2016年1月14日木曜日

ワイヤレス2社、JawboneとSonos  -IoT(5)

IoTの5回目、昨年のVC投資ランキングの続きだ。
今回は3位と4位、図らずもこの2社はワイヤレスオーディオが得意である。また、個人的には、仕事の関係でこの2社の製品は、IoTなどという言葉が生まれる以前からデモで利用したことがあり、なじみが深い。

=Bluetoothのノイズフィルタリングで成長したJawbone=
Jawbone JAMBOX and ERA
ランキング3位はJawbone、Bluetooth技術が得意だ。同社の設立は1999年、当初の名前はAliph、スタンフォード大学の学生たちが興したスタートアップである。起業してすぐに米軍向けのノイズキャンセリング技術を開発し、2002年にDARPAとの契約に成功した。戦闘員同士のクリアーな通信のための研究である。その後、コンスーマー市場へ方向転換、2007年、CESでスマホと連携使用するJawbone(英語-あごの骨)ブランドのバックグラウンドノイズを抑えたヘッドセットを発表して脚光を浴びた。2008年には改良型を発表、Appleストアでの販売も始まった。Jawboneとは新ヘッドセットが耳に掛けるタイプのBluetoothイヤホーンで、形があごの骨に似ていることからだと聞く。2010年のホリデーシーズンにはBluetoohスピーカーJawbone JAMBOXも発売し、同社の2枚看板商品となった。同時に、同社はこれらJawbone製品と3rdパーティーアプリやデバイスとを組み合わせたりカスタマイズできるソフトウェアプラットフォームも発表。ここまでが第一期である。そしてIoT時代が到来した。
2011年はこれまで製品ブランドだったJawboneを社名と改めることから始まった。
Jawbone UP Seires
すぐに第4世代のヘッドセットJawbone ERAを発表し、11月にはリストバンド型ライフスタイルトラッキングシステムのUPを公開した。UPはリストバンドにモーションテクノロジーを利用して、運動や睡眠、さらに食事情報を記録、Bluetoothでスマホやタブレットと連携してライフスタイルをトラッキングできる。UPは、簡単に言えば高性能万歩計だが、歩数や消費エネルギーの総計表示だけでなく、時系列で見たり、設定をすれば運動不足のアラーム機能もある。睡眠管理はボタンの長押しで始まり、もう一度長押しすれば起床となってリセットされるUPはこの間の全体睡眠時間だけでなく、深い眠りや浅い眠りの時間、さらに時系列で眠りグラフも表示してくれるという丁寧さだ。食事についてはスマホから自分で入力すれば、大まかな栄養管理にも役に立つ。果たして、第二期に入ったJawboneは勝ち残れるだろうか。
フィットネスのウェアラブル分野には競合相手が多い。年初めのCES 2016で最大のライバルと目されるフィットネストラッカーのFitbitからはApple Watch対抗の新製品Fitbit Blazeた。またMisfit WearableからはJawbone UPと同様スリープ管理のついMisfit Ray、MiraからはよりファッショナブルなMira Opalが登場し、JawboneもJawbone UP2を出して対抗する。
Fitbit Blaze(L) & Mira Opal(R)

=ワイヤレスHiFiオーディオの世界を拓くSonos= 
Sonosの歴史も長い。2002年の起業だ。Sonosの得意技はWiFiに独自プロトコルを採用したHiFiオーディオである。Sonosはこの仕組みを内蔵した各種のパワードスピーカーを出荷している。主力製品はPLAY:1,3,5、さらにシアター用のPlayBarやサブウーハーだってある。まさにBoseのワイヤレスネットワーク版だと思えば良い。
使い方は簡単だ。スピーカーは一つでも構わないし、自宅の各部屋に複数あっても良い。それらはAESでの暗号化されたP2PのSonosNetでネットワーク化され、スマホやタブレットで管理できる。ここまで説明するとAppleファンはApple AirPlayを思い出す。しかしAirPlayの接続デバイスはiPhoneかiPadに限られている。Sonosは専用の高品質スピーカーを揃え、最大32台まで接続が可能だ。基本となる音源はローカルの音楽ファイルものだけでなく、オンラインミュージックストリーミングの
PandoraSpotify、世界中のインターネットラジオが聞けるTuneInなど、スマホやタブレットで自由に追加できる。各部屋の音量調整は勿論、違う音楽を流すことだってOKだ。Sonosに見るオーディオ機器のIT化に刺激され、BoseからはSoundLinkBang & OlufsenからもBeosound 35登場してきた。



=これからのポイント!= 
Jawboneがこれまでに集めた資金は$725.8M(約870億円)、何と10ラウンドに及び、買収企業も4社となったBluetoothを使ったノイズフィルタリング、それが同社の起業動機だった。 ここまでは上手く行った。問題はこれからだ。IoT時代にBluetoothノイズフィルタリングのようなはっきりしたアドバンテージが出せるかが問われている。そうでなければ、大勢いるフィットネストラッキングのベンダーに埋没してしまう。一方、Sonosも8ラウンドで$374M(約449億円)の資金を集め、オンラインストリーミングを扱うHiFiオーディオ機器を開発してきた。これを更に拡大し、人々のライフスタイルを先取りする製品開発ができるかどうかだ。共にここ1~2年が勝負の時期となる。