2015年2月24日火曜日

OpenStackをめぐる新たな戦い! -Virtulization-

今年、クラウドの戦いは新たな段階に差し掛かっている。
これまでのPublic Cloudの戦いは、AWSAzureSoftLayerが激しく追い上げGoogle Cloud PlatformRackspace、更にVMware vCloud AirHP Helionが続いている。そして今年はPrivate Cloudの戦いが本格化する。エンタープライズ市場が得意なのはIBMとMicrosoftだ。AmazonはこれまでPublic Cloudこそがクラウドだとし、Private Cloudには無関心を装ってきた。彼らの答えはAWS上に展開するAmazon VPC(Virtual Private Cloud)だ。ただ、多くの企業がより安全なシステムを求めてPrivte Cloudの構築に動き出している。MicrosoftはWindows Azure Pack(WAP)、その他の殆どがOpenStackをサポートする。

=もうひとつの戦い!=
Privte Cloudの陰には隠れたもうひとつの戦いがある。
それはServer Virtulization(サーバ仮想化)、つまりCloud Platformの下のインフラ部分だ。何を今さらというかもしれない。しかし、企業がPrivate Cloudの採用にあたって、仮想化技術を再検討するのは重要だ。勿論、仮想化提供ベンダーにとっては死活問題だが、ユーザにとっても、今後長期にわたって利用するPrivte Cloudのインフラを再考する良いタイミングでもある。下の2つの図を見てほしい。上段は2003年来の主要Hypervisorの伸びを示し、下段は2013年度の出荷状況である。この調査ではVMware ESXが全体の64.1%を占め、以下Microsoft Hyper-Vは13.2%、Red HatのKVMは11.3%、CitrixのXenは5.7%となった。解ってはいたものの、こうしてみるとVMwareの圧倒的強さが再認識される。

 
=OpenStack向けのKVM!=
さて、この状況は変わらないのだろうか。
昨年10月に出されたIDC Report(KVM-Open Source Virtulization for the Enterprise and OpenStack Cloudによれば、共にオープンソースのKVMとOpenStackの親和性は高く、OpenStack人気と連動したKVMの今後の伸びが期待される。報告書では2014年度のLinux出荷は520万本、2017年には720万本、これらの新規出荷サーバーには、2014年度で80%、2017年度には88%の仮想化技術が導入され、伴なってLinuxに組み込まれたKVMは成長するという。そして同レポートでは、OpenStackとの共存共栄ポイントとして、①管理ソフトウェア、②トレーニング&ドキュメンテーション、③ハード&ソフトのエコシステム④クラウドをあげている。

=Red Hat 対 VMware!=
KVMがLinuxにマージされたのは2007年だった。開発したのはイスラエルのQumranetだ。翌2008年、Red HatはKVM強化のため同社を買収し、KVMサポート環境の整備に力を入れてきた。2013年6月には、OpenStack Distributionを発表。以来、Red Hat Enterprise Linux環境下での仮想化とクラウドの総合管理、ユーザ教育、最大パフォーマンスの発揮を目指してきた。まさに前述のIDC Reportが指摘した共存共栄策の実行である。 一方のVMwareも仮想化技術では約65%の絶大な実績がある。何としてもこの実績を確保したい。そのために2012年、同社はOpenStackファンデーションへの参加を決めた。全ディストリビューションでみた貢献度は、①Red Hat、②HP、③Rackspace、④Mirantis、⑤IBM、⑥VMwareと、6位につけている。VMwareの参加当時、驚く声が多かった。しかし、彼らは着実に力をつけてきた。次期版Kiloでは、プロジェクト要員の多くをNova(43%)とNeutron(32%)につぎ込んでいる。これらは今月初めに正式版となったVIO(VMware Integrated OpenStack)のためだった。VIOはvShapre基盤上にOpenStackを乗せたディストリビューションだ(詳細は前回レポート)。

=何が決め手か!=
果たしてLinuxの雄、Red HatはKVMと共にOpenStack市場で伸びるのだろうか。初期のOpenStack適用ではKVMの人気は高かった。しかし昨年7月のGartner Report(Magic Quadrant for x86 Server Virtulization)では大よそ半分だという。そしてRed Hatが出したOpenStackディストリビューションもなかなか普及が進まない。対するVMwareのESXは仮想化市場2位のMicrosoftに約5倍の大差をつけている。そして今回仕掛けたVIOは、vSphare Enterprise Plusユーザには無償(サポートは有償)だ。これまでOpenStackはエンタープライズ市場で低価格を武器にVMwareを置き換えるものだと考えられてきた。VIOはこの神話への挑戦である。もしこれまで慣れ親しんできたVMware製品の上でOpenStackが利用できるのなら、それでPrivate Cloudを構築しようという企業が増えるかもしれない。ただ、これはこれまで推進してきたvSphereクラウド戦略の変更でもある。寡占的な仮想化技術の上にVIOを出荷するVMware、Red HatはKVM内臓のEnterprise Linux上のOpenStackで迎え撃つ。もうひとつの戦いが熾烈さを増してくる。