2016年11月6日日曜日

AutoTech(17)  ドライバーレスシャトルバスの5社!

オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車)の開発競争は、通常のセダンに始まり、輸送用のトラック、そして小型のシャトルバスでも活況だ。
今回はドライバーレスのシャトルバスについて纏めてみた。

=フランスのNavyaとEasyMile=
この分野では仏2社が目立っている。NavyaとEasyMileだ。
まず、Navyaから見てみよう。通常のオートノマスビークルに比べ、シャトルバスの開発は条件的に有利である。バスの運行経路が決まっていること、スピードが中速であることなどだ。ただ、その分、初めからLvel-4を目指さなければいけない。Navyaの開発した無人シャトルの製品名はARMAだ。この車が初めて本番導入されたのは2015年12月。アルプスのふもとでワインの産地として知られるスイスのSion市でのこと。導入の決定は、スイスの公共交通バスPostBusによってなされた。実際のところ、このシャトルの制御用のソフトウェアは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL - École Polytechnique Fédérale de Lausanne)の卒業生によって設立されたBestMileが開発したものである。つまり、Navyaとは言ってもBestMileとの合作だ。ARMAは15人乗り、最高速度45km/hで走り、バス停で乗り込んだ乗客は社内のディスプレイ上で行先をタッチして知らせる。ARMAには、GPSやLiDAR、カメラ、走行距離計(Odometer)が装備されているが 何か問題が発生すれば、リモートステーションとやり取りができる。今年8月からは、オーストラリアで、米国AAAと同様に自動車保険などのサービスを総合的に提供するRAC(Royal Automobile Club)主導による実験も始まった。
 
 
フランスの2社目に紹介するのはEasyMileだ。日本でも7月にDeNAが提携して、イオンの敷地内での走行実験が始まったので記憶にある人も多いだろう。EasyMileの本社は、仏南西部のトゥルーズでシンガポールとデンバーに支社がある。実際のところ、この会社は仏小型車メーカーLigierと自動運転ソフトを開発するrobosoftのジョイントベンチャーだ。robosoftは30年の歴史を持ち、各種のロボット製品を開発している。このような事情から、前述の仏NavyaはVC投資を受け入れているが、EasyMileは自社運営となっている。開発した車はEZ10だ。EZ10には3つ(メトロ、バス、オンデマンド)のモードがある。メトロモードは決められた路線を走り、駅となる停留所に止まる。バスモードでは乗降客のリクエストによって、路線内の停留所に止まる。さらにスマホからのリクエストで路線内の任意の場所で停車が可能なのがオンデマンドだ。Ez10は12人乗りで、予め作成した地図データ上の設定ルート上をカメラや各種センサー、GPSを用いて自動走行する。既にEZ10は、パリやドバイ、オランダのアッペルスカ、フィンランドのヴァンター、前述のNavyaと関連のあるスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)などで試験導入が始まっている。


=米国の2社、Auro RoboticsとLocal Motors=
米国にもオートノマスシャトルを開発するベンダーが2社ある。
Auro RoboticsとLocal Motorsだ。Local Motorsが開発したOlliはメリーランド州ナショナルハーバーで市内観光シャトルとして公道実験が始まっている。このシャトルバスのガイド役はIBM Watsonだ。詳細は既報で述べたので参照されたい。Local Motorsはアリゾナがベースだが、もう1社のAuro Roboticsはシリコンバレーのサニーベールだ。創業者はCEOのNalin Gupta氏、CTOのJit Ray Chowdhury氏、CPOのSrinivas Reddy氏の3人ともにインド工科大学カラグプル校Indian Institute of Technology, Kharagpur(IIT)の出身である。彼らは学生時代にオートノマスビークルに興味を持って研究を始め、そしてシリコンバレーにやって来た。目指すのは、学校のキャンパスやアミューズメントパーク、リタイアメントコミュニティー内などの移動用シャトルだ。つまり、これらの私有地内なら規制が緩いからだ。創業は2015年、スタートアップのインキュベータ Y Combinator Summer 2015 Demo Dayに登壇して支援を取り付けた。まずは電動ゴルフカートを改造してプロトを作った。最初に適用私有地内の3Dマップを作成し、これにカート装備のLiDARで360°の外部状況を重ね合わせる。こうして精度をあげ、現在は、カリフォルニア州内の複数の大学で走行テスト中だ。今後は車体を下のビデオ(案)のように改良して、月額$5,000(約50万円)/台程度の利用料金制とする予定だ。



=カナダのVarden labs=
カナダのVarden Labsは、育ちも狙いもAuro Roboticsと良く似ている。
Varden Labs は今年3月のY Combinator Winter 2016で登場したニューフェースだ。Auro Roboticsは半年先輩でY Combinator Summer 2015だった。そして共同創設者はCEO Alex Rodrigues氏とMichael Skupien氏、Brandon Moak氏の3人。これも同数だ。そしてAuro Roboticsの3人がIITなら、彼らはカナダのUniversity of Waterloo在学中に知り合った。そして中退、シリコンバレーのサンノゼに家を借り、そこを本拠に開発に取り掛かった。目指すマーケットも製品もAuro Roboticsと同じ、大学キャンパスなどの私有地で、その中をゴルフカートによく似た車が走り回る。走行モードは敷地内の規定ルートでバスストップに止まるバスモード、もうひとつは規定ルートのどこでも止まるオンデマンドモードだ。現在、6つの大学キャンパスで有料の実地試験が行われている。シャトルの運用料金は年間で$50,000(約500万円)。Auro Roboticsは月額制、Varden Labsは年額制だが、これも似たような金額である。さて、どちらに軍配があがるのだろうか。