初期名称Windows Azure(現在はMicrosoft Azure)が発表されたのは2008年10月のこと。Amazonから遅れること2年だった。このプロジェクトを率いたのはBill Gates氏からChief Software Architectを引き継いだRay Ozzie氏だ。2010年、噂では、氏はAzureを巡ってSteve Ballmar氏と衝突、そして退社。その後、Azureは低迷したかに見えたが、現CEOのSatya Nadella氏のもとで見事に復活した。
=好調なAzure、AWSとツートップへ=
3Q決算が出そろった昨年10月29日、お馴染みのSynagy Reaserchからクラウドプロバイダー競合分析が出た。図の縦軸は年間成長率、横軸はマーケットシェアだ。これによるとAmazonが市場をリードしているものの、Microsoftが最も高い成長率を示した。Azureの年間成長率は136%、3Q時のシェアは10%、対するAmazonは売り上げ低迷から3Qでやや持ち直し、シェアは27%だ。Microsoftがこのままの成長率を維持できれば来年度はAmazonに肉薄する可能性は高く、ツートップ時代の到来となる。他方、この2社に続くIBMはシェア7%、Googleは成長率で追い上げているもののシェアは5%程度、大手に伍して独立系のRackspaceも食い下がっている。(関連記事:快進撃Microsoft Azure、その深層に迫る!)
=戦略再設定が進むAzure!=
Azureの進撃の秘密は勿論、戦略の再設定にある。これには幾つかある。まず大きな出来事は一昨年6月に発表したIaaSの開始。これによってWindowsの世界からの脱皮を宣言した。次にOffice 365やDynamics CRMの推進、つまりSaaS領域の拡充である。(関連記事:Office 365は新生Microsoftを救えるか!) 実際のところ、四半期ごとのAzure売上げを見るとこの部分が大きく伸びていることが解る。3番目は昨年7月からMicrosoft PartnerによるAzure Open Licensing Programの開始だ。これによって代理店の抱える法人ユーザは、事前に割引価格でAzure利用枠を買うことが可能となった。
=Azure Packに込められた狙い!=
これらの動きにさらに先立って、一昨年8月28日、Microsoftは標準機能としてBlogでWindows Server 2012 R2にWindows Azure Pack(WAP)を提供することを明らかにした。これはパブリックなAzureと企業内のWindows Serverをシームレスにするもので、初期の狙いは、PaaS上で開発したアプリをクラウドでもオンプレミスでも自由に展開させるものだった。しかし良く考えると、これはHybrid Cloud構築の有効なツールでもある。このAzure Packを用いて企業内クラウドを展開し、Azureと連携させれば全てのアプリは自由に行き来出来る。Microsoftはこれらの総仕上げとしてCloud OSとその支援組織Cloud OS Networkを発表。Cloud OSはオンプレのWindowsを取り込み、クラウド時代にふさわしいハイブリッドを前提とした複数製品からなるコンセプトだ。具体的にはプライベートAzureを構築するための各種API群とWindows Server 2012 R2+Hyper-V、System Centerなどから構成される。普及にはCloud OS Networkパートナーの協力が欠かせない。そのためSIer、Dtatacenter、Cloud Provider、ISVなどを積極的に勧誘し、Azureとユーザ、さらには外部企業も含めた統一環境を目指し始めた。この延長線上で10月21日、Microsoftは「Cloud in a box」のAzureアプライアンスCloud Platform Systemを発表した。最初の製品はDELLと組んだもので、Azure環境の全てがプリインストールされている。これを用いれば、簡単にPrivate Azureを立ち上げることが出来るという訳だ。
=今年こそ勝負だ!=
Microsoftの目指す方向ははっきりしてきた。
Azure ExpressRouteを使えば他システムとの接続も出来るが、 Microsoftの基本的な狙いは、パブリックもプライベートもAzureで固めることだ。勝ち抜くためにはAzureの世界をグローバルに広げること、それが火急のテーマである。そのための鍵は既存パートナーの活用と拡充だ。もうひとつはOffice 365やDynamincs CRMなどSaaS領域の開拓である。Microsoftには各種の企業向けServer製品がある。これらの一部は今年、クラウド化されるだろう。こうして、Microsoftの持つアセットの殆どがAzureを基盤としたクラウド上に向かう。Microsoftはクラウドで生まれ変わる。今年こそ勝負の年だ。