2016年10月18日火曜日

AutoTech(16) 
    グローバル化とシステム化が進む自動運転車開発!

このところ、一段とオートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車)関連の投資が活発化している。それも世界各地で開発が進み、実務的なものだけでなく、最初からLevel-4を目指しているものやシステム的なものまで多様化していることが特徴だ。以下、国際的に進むスタートアップの活動と最近の投資受け入れについて纏めてみた。

=Toyotaと独BMWが乗り合うNautoの利用法!=
10月7日、Toyotaが今年1月に設立したシリコンバレーのオートノマスビークル向けAI研究所 Toyota Research Institute BMW i Ventures(BMWの投資部門)、Allianz Ventures(独保険会社の投資部門)の3社が Nauto(Palo Alto, CA)に投資し、戦略的パートナーシップを締結した。Nautoが注目されるようになったのは、あのAndroid OSを開発したAndy Rubin氏がテコ入れを始めたからだ。氏の会社Playground Globalは、インキュベーションを柱とするVCだ。Nautoが開発しているのは、車載カメラDashcamをネットワーク接続でAI分析するための装置である。このシステムは、ドライバーや車の周囲情報をカメラで撮って、それらをネットワーク上でディープラーニングのAI処理を施す。これによって、どのような環境で事故が起こり易いのかを分析し、現在の走行状況が条件と合致する場合は、リアルタイムで警報を出す。同様にドライバーのカメラ撮影からも居眠り運転などがあれば、それを識別して警報する。Rubin氏は、他のVCと組んで、この装置を無償貸与し、膨大な走行データを収集することを計画した。対象となるマーケットは、業務用のトラックや配送業などだ。この作戦は当たってユーザーは急拡大。目指すはデータシェアリングビジネスである。これまで同社が受け取った資金は、Seedが$2.85M、最初のSeries-Aが$12M(今年4月)、そして今回の3社(Toyota、BMW、Allianz)分もSeries-Aの追加(金額非公開)となった。保険会社のAllianzは、保険料軽減にこのシステムを検討するが、注目されるのはToyotaとBMWだ。狙いは、このシステムから得られるリアルタイムのストリートビューだと思われる。通常、オートノマスビークルではカメラやLiDARなどからリアルタイムで3Dマップを作製し、それを既存データと重ね合わせて利用する。しかし、Google Street ViewHEREなどは周期的なアップデートだ。欲しいのは、より直近のデータである。ToyotaとBMWの参加によって、Nautoのデータシェアリングネットワークは強化される。そして、その有効性が確かめられれば、開発中のオートノマスビークルだけでなく、既存車へも一気に採用が加速されるかもしれない。 

=米nuTonomyはシンガポールのGrabで走り出す!=
nuTonomy(Cambridge, MA)はMITからスピンアウトしたスタートアップだ。目指すはLevel-4のオートノマスビークルの開発である。そして8月25日、シンガポールをベースとする配車サービスGrabと組んで公道での試験が始まった。米国最大手のUberがFordと提携し、Ford Fusion Hybridを使ったテストが9月中旬からなので世界初と言って良い。提供された車種は、Mitsubishi i-MiEVRenault Zoeの2種、共に小型のEVで計6台だ。当面の運行は、念のためドライバーが付き、エリアはシンガポールのビジネスパーク内だけ、乗降場所も決められている。このテスト開始後の9月、GrabはSeries-Fとして新たな投資家SoftBankから$750Mを受け取った。情報筋によるとGrabの企業評価は$3B。2011年の設立以来、総額は$1.43Bとなった。一方のnuTonomyは2013年の起業。Seedは$3.6M、Series-Aが今年5月の$16Mだった。このSeries-Aをリードしたのは、本社のあるケンブリッジのHighland Capital partnersで、応じた4社の1社がシンガポール経済開発庁の投資部門EDBIEconomic Development Board Investment)だった。こうしてnuTonomyはシンガポールと関係を持ち、今年8月1日には、シンガポール陸上交通庁(Singapore LTA - Land Transport Authority)との間で提携(LTA to Launch Autonomous Mobility-on-Demand Trials)を発表した。これが今回のテストの背景である。既報のように、世界のライドシェアリング市場は、米国のUberとLyft、中国のDidi Chuxing、インドのOla、そして東南アジアのGrabの5強体制だ。この分野では、UberはFordとの提携でFord Fusion Hybridを使った公道テストを開始、さらにOtto買収による自社開発の2本立てである。この自社開発では車両でVolvoと提携している。LyftはGMと提携し、現在、Chevy Boltの受け取り待ちだ。そして今回のGrabはnuTonomyと提携した。これが上手く行けば、次に、実際の車両製造相手を決めなければいけない。MitsubishiとRenaultの2社なのか、どちらかなのか。技術の提供と製造、ユーザーの枠組みが見えつつある。
=Optimus Rideは新交通システムを手掛けるか?=
まだ、始まったばかりのOptimus Ride(2015年起業)、2013年スタートのnuTonomyを追うようにMITからスピンオフした。本社も同じマサチューセッツ州ケンブリッジだ。そして、今月中旬、初のSeedとして$5.25Mを手に入れた。同社の財産は経験豊富な人材である。ファウンダーは5人。CEOとなったRyan Chin氏は、MITのメディアラボで、新交通システムを含めた未来都市プロジェクトをリード、その一環として開発したCityCarの発明者の一人だ。CMOのJenny Larios Berlin女史は、MIT卒業、あの元祖カーシェアリングZipcarでGMからのメンバーとして、全米各地の大学のカーシェアリングを推進。Chief ScientistのSertac Karaman氏はモバイルロボティックスの大家として、DARPA Grand Challenge 2007に参加したMITチームのリーダーだ。 ブラウン大学とMITで学んだAlbert Huang氏もこの開発チームのテクニカルリードを務めた。ハーバード大学のフェローでもあるRamiro Almeida氏はMITのメディアラボで、社会交通システムをリード。今後、同社がどのように進むのかは解らない。ただ、ここ数ヶ月、新しいオートノマスビークルによる輸送システムを研究していることは確かである。
 
 
=英国でも公道テストが始まった!=
ロンドンの北西80KmにあるニュータウンのMilton Keynesでも公道実験が始まった。オートノマスビークルを開発したのはオックスフォード大学からスピンアウトしたOxboticaだ。使われている車両はRenault TWIZYを改造したもの現在は、時速5マイル(時速8Km)という超安全運転で、ゆっくりとコーナーを曲がり、横断歩道でもきちっと止まることができる。これはあくまでも暫定スタートで、同社は2020年までに安定した市街地走行を目指している。周知のように、英国には信号機のない交差点ラウンドアバウトなど独特な交通ルールがある。さらに、シティーには再保険を含めた大手保険会社がある。英政府はこれらへの支援と対応を通して、近未来のオートノマスビークル社会の到来を促したいと考えている。

以上、見てきたようにオートノマスビークル開発は拡大している。 
地域的には、これまでのアメリカやドイツだけでなく、イギリスや日本も含め、さらに東南アジアでは米ベンダーと組んだ取り組みも始まった。Google Carを追って、シリコンバレーのZooxも最近、$200Mの投資を受け取った。これからは、Level-4の早期実現を目指してグローバルでの開発続く。その先にはまた、単独車両から総合的な交通システムへの動きも見えてきた。