2013年11月11日月曜日

ZFSを利用したNexentaの低価格ストレージ -SDS2-

SDS(Software-Defined Storage)議論のポイントが幾つかあることは前回述べた。今回はその中でも最重要な低価格化に取り組むベンダーを紹介する。

=Nexentaが取り組むオープンソースZFS=
Nexenta SystemsはSunのオープンソース遺産を継承して始った。狙いは世界最強のファイルシステムZFS(Zettabyte File System)を商用化することである。思えばSunがZFSのコードをオープン化したのは2005年11月。Sunの全盛期、ZFSは最大の武器と言って良かった。アドレッシングにおいてほぼ無限の拡張性を持ち、多機能で信頼性は抜群、その良さを知った米金融機関の多くがZFSの虜となった。Nexentaはこのオープンソースを使って、低価格なストレージシステムを提供する。

=Sunの試み!Open Storage=
「Open Storage」は、Sun再建のため弱冠40歳にしてCEOになったジョナサン・シュワルツ(Jonathan Schwartz)氏が、就任以前から進めていたオープン化戦略の落し子である。(詳細はここ)。2005年初頭、Sun OSのopenSolarisプロジェクトが始動し、その後、Java関連製品も次々とオープン化された。Sunは2008年秋のリーマンショックで満身創痍の中、同年11月、2005年4月に買収したStorageTek製品のオープン化戦略を発表した。これがOpen Storageアーキテクチャーを採用したアプライアンス「Sun Storage 7000」シリーズである。Sun Open Storageはx86機にSolarisとZFSを搭載し、①128bit Addressingによる無限の拡張性、②Copy-on-Write型完全トランザクション処理やEnd-to-EndのCheck Sum機能による堅牢性、③DTraceによるダイナミックな管理性、④DRAM/SSD/HDDのシームレスな階層化とリソース共有(Hybrid Storage Pool)やPipeline/Random Writingなどによる高性能性、さらに ⑤Snapshot/Clone、Compression、Remote Mirroringなどの多彩な機能を持ち、その核となったZFSは究極のファイルシステムと呼ばれた。

=illumosプロジェクト= 
OracleによるSunの買収後(2010年)、ZFS関連のエンジニアの多くはNexentaに移籍した。ZFSを商品化するには課題が幾つかあった。最大はSolarisのオープンソース版であったOpenSolarisが完全でなかったことだ。欠けている要素があった。Sunが始めたOpenSolarisプロジェクトは、結局、この問題を解決せずに、2010年8月、Oracleによって打ち切られた。この後を引き継いだ流れは2つ。ひとつは完全なSolaris互換を目指すOpenIndianaプロジェクト。もうひとつはillumosプロジェクトである。illumosはより現実的にSolarisカーネルと関連ユーティリティティのみを整備し、ZFSとの融合を目指した。このためにNexentaがスポンサーとなってillumos Foundationが設立され、Committeeが始まり、OpenIndianaもこの組織下に入った。

=出来上がったNexentaStor、価格は大手ベンダーの1/3~1/2=
Nexentaが開発したのはNexentaStor。提供するのはx86で稼動するソフトウェアのみである。これまで既存ストレージベンダーがHW/SWを一体に提供してユーザーをロックインしてきた戦略とは、まったく異なる。ユーザー自身がインストール&セットアップしても良いし、同社のパートナーが提供するインストール済みのハードウェアを利用しても構わない。DellやCisco、SGIなどの大手からSIerまでが彼らのパートナー(日本はコアマイクロシステムズ)だ。 これなら稼動保障やサポートがあり、手間が省けて安心である。費用面でみると、NexentaStorをユーザーが自分で導入すれば、大手ストレージベンダー価格に比べて1/3~1/2程度、パートナーのハードウェアを利用しても1/2程度だという。NexentaStorには標準以外に、近距離遠隔HA対応のNexenta MetroHA、VMware ESXiのVMとして動くVirtual Storage ApplianceのNexenta VSAも用意されている。NexentaStorはZFSをベースとしながらも、拡張したUnified Storageとして、SAN、NAS、Objectが扱える。このObjectはOpenStackのFile SystemのSwiftを移植したものだ。サーバーインターフェースにはiSCSI、FC(Fibre Channel)、NFS(Network File System)、CIFS(Common Internet File System)、Infini Band(予定)などがあり、ストレージ接続はブロックインターフェースでSATA、SAS、FC、iSCSIなどだ。HAクラスタならStorage Enclusure経由でRAIDJBOD(Just a Bunch Of Disks)にも対応する。NexentaStorのVersionは現行が3.15、ここまでがOpenSolaris対応だが、年末までにはVersion4としてillumosベースが出荷予定である。

現在、Nexentaのビジネスは順風だ。
振り返ると、2004年、後にNexentaのCo-FounderとなるAlex AizmanとDmitry YusupovがOpen iSCSIを提唱し、翌2005年にSunがOpenSolarisとZFSを公開。すぐに、2人はこの好機を活かすべくNexentaを設立した。平行して始めていたillmosプロジェクトのお陰でこれらの組み合わせは成功し、ビジネスは軌道に乗り始めた。現在、NexentaStorのユーザーは世界で5,000社を超えると聞く。中でも最大はKT(Korean Telecom)だ。2011年、同社はAmazon対抗のクラウドサービスKT cloudwareを計画し、サービスインした。このクラウドの最大のウリは低価格サービスだ。KTのプラットフォームはCloudStack、ストレージはNexentaStor、共にオープンソースである。