これまで我々の慣れ親しんできたITの利用環境は、iPhoneの登場ですっかり景色が変わってきた。今やスマホやタブレットが主役である。そして今度はIoTだ。IoTの浸透が進めば、また何か大きな変化が起きる予感がする。
=McKinseyの予測・・・経済効果は$6.2T、デバイスは20-30B units=
Source: McKinsey |
McKinseyの調査によると、IoTの世界経済への波及は、2025年までに$6.2T(744兆円)になるという。一方、同時点での企業リーダへの調査では、まだはっきりした事業機会を見出していない。つまり、期待は大きいが、市場形成は今後の動き次第だ。そのための重要なファシリテータがコンポーネント製造業者である。問題は彼らが製造するコネクテッドデバイスがどこまで伸びるかだ。数年前の業界アナリストの推定では2020年までに500億~1,000億ユニットだった。今回、McKinseyがより現実的な要素を取り入れた推定では200億~300億ユニットである。
=投資はどうなっているか=
さてIoTへの投資はどうなっているのか。 VCデータベースを扱うCB Insightsによると、過去6年間のIoTの投資件数は887件、金額は$7.4B(8,880億円)となっている。対象はコネクテッドオブジェクト(Connected Objects)やアプライアンス、センサー、デバイスなどだ。この5年間に限って詳しく見てみよう。IoTスタートアップへの投資は、金額で見ると、2010年の$768M(921.6億円)から2014年では$1.9B(2,280億円)、件数では2010年の91件から2014件には211件、5年で2倍強の成長である。今年は昨年度の投資急増がやや影を落としているがおおむね順調だ。
投資のステージ別はどうか。アーリーステージ(初期)のSeedsとSeries-Aを件数で見ると、2013年がピークだ。その2つの合計は同年の投資全体の62%を占めた。今年1Q~3Qまでの2つの合計は53%とやや低減しているが、Seiries-Bが伸びたからで特に問題はない。ミッドステージ(中期)のSeries-BとCは、2010年が41%と突出し、2011年以降は20%台で推移、今年は3Qまでに30%と大きく伸びている。レイトステージ(後期)のSeries-DやEは7~14%の間にある。以上を全体的に見ると、開発やテストマーケティングを経て、少しづつビジネスになりつつある様子が伺える。
投資金額で見ると、Seedsは2010年来5%以下だが、Series-Aは2010年の15%から2014年の25%へと順調に伸びてきた。これは起業活動が活発だからだ。ミッドステージは2010年が70%、以降は30%台から40%台で推移し、今年度(3Qまで)は52%と快調だ。件数だけでなく、金額でもビジネス開発が動き出していることが解る。
以上のようにIoT市場の見通しもVC投資も順調のように見える。しかし、ビジネスとして確立している訳ではない。現時点で分野として見えているのは、医療装置、コネクテッドホームアプライアンス、セキュリティー、スマート建材(Smart Building Materials)などである。次回はIoT関連のスタートアップについて触れてみたい。