これはハイブリッド化の動きを睨みながら、その前提となるプライベートクラウド市場に向けたものである。Helionは昨年5月からスタートして約1年となるクラウド戦略ブランド名だが、その前身はConverged Cloudだ。HPの判断はクラウド戦略を完全にOpenStackベースにすることだった。その回答がHelionである。
=プライベートクラウド向けのHP Helion Rack=
HP ProLiant DL360 |
=OCP仕様のプロバイダ向けHP Cloudline=
HPはHelion Rackより先の先月初めにはHP Cloudlineも発表している。目指すはサービスプロバイダ向けのテイラードシステムである。このサーバは台湾のFoxconnとの間で設立した合弁会社のODM製品である。一般にOEM(Original Equipment Manufacturing)は委託者の設計で受託者が製造、委託者ブランドで出荷する。対して、ODM(Original Design Manufacturing)は設計から製造まで受託者が行い、委託者ブランドで出荷する。つまり、Cloudlineは設計から製造までHPは関与せず、Foxconnに任せた格好だ。そのCloudlineの最大の特徴はOCP(Open Compute Project)に準拠していること。そしてプロバイダ向けのため、各ユニットに電源やファンはなく、それらはプロバイダのラックから供給される設計だ。製品ラインナップは命令処理主体のコンピュート向け、ストレージ依存度の高いものなどがある。
=HP Helion Content Depot=
HPからは既にHP Helion Content Depotも出ている。今日、データの90%は人間のインタラクションから発生すると言われている。これら膨大なデータ管理の痛みを和らげるのがHelion Content Depotだ。このアプライアンスはバックエンドシステムとしてOpenStack Swift(オブジェクトストレージ)を搭載し、フロントのOpenStackベースのHelionと連携する。企業ユーザはこれを自社データセンタ内に設置するだけでなく、HPパートナのデータセンタに置くことも出来る。
=Helion Public Cloudは?=
以上見てきたように、Helion関連サーバの拡販に力が入ってきた。
HPファンやOpenStackファンなら、これらの製品を選ぶかもしれない。ただ、市場には多くのアプライアンスが出回っている。古くはVMwareを搭載したVCE、これは進化してVCE Foundation for Federation Enterprise Hybrid
Cloudとなった。最近ではMicrosoftがDellと組んで始めたCloud-in-a-BoxのCloud Platform Systemなどだ。しかし、HPのこのようなアプライス化の動きは、何か戦略変更の予感がする。折も折、4月7日、Helionビジネスを統括するSVPのBill Hilf氏はNew York Timesのインタビューに、「ユーザが我々からコンピュータを買うように、クラウドでも借りてくれると考えていた“We thought people would rent or buy computing from us,”」、しかし、「そう短絡的ではないことが解る“It turns out that it makes no sense for us to go head-to-head.”」と答えた。思い出してほしい。昨年10月、CEO Meg Whitman女史はHPを2つの会社に分離することを発表した。ひとつはPCやプリンタを扱うコンシューマ向けのHP Inc.、もうひとつはエンタープライズ向けのHP
Enterpriseだ。冷静に考えると、このような大転換期では、Helionは、ビジネスとして成り立ち難いPublic
Cloudよりも、アプライアンス化に向かうことが必然なのかもしれない。次なる変化を注目したい。