下記のTop 10は2010年から今年3Qまでに投資金額の多かったスタートアップだ。
しかし個々を見ると、紆余曲折が垣間見える。今回からこのランキングに沿って各スタートアップの変遷とその製品について解説する。
IoT Startups VC Ranking by CB Insights |
=Viewの開発するDynamic Glass=
VC投資のトップにランクされたのはView、スマートガラス(Smart Glass)を開発している。スマートガラスとは、オフィスなど建物内部の温度を一定に保つために透明度を変えるインテリジェンスガラスのこと。スマートガラスは、一般に多層構造を採り、内部層の電圧を制御してガラスの透明度を変化させる。Viewの開発するダイナミックグラス(Dynamic Glass)は、エレクトロミックセラミック技術を採用。実際のダイナミックグラスは、まず外側と内側の特別な隙間と特殊加工の材質によって、光線のゆがみ(Solar Deflection)を作り出し、極力、日光をはじき返す(下図左)。次に、外側部は1マイクロンの薄さの金属酸化物で多層化され、これがエレクトロミックセラミック構造となる(下図右上)。このガラスに微量な電圧が加えられるとイオンが層間を移動してガラスの内部構造を変えて色合いを変える(下図右下)。
Viewのダイナミックグラスは、多様なコントロールが可能だ。簡単な話、スマホやタブレットから部屋毎に多段階の透明度制御が出来る。それだけではない。ダイナミックグラスには3つの制御エンジンがある。反射制御(Glare Control Module)と熱制御(Heat Control Module)、そして日光制御(Daylight Control Module)だ。反射制御はリアルタイムに日光の角度を計算してガラスの濃さを制御する。熱制御は太陽のエネルギー計算からエアコンのエネルギー節約を行い、日光制御は各方向尾の建物外壁に取り付けた光センサーによって透明度を制御する。
Viewのこれまでの道のりは長かった。
起業したのは2006年、当時はSoladigmと言った。創業者はベトナム系アメリカ人のPpaul Nguyen氏。同社がこれまでに集めた資金は何と$505.5M(606億6千万円)、11ラウンドに及ぶ。とてつもない金額だが、研究開発だけでなく、製造工場などに充てられた。主な投資家はKhosla VenturesやGE系のGE Energy Financial ServicesとGE Healthcare、さらに世界最大の米ガラス製品メーカーのコーニングCorningなど。主な競合は半導体製造装置メーカーのApplied MaterialsやSage Electrochromicsだ。そのSageは2012年、仏サンゴバンSaint-Gobainに買収された。サンゴバンは1665年設立のフランス王立鏡面ガラス製作所から始まる長い歴史を持つ。これら立ちはだかる国際企業に打ち勝つには、優れた性能、そして何としても低コスト化が欠かせない。今後の同社の成長が楽しみである。