2009年10月10日土曜日

クラウド・コンセンサス・サーベイ
-政府系と民間企業-

連邦政府のITコミュニティーとして、ソシアルネットワーキングを運営するMeriTalk
から、政府系と民間を半々としたクラウド・コンセンサス・サーベイ(Cloud Consensus Survey)が発表された。調査対象となったのは、政府系と民間のIT責任者605人。政府系では一般業務関連(Federal Civilian)から25%、国防関連(Department of Defense)から25%、そして民間(Industry/Business)から50%の分布であり、職群ではCIO/CTO(含む副-Deputy、補佐-Assistant)が22%、IT部門の部課長(Director/Supervisor/Manager)が67%、その他の IT管理者が11%、所属する組織サイズは34%が1,000人以上、501~1,000人までが30%、251~500人までが13%、101~250 人までが7%、100人以下が16%となっている。

◆ Cloud Computing定義の混乱

まずCloud Computingには関する理解では、この言葉の正確な定義がなく、多くのベンダーやメディアが広範囲に使っていることもあって混乱が見られた。曰く 「仮想環境下でサービスやインフラ、アプリケーションを提供するコンセプト」、「コンピュータ業務に用いられるコンピューティング資源の大まかな定義セッ ト」、「サービス提供のアーキテクチャー」、「ユーザーにサービスとして販売する資源管理、これを利用すれば自社データセンターは持たなくても良い」、 「Webベースのアプリケーション」、「サービスやインフラのリモート提供でローカルの資源として利用」、中には「クライアント側はクラウドではないが取引が発生すればクラウド化する」、「インターネットの言葉の置き換え」などなど。またベンダーによるSaaSやIaaS、PaaSなどの宣伝も混乱要因となっている模様だ。

◆ Cloud Computingは定着し、30%が何らかの実施に向けた段階

このような状況にもかかわらず、Cloud Computingは定着の方向にある。
政府系回答者の76%(民間では51%)はCloud Computingは定着していると考え、61%が5年以内にコアアプリケーションが移行されるとしている。

下図はCloud Computingの取り組み状況を示したものであるが、現段階で最も多いのは、官民とも約半数強(政府系は46%、民間48%)が技術的な調査・研究段階にあり、既に始めているところは共に13%、デザイン段階にあるのは政府系が10%-民間は8%、適用段階は政府系が7%-民間が8%となった。整理すると、政府系で何らかのクラウド実行に向けた段階(デザイン、適用、本番)にあるのは30%となり、民間は29%、そして各々約半数が調査中であることから、今後は急速に進展することが予測される。また、部分的なクラウド利用では、データベースが44%、ドキュメントは42%、自社内の仮想化技術適用は28%となった。



◆ Cloud Computingのベネフィットは費用削減

次に政府系機関のCloud Computingに関するベネフィットは以下の通りとなったが、最も期待が高かったのは、①ハードウエア費用削減で57%、②使用量払いによる費用削減が45%、③スタッフ費用の削減が35%となり、ここまでは民間も同じだ。
次いで、④融通性が33%(flexibility)、⑤グループコラボレーションの可能性が24%(Potential for Group Collaboration)、⑥運用計画の継続性が22%(Continuity of Operations planning)となった。そして、官民共に63%がCloud Computingはコスト削減の切り札だとし、適用した官民の機関では90%が成功していると回答している。


◆ セキュリティーだけでなくクラウドにも不安

しかしながら、一方で課題も多い。
課題は大別すると2つ。ひとつは、インターネット固有のセキュリティーとプライバシー。
調査ではセキュリティー不安が78%と抜けて高く、次いでプライバ シーが41%となった。もうひとつはCloud Computingそのものに関するもの。まずクラウドで本当にコスト削減が出来るのかという疑問が24%、そしてすべてのやり取りがインターネット経由 となることからバンド幅は大丈夫かが24%、また、パフォーマンスに関するものが19%となった。


◆ 今後5年間の見通し

官民ともCloud Computingの将来については楽観的だ。
Public とPrivateのクラウドを比較すると、現在の利用は、政府系のPrivate利用が28%(民間は26%)でPublicは8%(民間は11%)となって、政府系はPrivate Cloudの利用が高く、民間はPublic Cloudの利用が高い。しかしながら、将来的には逆転し、政府系のPrivate利用は41%、民間は46%となり、政府系のPublicは27%で民間は41%と見込まれる。これらから、現状だけでなく、将来に亘っても政府系はややセキュリティーなどで神経質となってPrivate Cloud傾斜が強いことがわかる。

最後に今後5年間のクラウドアプリケーションに関する調査がある。
この調査は、主要アプリ ケーションが5年間で、これまで通り自営データセンターで実行なのか、もしくはクラウド(PublicかPrivateか)か、または不確かを区分するもの。総合的に見ると、e-mailアプリケーションがクラウド化される確率が最も高く60%を超えた。また、購買(Procurement)やERP、CRMも50%近くの確率でクラウド化との結果だ。これらの基幹業務が移行されるのは驚くべきことだが、SalesforceやSAPなどのクラウド化が 着実に浸透してきていることが背景にあるものと思われる。もっともシビアーな会計(Accounting)業務も40%以上の確率でクラウド化が進む見通しだ。


以上のように、MeriTalkのクラウド調査は大変興味深い。
Cloud Computingはもう話題の域を抜け、官民ともに30%がステージこそ違え、クラウドの実行に踏み出している。課題は2つ、ひとつはインターネットに関するもの、他はクラウド技術についてだ。これらは我々がこれまで経験してきたようにメリット/デメリットのバランスの上にある。そして、ユーザーに とって最大の期待は費用削減である。