudを監視する。


NUMを構造的に見ると、下図のように3層となっている。
中央がNUMの全体をコントロールするApplication Layer、つまり、本体エンジンだ。
下段はNimsoft Probeと呼ばれるData Collection Layer、上段は採取データを整理してDashboardやReportとして表示するPresentation Layerである。実際のデータ収集をするNimsoft Probeは、自営センター機器や搭載されているOS、Databaseなどを監視する“Datacenter”部、VMwareやWindows Hyper-V、Citrix/Xen、さらにはSolaris ZoneやIBM Power VMの仮想化技術とインターフェースしてデータを採取する“Virtualization”部、AWSやGoogle、Rackspace、 Salesforceなど外部クラウドやWebアプリケーションをモニタリングする“Cloud & SaaS”部等から構成されている。

このNUMを構成する3つの層には、同社独自のインターフェース(Unified Monitoring API)があり、これを利用することでクラウドプロバイダーは、彼らが開発した運用システムと連携させて総合的な運転を実行したり、3rd Partyでは独自ソフトウェアを開発して提供することができる。


◆ 望まれる運用管理とは
以上のように、統合モニタリング環境はユーザーにとってもクラウドプロバイダーにとっても魅力的なものだ。企業ユーザーでみれば、Private Cloudの運用だけなら、VMwareやCitrixなどの仮想化技術ベンダーが提供する運用管理で十分だが、実際にはそうは行かない。多くの米企業の動きをみると、第1段階で ①自社データセンターに仮想化技術を導入し、次に ②AWSなどのPublic Cloudを試用した。これによってクラウドの有用性を理解し、現在は ③Public Cloudとオンプレミス(含む仮想化)の混用の状態か、一部でPrivate Cloudの導入が始まったところだ。ここでのポイントは、Publicとオンプレミス(含むPrivate Cloud)がハイブリッドとなり、これをどうコントロールするかという点だ。「タテとヨコの戦い」で述べたRight ScaleやNimbulaなど、さらには「成功するかマルチハイパーバイザー管理」に出てくるAbiquo、Convirture、Enomalyなど多くのベンダーが参入している理由はここにある。

◆ も うひとつの課題
もうひとつ、クラウドプロバイダーなど大型データセンター運用で大事な要件は、物理環境と論理環境の統合だ。「運用管理領域の改善は進むか」で述べたように、この分野には、現在、2つの勢力がある。IBM Tivoliを筆頭にHPやCA、BMCなど各種サーバーやネットワークなどの物理環境を得意とするもの。もうひとつは、仮想化ベ ンダーが開発提供してきた製品群で、論理的な仮想マシンの作成・実行などの運用に焦点が当てられたものだ。大型データセンターでは、この2つを使い分けながら運用し、これに加えて一部をオープンソース系のNagiosやopenNMS、Zenoss、GroundWorkなども併用している。この煩わしさは想像を超える。今回、紹介したNimsoftのUnified Monitoringなどの利用によって、このような課題は部分的に解決される。さらにもう少し進めば、クラウド利用の企業も、提供するプロバイダーも効果的な運用が出来る時代になるだろう。