2009年10月24日土曜日

OpSourceがCloud Computer事業に参入
-SaaaSの経験をIaaSにも-

「SaaSプラットフォーム・サービスプロバイダーOpSourceがCloud Computing市場に参入した」と聞いてもピンとこないかも知れないが、これまで同社がSaaSビジネスで経験した実績をもとにIaaS(Infrastructure as a Service)も開始したと言ったらはっきりするだろう。

◆ SaaSプラットフォームの提供(OpSource On-Demand)

まず始めに、OpSourceのこれまでの基本ビジネスについて説明しよう。
米 国では、独立系のソフトウェアベンダーISV(Independent Software Vendor)などを中心に、これまでの販売形態からの脱皮を目指してSaaS化が進んでいた。しかし、自前でSaaSシステムを構築することは、時間的 にも資金的にも容易ではない。これまでのOpSourceのビジネスはこれらの潜在顧客にSaaSプラットフォームを提供することだった。つまり、彼らが 必要とするプラットフォームソフトウェアやデータセンターなどの一式を提供、結果、ユーザーは自分のアプリケーションのみに集中することができた。これがOpSource On-Demandである。


こ のサービスを用いると、委託されたアプリケーション群は、OpSource Service Bus (OSB)上で稼動し、同一委託ベンダー分に限って、アプリケーション間の連動が可能となる。さらにこれらのアプリケーションは、OSBを介して、 OpSourceが用意した各種ツールとも連携が取れる。これらを利用すれば委託ベンダーは、特別なツールを使う
ことなく、詳細情報を手に入れることが可能だ。下図の分析(Analytics)ツールでは、日別や期間別のトランザクション量、同様に日別/業務別のレスポンスタイムの把握
などができる。


◆ ビリング・ライフサイクル管理(OpSource Billing CLM)

同様に用意されたビリング機能は、特に優れものだ。
使 用コンピューティング・リソースや各種サービスをもとにした請求処理は、どのCloud Computingでもあるが、委託アプリケーションを利用するエンドユーザー向けビリング機能はなく、その内容には感心する。このエンドユーザー向け OpSource Billing Customer Lifecycle Management(CLM)を使うことで、エンドユーザーの利用情報の収集、請求書の発行、支払いなどが一連の処理として実行できる。例えば、ISV が自社開発のパッケージソフトウェアをSaaSとして提供する場合、エンドユーザーは自分のアカウントを作り、ログオンして利用し、オンボードで自分のビ リング情報を常時閲覧しながら利用分の請求を受ける。これらの一連の処理は、CLMに用意されたAPIを用いて、アプリケーションと統合することで可能と なる。委託ベンダーはまた、ユーザー課金を自社戦略に従い、サブスクリプションなのか、使用量払い(Pay by USE)なのかを決めて組み込むことも出来る。支払いは、クレジットカード、デビッドカード、小切手にも対応し、PayPalなど他のマイクロペイメン ト・システムと比べて大幅な機能向上が図られている。

◆ 委託企業ブランドによるカスタマーケア

OpSource On-Demandで、もうひとつ重要なのは、カスタマーケア(Customer Care)だ。SaaSビジネスはコンピュータだけでは処理が出来ない。そのため委託企業名で、エンドユーザー向けコールセンターを24時間対応で提供し ている。委託企業とのチームワークによって、トレーニングされた要員が全てをサポートする。この仕組みによって委託企業は、ITインフラだけでなく、コー ルセンターの人的資源も削減することが出来る。

◆ 新しいIaaSサービス(OpSource Cloud)

今回、発表された新IaaSサービスのOpSource Cloudは、SaaSプラットフォーム
ビ ジネスの経験の延長にある。SaaSは当然、何らかのインフラとなるIaaS上にあり、新たに登場したサービスは、この部分を切り出し、ユーザープロビ ジョニングなど幾つかのサービス機能を付加したものだ。仮想マシンとして利用可能なOSは、Windows Server 2003と各種Linux。主な特徴は、①VPN(Virtual Private Network)を利用したセキュアーなVPC(Virtual Private Cloud)の構築、②仮想マシンを利用する複数エンドユーザー向けアクセスコントロール(ID/Password)の設定、③米SAS 70や欧Safe Harborなどへの準拠だ。SAS 70は、SOX法でアウトソーシングなどを行う外部企業の内部統制を第三者が監査する規定である。


OpSource Cloudは、新たに作り上げたわけではない。
実 績のあるSaaSの土台を開放したものだ。8月末に限定β版がリリースされ、10月5日から公開βとなった。この短期間のステップアップも実績ならではの ことである。当面の目標はAmazon EC2のキャッチアップだ。そのためには、SaaSで培った多くの機能を提供し、マーケティングには、世界中に販売のためのパートナーを構築する。公開β 後、オーストラリアのPacTec、そして日本のビープラッツ(株)がパートナーになることが決まった。ユーザーによる評価がまさに始まろうとしている。