実際のところ、世界の自動車生産は飽和しつつある。
Morgan Stanlyの調査によると、現時点の年間成長率は5%弱、数年先には完全にフラットだ。一方でShared Carの伸びは2030年には15%を超える。つまり、ゆっくりと、車は所有するものから利用するものへと移っていく。自動車産業の抱える課題はこれへの対応だけではない。環境問題、交通渋滞、事故の多発などをどうするのか。これらを総合的に解決し、より高いレベルのソリューションを見つける出すことが望まれている。オートノマスビークル開発は、そのための第一歩だ。
=Ford氏とシリコンバレー!=
Ford Motorsが車をモビリティー(移動体)として捉え始めたのは、Bill Ford氏の影響である。氏は創業者Henry Ford氏のひ孫にあたり、1979年にFordに入社した。その後、幾つかの部門で経験を積み2001年CEOとなった。氏は車社会の環境問題や省エネについて、将来像を考えていた。氏は当時から開発に着手していたEV戦略を推進したかったが、当時の原油安からくる大型化の波には勝てなかった。悩んだ末のピックアップやSUVなどの大型車シフトは、当初こそ上手く行ったが、その後は、これが命取りとなって赤字に転落。2006年にCEOを退任して会長となった。この間、氏の秘蔵っ子として、傘下のMazda再建にCEOとして1999年から3年間広島に送り込まれたのが、現CEOのMark Fields氏である。Ford氏の後任としてCEOになったのは、元Boeing EVPのAlan Mulally氏だ。氏は確かな手腕で業績を急回復させ、一時はJagerやRand Lover、Volvoなども傘下に収めるまでになった。Mulally氏のCEO就任(2006/9-2014/7)と同時に、日本から戻っていたFields氏は北米担当の部門長となり、その後、2014年7月から現職のCEOとなった。現在、Fields氏は、自らFordのオートノマスビークルを牽引する旗振り役である。
Fordとシリコンバレーの関わりに触れてみよう。
2005年7月に遡る。当時、Bill Ford氏は大学時代の同窓Meg Whitman女史(現HPE CEO)に請われて、女史がCEOをやっていたeBayのBoard Memberに就任した。以来、Ford氏はシリコンバレーとの関係を密にするようになり、Tesla Motors初代CEOで創業者のMartin Eberhard氏ともその頃に知り合うことになる。Ford氏は会長となった後も大きな影響力を持ち続けた。その影響を最も強く受けたのが現CEOのMark Fields氏である。Fields氏はハイテク企業との連携は欠かせないとして、シリコンバレーに2015年1月、Research Centerを開設。以来、このセンターがFordのオートノマスビークル開発の中心となっている。
Fordとシリコンバレーの関わりに触れてみよう。
2005年7月に遡る。当時、Bill Ford氏は大学時代の同窓Meg Whitman女史(現HPE CEO)に請われて、女史がCEOをやっていたeBayのBoard Memberに就任した。以来、Ford氏はシリコンバレーとの関係を密にするようになり、Tesla Motors初代CEOで創業者のMartin Eberhard氏ともその頃に知り合うことになる。Ford氏は会長となった後も大きな影響力を持ち続けた。その影響を最も強く受けたのが現CEOのMark Fields氏である。Fields氏はハイテク企業との連携は欠かせないとして、シリコンバレーに2015年1月、Research Centerを開設。以来、このセンターがFordのオートノマスビークル開発の中心となっている。
以下のビデオはTED2011で行われたBill Ford氏のプレゼンだ。
タイトルはA future beyond traffic gridlock(交通渋滞のない世界を目指して)。Ford氏は環境問題や世界的に増えつつある交通渋滞についての問題認識を示し、この中で、Smart Road(賢い道路)や環境に優しいSmart Transportation(賢い交通機関)に言及している。
タイトルはA future beyond traffic gridlock(交通渋滞のない世界を目指して)。Ford氏は環境問題や世界的に増えつつある交通渋滞についての問題認識を示し、この中で、Smart Road(賢い道路)や環境に優しいSmart Transportation(賢い交通機関)に言及している。
=モビリティーへの青写真!=
Bill Ford氏は、創業家の血筋もあって、車を愛している。
その車が環境汚染や渋滞、事故などを引き起こしていることに心を痛めていた。
車は本来、人の役に立つものである。これらのマイナス面は改めなければいけない。そして、Ford氏の考えは更に進み、MWC2012(Mobile World Congress)で、これまで考えてきたことをBlueprint for Mobilityとして発表した。この中で課題の総合的な解決には、Smart Transportationの構築が欠かせないとし、そのためのインテリジェントな車とテレコム業界を巻き込んだネットワーク作りを呼びかけた。氏の考えでは、オートノマスビークルは、このためのインテリジェントでネットワークと繋がるコネクテッドカー、つまり、モビリティー(移動体)だ。このシステムが出来れば、車は渋滞している交差点や地域を避けたり、互いの衝突を回避できる。車自身の進化によるオートノマス化とそれらをコネクテッドカーとしてネットワーク連携させ、全体的なコントロールを行おうという発想だ。Fordは、このシステムの実現のために、短期(5-7年)、中期(2017-2025)、長期(2025+)のマイルストーンを設定。これに沿って、オートノマスビークル開発と並行し、ネットワーク化を具現化させる特別仕様のカーナビFord Sync(*1)も開発した。2007年のことである。その後、改良を重ね、現在のSync3はタッチスクリーンで音声コマンドを認識するまでになった。
=Ford Mobility Companyへ!=
Bill Ford氏の夢の道程(みちのり)は長い。
FordのLevel-4が出てくるのは2021年だ。Sync3は既存車から搭載が始まった。しかし、他社やテレコムとの協業によるネットワーク化はこれからだ。CEO Mark Fields氏は、計画全体を加速させるため、CES 2015のKeynoteで25の実験プロジェクトを世界中で始めると宣言。これらは、同社のチャレンジ制度の応募から選ばれたものである。そして、9月中旬からは、Ford Fusion HybridベースのオートノマスビークルがUber向けに改良されて、公道実験が始まった。
Fordはまた、自身のビジネスモデル改革にも取り組み始めた。
今年3月、シリコンバレーのパロアルトとミシガン州ディアボーンで活動するための子会社Ford Smart Mobilityを設立。この会社のミッションは、モビリティーサービスへのシフトに向けたビジネス設計と投資だ。最初の案件は、9月初めに実行されたChariotの買収である。Chariotはサンフランシスコ市内を中心とした固定28ルートを走る通勤用ライドシェアシャトルバスだ。約100台のバスは全てFord製。スマホを見れば全シャトルの位置が解り、オンデマンドで呼び出すことが出来る。新会社はまた、全米で自転車ライドシェアを展開するMotivateと提携し、サンフランシスコ市内でFord GoBikeも開始した。これらのサービスは、将来的に既存バスを置き換え、市民にもビジターにも便利な足となる。これは実験システムとして、サンフランシスコ市に向けた提案だ。そして2021年、UberがOttoベースの自社開発車だけでなく、Fordのオートノマスビークルを使ってくれれば良いし、NGなら、Chariotはそのバックアップを担うモビリティーサービスの柱となるだろう。そしてLevel-4のChariotシャトルが音声認識搭載のSyncを積んでベイアリアを走り回り、互いにネットワークを介して、渋滞回避や効率的な運行を行う姿が見えてくる。
Bill Ford氏の夢は少しづつ現実のものとなりつつある。
(了)
今年3月、シリコンバレーのパロアルトとミシガン州ディアボーンで活動するための子会社Ford Smart Mobilityを設立。この会社のミッションは、モビリティーサービスへのシフトに向けたビジネス設計と投資だ。最初の案件は、9月初めに実行されたChariotの買収である。Chariotはサンフランシスコ市内を中心とした固定28ルートを走る通勤用ライドシェアシャトルバスだ。約100台のバスは全てFord製。スマホを見れば全シャトルの位置が解り、オンデマンドで呼び出すことが出来る。新会社はまた、全米で自転車ライドシェアを展開するMotivateと提携し、サンフランシスコ市内でFord GoBikeも開始した。これらのサービスは、将来的に既存バスを置き換え、市民にもビジターにも便利な足となる。これは実験システムとして、サンフランシスコ市に向けた提案だ。そして2021年、UberがOttoベースの自社開発車だけでなく、Fordのオートノマスビークルを使ってくれれば良いし、NGなら、Chariotはそのバックアップを担うモビリティーサービスの柱となるだろう。そしてLevel-4のChariotシャトルが音声認識搭載のSyncを積んでベイアリアを走り回り、互いにネットワークを介して、渋滞回避や効率的な運行を行う姿が見えてくる。
Bill Ford氏の夢は少しづつ現実のものとなりつつある。
(了)