2014年7月2日水曜日

価格破壊が始まった! -Googleはクラウドで勝ち残る-

Google I/O 2014(6/25-26)が終わった。
 思い起こせばGoogle Cpmpute Engine(GCE)が登場したのはGoogle I/O 2012だった。GCEはすぐに限定リリースが始まったが、一時期、社内基準をクリア出来ずサービスを停止。そして20134月正式リリースとなった。このGCEサービスはGoogleが満を持して投入したIaaSだ。そして前回レポートGartner Magic Quardrant分析でもはっきり頭角を現して来た。しかしAmazon EC2が登場して7年以上が経つ。完璧な周回遅れだ。果たしてGoogleはこの劣勢を挽回できるだろうか。答えはYESだ!彼らには秘策がある。思い出してほしい。あの一世を風靡したBlackberryApple iPhoneの登場と共に首位の座を奪われると、すぐにGoogleからAndroidが出た。これによって市場は再度シャッフルされてAndroidが首位に立ったことを。

=Googleはどのくらい劣勢なのか=
ともあれ、Googleはどれくらい劣勢なのだろう。
Synergy Research Groupの報告によると、昨年度、MicrosoftとIBM、Googleの3社の売り上げはほぼ倍増したが、この間Iaas/Paas市場は世界で46%成長し、 Amazonはシェアを55%伸ばしたと言う。下図で見ると、3社合計にSalesforceのPaaSを加えてもAWSに15%程度足らない。つまり、現時点では、Amazonが独り勝ちの状況なのだ。

これほど離されると挽回は不可能なのか。いやそうではない。前回触れたようにクラウド市場はやっと裂け目を超えて、本格市場の開拓に入ったところだ。これまでの市場はAmazonが作り出し、そのレールを突っ走ってきた。つまりEarly Adopterが対象だった。これからの本格市場の中心はエンタープライズだ。ここでは大きな実績を持つIBMやMicrosoftが有利だし、さらにはVMwareだってかなりの実績がある。Googleの場合は、大企業は多くはないがスタートアップなど中小企業を中心としたシェアを持っている。それにデベロッパがGoogleに寄せる信頼は絶大だ。シリコンバレーでは有償のGmailに企業ドメインを使い、Google Documentでドキュメントやスプレッドシート、プレゼン資料を作成するのは当たり前のことである。
=秘められた作戦=
口の悪いアナリストは、「今は絶好調だがAmazonは所詮はインターネットの本屋。それに比べてGoogleはインターネットのオールラウンドプレイヤだ。彼らが本気になれば、その実力と総合戦略には歯が立たない」と主張する。GCEが発表された次のGoogle I/O 2013Goolge Cloud Platformが登場した。このプラットフォームは、GCEをIaaS、App EngineをPaaS、それにCloud Storageを加えて体系化したものだ。そして今年2月のGoldman Sachs Technology and Internet ConferenceでGoogle CFOのPatrick Pichette氏がGoogle Fiberの世界展開について言及した。Google Fiberとは2011年からKansas Cityで始まった高速インターネットプロジェクトのことだ。氏は現在の1GBから10倍の10GBに上げ、ここ3年で世界展開を目指すと説明した。これこそが市場奪還の起爆剤なのだ。知っての通り、Googleのデータセンタ群は専用の高速ネットワークで繋がれ、検索やMapsなどあらゆる地域に住む我々の要求を瞬時に満たしてくれる。彼らのデータセンタはひとつのセンタがひとつのコンピュータに見える設計だ。このようなセンタを超高速で結合することにより、全てのリソースは論理的にひとつとなって、世界最大のクラウドとなる(詳細はここ)。Google Cloud Platformはこの超高速ネットワークの中に他のサービスと共存する。勿論、Google Fiberの目的は、先週のGoogle I/OでAndroid関連の話題(Android LWearAutoTVOne)が賑やかだったように、テキスト/画像から動画/音楽などのストリーミングに向かうユーザ/デバイス性向を満足させるためのものである。しかし、これはGoogleクラウドにとっても最高のプレゼントだ。これが出来れば、まさに在りし日のSunが社是とした「The Network is the Computer」そのものとなる。こうなればGoogleのクラウドは、①もうリージョンやコンテンツ配置はあまり気にならないし、②クラウドアプリはMapsやBigQueryなどのサービスとバックエンドで高速連携ができる。そして、近い将来デベロッパはGoogleサービスの全てを利用することが出来るだろう。③幾つかのベンチマークによる結果(例1例2)はGCEの圧倒的な高速性を示している。特にPersistent Diskの効用やI/Oの高速性は素晴らしい。④さらにオープンソースのDockerFluentdなどの整備も進んでいる。念のため、DockerはUnixやSolarisでは一般的だった軽量のコンテナ型仮想化技術、Fluentdはログ収集管理に威力を発揮するシステムだ。そしてクラウド戦略で、⑤もっとも重要なのは費用だ。Amazonに比べ、課金時間単位(Amazonは1時間、Googleは10分)やその利用料でもGCEは絶対優位にあるし、メータリングの観点からみてもVMのBootやRestartはGCEが圧倒的に早い。

 

=Amazonの戦略=
Googleが勝ち残るには何としてもAmazonの上を行かなくてはいけない。
Source: SiliconANGLE
Amazonのこれまでの成長過程を見ると、まずインフラを整備し、低価格でユーザを呼び込み、便利な機能を提供して利用を促進させ、さらにインフラを増強する。そして設備の効率化を図り、さらにコストを下げる。Amazonはこれまで価格改定を42回行ってきた。ということは、このサイクルをそれだけ回したということだろう。Googleがこの戦略に打ち勝つには決定的なアドバンテージがいる。ひとつはGoogle FiberやPersistent Diskに代表される高速性。もうひとつは徹底した低価格化だ。
  
 =価格破壊が始まった!=
今年3月25日、Google Cloud Platform Liveで30~85%という大幅なPrice Cutが断行された。これに即応し、翌日、Amazonからも新価格が出た。まさに価格戦争の始まりである。Googleの発表内容は、通常利用の値下げ(On Demand Price Reduction)と継続利用時の割引(Sustained Use Discount)の2つだ。まず前者(On Demand Price Reduction)を個別にみると、①Compute Engineの全インスタンスで32%値下げ、②App Engineは料金体系を簡素化し、インスタンスあたり37.5%、Dedicated Memcacheは50%、Datastore Writeは33%の各値下げ、さらにSNI SSLやPageSpeedなどの機能は無償。③Cloud Storageは¢2.6/GBとなり平均ユーザでは約68%の値下げとなる。④ビッグデータ解析で有効なGoogle BigQueryは85%カットだ。後者は、⑤継続利用割引プログラム(Sustained Use Discounts)となって、1ヵ月の25%以上の期間でVMを使用すると自動的に同割引プログラムが適用される。もし1ヵ月間使用し続けるとさらに新価格より30%の値引きだ。これは旧価格に対し合計で53%の値引きである。つまり、Webアプリなどの常時アップしている業務では半値となったのだ。完全にAmazonに対する挑発である。このGoogleの値下げは今回だけにとどまらない。先週、MapReuce後継と目されるCloud DataFlowを発表したクラウド担当Senior VPのUrs Hölzle氏は言う。「クラウドは、本来、前金なしで使用料だけ払えばVMを使えるシンプルなものであるべきだ。ハードウェアはここ数年で20~30%下落している。しかしPublic Cloudは6~8%程度しか下がっていない。つまり、普通で考えてももっとカットすべきである。」
そして、「クラウドの機能を複雑にするのはデベロッパを縛ることになる。それより重要なのは、CPUやディスク、ネットワークの早さや革新的技術の提供、そしてユーザ本位の課金だ」と暗に指摘する。
Googleが仕掛ける価格戦争にAmazonがどう対応するのか。
エンタープライズを得意とするプロバイダはどのように市場開発を進めるのか。
いよいよ本格的な第2ラウンドが始まった。