2013年11月1日金曜日

SDS(Software-Defined Storage)を考える!-SDS1-

SDN(Software-Defined Network)の議論が沸騰し、それに引きずられるように、SDS(Software-Defined Storage)についても話題にのぼるようになった。
しかし、SDN議論のきっかけとなったOpenFlowNFVの定義など顕著な動きはSDSにはまだ見られない。ただ、SDS関連技術の幾つかは新しいものではない。古くて新しいのがSDSである。VMwareのSDD(Software-Defined Datacenter)構想を引用するまでもなく、SDNと並んでSDSは、クラウドだけでなく、これからのコンピュータ技術の重要な構成要素である。

Server VirtualizationのHypervisor開発(上図)はほぼ片がついた(DONE)。SDNは開発途上であり(onging)、SDSはこれ からが本格的な議論である(just started)。この議論には以下のようなポイントがあるように思う。

① ストレージの低価格化
ま ずSDSの進展によってストレージの価格は下がるのだろうか。SDNが叫ばれ始めた動機は複雑で硬直化したシステムの簡素化が主要素だった。SDSでも まったく同様である。この課題解決には、現行ストレージシステムの構造改革が不可欠だ。一方で高価格への不満もある。共に大手ベンダーによる市場寡占が原 因だ。ベンダー固有OSと付帯する各種の機能群、さらには高速化のために開発したASIC、これらは典型的な個別投資によるプロプライエタリーの文化であ る。「複雑化」と「高価 格」、この2つはまさに裏表と言える。これだけコモディティー化とオープンソース化が進みサーバー機器やOS、DBなど基本ソフトウェアの低価格化は徹底 したというのに、ストレージ機器は、ネットワーク機器同様まるでメインフレーム時代のままのようだ。これをSDSでブレークできないか。今やストレージシ ステムの記憶媒体となるお皿のHDDはコモディティーとなった。問題は制御部(Controller)である。
② ストレージの仮想化
その上で、センター内に散在する多様なストレージを何とかしなければならない。これら個別目的に利用されるストレージを統合し、多目的で利用できるシステムが必要である。回答はストレージの仮想化だ。今ふうに言えばConverged Storageである。市場では一部の異なるベンダーのものを仮想化し、共通ストレージ(Storage Pool)とみなす製品が出始めた。もうひとつ、サーバーと同じ手法でHypervisor化する議論も進んでいる。これらの議論がさらに進めばGrid Computingで世界中のPCエンジンの余力を使ってスーパーコンピュータ並の計算をしたように、散在するストレージの余力を寄せ集め、アクセス速度は遅くても、途方もない巨大なストレージが作れるかもしれない。
③ ストレージの高速化
新しい技術との融合も重要なポイントである。
CPU の演算速度の向上には「ムーアの法則」がある。HDDの性能では容量とアクセスタイムが決め手だ。アクセスタイムを決める回転数は7,200rpmから 10,000rpm、そして近年では15,000rpmの製品も出てきた。しかし、HDDの構造はそのままだ。回転数を早くし、それによってシークタイム を改善する。物理的な回転体に頼る技術、そのものがもう限界である。市場には既にフラッシュメモリーとディスクアレイを組み合わせた高速ディスクシステム が多く見られる。そして、フルフラッシュ・ストレージも登場した。SSDの価格低下が進めば、HDDに替わって、フルフラッシュ・ストレージが主役の座に なる日も遠くない。勿論、ストレージの高速化では、それ以外に、インメモリーDBもある。これらを駆使して、Big Data処理を効果的に行おうと、ベンダーは笛や太鼓で宣伝に忙しい。
④ クラウド対応
ストレージの高速化に関連して、もうひとつ大事なことがある。
ク ラウド上のストレージだ。現在、我々は便利なクラウドストレージサービスを沢山手に入れた。バックアップやクリッピング、ファイル共用など数えあげたら切 りがない。しかしこれらは一般向け(Consumer)が主だ。企業(Enterprise)向けではAWSのS3やEBSなどがクラウドサービスの一 環として提供されている。しかし、これらのクラウドストレージにユーザーは満足しているだろうか。容量はともかく、アクセス速度、つまり、レイテンシーに 関する不満は多い。これはクラウドストレージの構造からくる問題で、On-Premiseと比べれば歴然である。

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以上、例示したような視点で議論を重ね、新たな開発が進展することを期待しながら、次回以降、幾つかの技術やベンチャーを紹介していこう。