2013年10月17日木曜日

SDNかNFVか、ネットワークベンダーはどう動くか!

今や話題先行気味のSDNSoftware-Defined Network)に対し、NFVNetwork Functions Virtualization)が静かに浸透しつつある。このNFV(White Paperは、AT&T(米)やBT(英)、CenturyLink(米)、China Mobile(中)、Colt(英)、Deutsche Telekom(独)、KDDI(日)、NTT(日)、Orange(仏)、Telecom Italia(伊)、Telefonica(スペイン)、Telstra(オーストラリア)、Verizon(米)などが参加するインダストリーコンソーシアムが、自ら抱える課題解決のために考え出したものである。キャリアやプロバイダーが展開するセンターには、ネットワーク機器群が所狭しと並び、それらの保守管理、さらには増設には気が遠くな る作業が伴う。NFVでは、これら機能をソフトウェア・アプライアンス化し、統合サーバーの仮想空間などで稼動させる。
周知のようにSDNは、自由なネットワーク環境を求める研究者などが考え出したものだ。この2つについて、曰 く、SDNはソフトウェアの視点から、NFVはハードウェア(機器)からのアプローチでだとするもの、SDNは上からでNFVは下から、さらには、SDN は理想論、NFVは現実論だともいう。これに関連して、White Paperに興味ある関連図(右)がある。NFVチームが纏めたものだ。この図では、SDNはネットワークの抽象化で積極的な改革を目指し、NFVは CAPEX(Capital Expenditure-不動産設備投資)やOPEX(Operating Expense-運営費)の改善、さらには設置スペースと電源消費の削減が目的であるとしている。そしてSDNもNFVも、外部企業によるOpen Innovationによって競合力を作り出さなければいけないとし、つまり、2つは競合するものではなく、共にオープン化によって進化・共存ができると 説明する。さて、実際のところ、大手ベンダーはどう動くのだろう。

 =Cisco Systems=
時代の転換期にさしかかり、Ciscoの動きは複雑だ。NFVが基本のような立場にありながら、CiscoはXNC(eXtensive Network Controller)を出してSDN分野への積極的な進出を思わせたり、さらにはNexus 1000VによるVXLANサポートでVMware連携も実現させた。しかしこれらはCiscoがNFVを基本としながらも複合的な独自戦略を進めるというサインである。鍵となるのはCisco UCS(Unified Computing Server)だろう。このサーバーにNFVのアプライアンス群を統合して搭載し、省スペース、省エネを図る戦略だ。Ciscoは搭載ソフトを探すため、外部ソフトウェアベンダーとも積極的に交渉している。また、以前からCiscoと関係が深く、最近、再投資が行われたスピンイン企業Insieme Networksも要注意だ。この会社ではSDN関連製品が開発されている。このようにCiscoは多面的な戦略を採る。この記事ではその鍵はCisco UCSだと予測した。CiscoとEMC/VMwareの3社が設立したVCEという会社を思い出して欲しい。VCEのVblockはCiscoサーバーにVMwareを載せてEMCのストレージを繋ぎ、高信頼性を売りにした。しかし、VCEビジネスは上手くいっているとは言い難い。こんどこそ、UCSビジネスを前面に押し出せる絶好のチャンスである。

=Brocade Communications= 
このところBrocade Communicationsは、CiscoSDNが気になってきた
同社の基本戦略はNFVだが状況は流動的だ。BrocadeはASICベースの高速ファイバーチャネルスイッチやイーサネットスイッチなどを得意する。そのBrocadeがVyattaを買収したのは昨年11月。そしてvRouterを 手に入れた。この有名なアプライアンスはオープンソースで開発され、ルーティング、ファイアウォール、VPNなどの機能を持ち、殆ど全ての仮想環境で動作 する。vRouterは世界中で100万ダウンロード、AWS上に展開して利用するユーザーも多い。Brocadeはこれを基点に自社製品をアプライアン ス化し、時代の流れに乗る戦略だった。実際のところ、ロードバランサー機能を持つApplication Delivery Controller ADXはソフトウェアアプライアンスとして、年末にはリリース予定だ。しかし、この流れだけでは市場状況に適合するのははキツイ。そこでOpenStackとの連携を強化、VCS、Virtual ADX、Vyatta vRouterのNeutronプラグインの提供を開始した。ただ、これもNFV戦略の延長である。本来のSDNとしてはOpen vSwitchの対応が済み、次はOpen Daylight待ちだ。
問題はCiscoがどう出るかである。
=Juniper Networks=
Microsoftに16年在籍したKevin JohnsonがCEOとしてJuniper Networksに参加したのは2008年9月。まったくのソフトウェア人間だ。どうやってハードウェアに囲まれたネットワーク機器の世界を改革するのか、それが課せられた課題であった。その彼が昨年12月、極秘(ステルスモード)でSDN関連製品を開発していたContrail Systemsの買収を決めた。そして今年9月中旬、Juniperの新ネットワーク戦略が姿を現した。この戦略はNFVを基本にシステム全体をSDNコンセプトに適合させ、そして同社をソフトウェア会社に変身させる野心的なものである。
買収したContrailは中核となるSDNコントローラーを開発し、NFVの各種アプライアンスが仮想マシン上で稼動する。Juniperから見るとOpenFlowはプロトコルのひとつ。実際のネットワークにはBGPXMPPが使われており、Contrailはこれらにも対応する。Contrailは有償のラセンス版だけでなく、オープンソース版も登場。このために組織化したOpenContrail.orgからダウンロードが出来るし、これによって3rd Partyを巻き込んだCloud SDNのエコサイクル構築を狙う。発表のもうひとつの衝撃はこのエコサイクルを具現化したIBMとの提携だ。IBM SmartCloud OrchestratorとContrail SDN Controllerが統合され、クラウドからネットワークまでの新しい形が現れた。この新サービスはIBMからユーザー企業やクラウドプロバイダー向け に提供される。ソフトウェアライセンスも大きく変わった。これまでのライセンスは、該当機器と対になり、その保証も限定的だった。新たなライセンスでは、 どのように使用しても良く(Full Use/Elastic)、譲渡可(Transferable)、かつ、期間中は永久保証(lifetime Assuarance)である。Juniperは、これまでキャリアや大手企業向けに高性能ルーターやスイッチ、IDSUTMなどのセキュリティ製品を得意としていた。しかし時代は急激な変化を必要としていた。CEO Kevin Johnsonは、将来を見据え、Contrailを買収してオープンソース化し、それをテコにライセンス改定、エコサイクル構築への道を選んだ。ネットワークの機器屋からソフトウェア屋への変身である。その彼は、路線を引き終わった今年7月末、リタイアを宣言、後は後任に任せるという