=One Cloud、Any Application、Any Device!=
2月2日、VMware Integrated OpenStack(VIO)がβを抜け正式版となった。VMware vSphere 6とセットになった発表である。いよいよVMwareもオープン指向に踏み出した。同社CEOのPat Gelsinger氏はプレス向けに、‟One cloud, any application, any device, all built on VMware”を強調した。つまり、新たなvSphereを基盤とすれば、どのようなデバイス(ストレージ)でも、アプリでも、ひとつのクラウドとして扱うことが出来る。
=vSphere基盤上でOpenStackが動く!=
このvSphere 6には650の改良が施されたという。しかし実際の目玉は同時リリースされたOpenStackディストリビューションのVIOだ。このディストリビューションはvSphereと完全にインテグレートされ、アプリはOpenStack APIを使ってvSphere基盤で動き出す。勿論、vCloud Airとのハイブリッドが可能だ。統合の構成要素は4つ。コンピュートとネットワーク、ストレージ、そしてマネージメント。OpenStackのコンピュートNovaはvSphere、ネットワークNeutronはNSX、ストレージのCinderやマシンイメージのGlanceはvSANと連携して実行される。それら全体を管理するのはvCenterだ。
このVIOはVMware基盤の上にOpenStackがテナントとなる。下図のようにテナントとなるOpenStack(VIO)には、vSphere/NSXなどVMware製品のドライバが既に組み込まれており、ファイルを展開するだけで連携が可能となる。またテナント側にあるvCAC-vCloud Automation Center (現vRealize Automation)は、他クラウドとのオーケストレーションを司るものだ。
=vCloud Airとは何か!=
VIOを用いたハイブリッド化を論ずる前にVMwareが運営するVMware vCloud Air について説明しよう。このサービスは2013年5月、同社のPublic CloudとしてvCloud Hybrid Service名で登場し、昨年8月にvCloud Air(以下Air)にリブランドされた。そして現在、全世界8ヵ所の同社データセンタと世界中に散在するパートナーを結ぶvCloud Air Networkに進展している。AirはユーザのvSphereクラウドとのHybrid Cloud化が目的だ。サービス形態は、①専有サーバーにユーザのvSphereクラウドをホスティングするDedicated Cloud、②マルチテナントのひとつとしてAir上に同様のユーザクラウドをホスティングするVirtual Private Cloud、③オンプレ運用のvSphereクラウドをAirへレプリケーションするDisaster Recoveryの3つ。つまり、ユーザのvSphereクラウドの一部を専用サーバーか論理サーバーかを選択してAir上に置き、それとオンプレvSphereクラウドをハイブリッド化させる。
=VMwareのクラウド戦略の変遷!=
VMwareにとって、クラウドの第1期は、AWSやAzureなど他Public Cloudを横目に見ながら、もっぱらPrivate CloudとしてvSphereを拡販することだった。しかしHybrid Cloud時代が到来し、Public Cloudが無視できなくなった。そこでこれまで築いてきたパートナー網を活用したvCloud Airが登場。ここまではPrivate CloudもPublic Cloudも共にvSphere基盤のクラウドだ。これが第2期だ。さらに模索してきたVIOが今回正式版となり、ユーザにOpenStackのオプションを提供することとなった。第3期の始まりである。クラウドは本格的なエンタープライズ市場の開拓を目指して動き出した。この市場ではMicrosoftとIBMがAmazonを迎え撃つ。ここまでが3強だ。VMwareファンから見ればAirの登場が遅すぎた感がある。もっと積極的に動かなければいけない。VIOがどれほどの効果をあげるのかは解らない。しかしOpenStackがPrivate Cloud基盤として主力となりつつあることは衆目の一致するところだ。VIOの発表、それは守りから攻めへ、VMwareが久々に見せた画期的な一手である。