10月15日、ついにクラウドストレージサービス老舗のNirvanixがシャットダウンした。倒産Chapter-11の発表からたった2週間後である。
=Announcement(同社ホームページより)=
過去7年間、私たちはクラウドストレージソリューションを提供してきました。しかし、今、私たちはビジネスを終了させなければならないという結論に達しました。そして最善の結果を出すために皆様の積極的な協力が必要です。私たちはお客様がデータを戻されるときでも、IBM SoftLayerやAmazon S3、Google Storage、Microsoft Azureなど他プロバイダーに移される場合でも支援します。特に、私たちはIBMと提携があり、IBMチームは手助けの準備が出来ています。加えて、幾つかのプロバイダーとは、Nirvanixから彼らのサービスに移す高速データ転送を用意しました。私たちは緊急対応チームを設け10月15日まで皆様の移行プロセスのお手伝いをします。電話は(619) 764-5650、営業時間内はカスタマーサポートメニューで2を押してください。営業時間外は(888) 791-0365。もしくはcustomersupport@nirvanix.comにメールをください。最新情報の確認のため、定期的にこのWebページをチェックしてください。私たちは皆様のご支援と忍耐に感謝します。
-Nirvanixチーム
=Nivanixのストレージサービスとは=
ここで念のため、同社のサービスNirvanix SDN(Storage
Delivery
Network)について振り返っておこう。SDNはグローバル配置のストレージ・ノードを利用したクラウドストレージサービスである。世界配置のストレージノードによって、
ユーザーは地域的に分散させてバックアップを採ったり、また、ユーザーアクセスの多い地域のノードにファイルをコピーしてユーザーエクスペリエンスを向上
させることができる。同社が当初想定したアプリケーションは、(1)パワーユーザーやエンタープライズ向けデータバックアップ、(2)コンテンツプロバイダー向けCDN(Content Delivery
Networks)、(3)個人向けデジタルメディアを格納するデジタルロッカー、(4)エンタープライズオンラインアーカイブ、(5)Web
2.0アプリケーション、(6)ストレージサービスプロバイダーへの適用などだった。こうして見ると、初期ターゲットは、パワーユーザーだけでなく、一般というよりはコンシューマー市場向けのサービス開発企業に向けられていたことが解る。
=何が問題だったのか=
Nirvanix(本社サンディエゴ)の設立は2007年7月。初期のVenture Fundは$12M(2007/9)、続くSeries A(2007/12)にはIntel Capitalも参加して$18Mと、この年だけで合計$30M(約30億円)を集めた。
①AWS対抗は上手く行かなかった? ・・・ Nirvanixが見せた初年度の集金力は凄い。これは、同社のサービスが始まったばかりのAmazon Web Service(2006年)対抗を鮮明にしたからであった。当時の同社WebにはS3とNirvanix SDNの比較表を載せ、しきりにプロモーションをしたり、技術的な差を説明していたことからも解る。しかし、時間の経過と共に、人々は優秀であってもクラウドストレージだけというサービスより、AWSやRackspaceなどの総合クラウドサービスに引き寄せられていった。
②多機能が裏目に? ・・・ もうひとつの問題はSDNの多機能にあったようだ。基本のストレージ機能でAWS S3に挑戦しながら、一方で世界展開のマルチノードを用いて、CDN(Content Delivery Network)市場も狙っていた。ここには元祖Akamaiがいるし、挑戦者のLimeLightもいた。
③本当の顧客は誰か? ・・・ このような多面作戦の結果、本当のユーザーが見えなくなった。初期のパワーユーザーとコンテンツデリバリーなどの企業ユーザーから、暫時、一般企業向けに同社方針が移っていったことからもそれは推察できる。
④マネージメントは? ・・・ 以上のような状況はマネージメントの混乱を伺わせる。創業以来、NirvanixのCEOは5人。特に昨年からはひどかった。2010年以来のCEOが昨年12月にOracleに移籍、CSO(Chief Strategy Officer)が今年4月まで暫定CEOとなり、その後、MicrosoftとCiscoで役員だった現CEOが就任した。全ては戦略の問題だったように見える。最近の同社のキャッチフレーズは“Enterprise Cloud Storage Company”である。
⑤再投資へ ・・・ 初期Venture FundからSeries A、そしてBが$5M(2009)、Cは$10M(2011)、さらに昨年5月Series Cとして$25M(約25億円)の調達が行われた。これが最後の生き残りを賭けた投資だった。リードしたのはKhosla
Venturesだ。Vinod KhoslaはSan Francisco Bay Areaで一目も二目も置かれる著名なVCである。彼ほどの男が今回は見誤った。投資総額は$70M(70億円)である。