9月29日、歴史建造物のサンフランシスコ造幣局The San Francisco Mintホールを借りてGoogle Horizonが開催された。会場は招待客のみ、内容はエンタープライズビジネスを促進するもので、カンファレンスのホストはDiane Greene女史である。VMwareを成功に導いた初代CEOだと言えば思い出す人も多いだろう。女史は2012年からGoogleのボード入りし、2015年11月にはGoogleにSVP兼クラウド部門長として迎えられ、再度、スポットライトを浴びることになった。
(詳細: あのダイアングリーン女史が戻って来た!)
このカンファレンスで使われた女史の新たな肩書はCloud Chief。その他のプレゼンターは女史より前のクラウド責任者でGoogle FellowのUrs Hölzle氏やGoogle Appsの責任者Prabhakar Raghavan氏、Mapsの責任者Jen Fitzpatrick女史、エンタープライズセールスの責任者Tariq Shaukat氏、グローバルテクノロジーパートナーの責任者 Nan Boden女史、元Red Hat CTOでGoogleに移籍したCloud Platform責任者のBrian Stevens氏、さらにエンタープライズビジネスを支えるサポートやマーケティングなど蒼々たるメンバーである。
=マシンラーニングこそ切り札だ!=
カンファレンスのトップはGreene女史のオープニングキーノート、次いでHölzle氏からGoogleの長期的なインフラ計画、その中で1時間をかけたのはGoogle Cloud Machine Learningだ。これまで非公開α版として特定ユーザーに提供されてきたが、この日から誰でも利用できるPre-View(β版)となった。これこそがGoogleの切り札である。企業がどのようにクラウドを使ってマシンラーニングを利用するか。その答えがGoogleにはある。マシンラーニングは、IoTなどで収集したデーターベースを解析し、その中から規則性や判断基準などを抽出してアルゴリズムに発展させる。Google Cloud Machine Learningでは、幾つかの用意されたモデルを使って改良しながら利用したり、新たなモデルを作成することもできる。しかし、この作業には専門性が要求される。このために用意されているプログラムは2つ。ひとつはMachine Learning Advanced Solution Labだ。企業ユーザーの複雑な課題解決サポート窓口だと思えば良い。もうひとつはThe Cloud Start Programでマシンラーニングを含めたGCPのトレーニングシステムだ。これには最終段階で認証試験システムがある。こうして、一般企業にクラウドAIを普及させていこうという作戦だ。一方、エンタープライズビジネスにおける先行組には、Amazon Machine LearningやAzure Machine Learningがあるし、IBMにはWatosonもある。しかし、AIならGoogleだ。Google Cloud Machine Learning Platformは一種のポータルだが、同時に、Google Cloud Storage や Google BigQuery、Google Cloud Dataflow、Google Cloud Datalab などを使えるフルマネージドプラットフォームでもある。そして、画像認識のVision APIや音声認識用Speech API、自然語分析のNatural Language API、翻訳分析Translate APIなどが用意されているし、さらに強力な武器がある。Deep Leaning向けのオープンソースライブラリーTensorFlowだ。これはあの世界的囲碁棋士を撃破したAlphaGoでも使われたもので、これをクラウドで高速利用するTensor Processing Unitも開発済みだ。
そして再度、登壇したGreene女史からは、これまで個別感があったプロダクトをひとつに纏めて提供するとし、新ブランドGoogle Cloud発表された。新ブランドが目指すは-Going All-in with Google Cloud-だ。Google Cloudのもとには、GCPを核としたGoogle Cloud Platform、そしてMapsやMachine LearningなどのAPIs、これまでのGoogle Apps for WorkはAI機能を加えてG Suiteと改称、さらにChromeやAndroidからのアクセスも含まれている。
=リージョン拡大へ!=
今回の発表でさらに大事なのは新設データセンターによるリージョンの拡大である。今年3月、初めて開催されたGoogle Cloud Platform Next 2016でリージョンの拡大について、Greene女史はその重要性に言及していた。その時点でGoogleが開設していたリージョンは4つ。米東部のSouth Carolina、米中部のIowa、欧州のBelgium、アジアではTaipeiである。このたった4つではAWSやAzure、SoftLayerには立ち向かえない。そして、米西部のOregonと東アジアのTokyoを本年末までに追加し、さらに2017年にかけて、全部で10以上のリージョンをオープンする予定だとしていた。実際にはTokyoとOregonは今年の3月末にオープンを宣言、今回、新たに Mumbai、Singapore、Sydney、Northern Virginia、São Paulo、London、Finland、そしてFrankfurtの8つの追加を発表した。予定より1年早いことになる。これら全てがオープンされれば14リージョンとなり、競合との見劣りがなくなる。完全にGoogleはエンタープライズビジネスに本気になり出したようである。
(詳細: Googleクラウドの新戦略が見えてきた!)