このところMicrosoft Office 365に関する発表が(後述)相次いだ。しかし、このDaaSシリーズ(1/2/3)ではOffice 365を取り上げてこなかった。Office 365をDaaSと言うかどうかはともかく、これは不公平だという声がある。なぜなら、OfficeこそDaaSの定番アプリケーションだからだ。そこで今回はこれを取り上げようと思う。Office 365を一言でいうなら、①Office Suite(Office 365 ProPlus)と、②メール/スケジュール(Exchange Online)、③Webカンファレンス(Lync Online)、④コラボレーション(SharePoint Online)の4つをセットにしたクラウドサービスである。Office 365は米国で2010年10月(日本では昨年2月)に発表され、Government Plan(公共機関向けディスカウント)と相まって、米地方自治体での導入が広がった。特に、New York州では12万人職員が移行したと伝えられ、最大のユーザとなった。
◆ Office 365 ProPlusの仮想化アプリケーションとは何か
このクラウドサービスの要は、勿論、Office 365 ProPlus(以下、ProPlus)だ。ProPlusとはWord、Excel、PowerPoint、OneNote、Access、Outlook、Publisherを含むOffice Professional 2013にプラスαのメリットがあることから付けられた名前だ。その動作を見てみよう。ProPlusの各アプリケーションはストリーミング技術を使った特別な仮想環境で実行される。この技術は2007年にMicrosoftが買収したSoftricityのSoftGridと呼ばれていたものである(現 Microsoft Application Virtualization-以下、App-V)。この方法ではあらかじめユーザに配信する各アプリケーションを分割加工処理を施す。ある調査によると、我々が通常使用するアプリケーションではソフトウェアの全体の20%程度があれば十分で残りは例外処理など特殊なものだという。つまり、よく使う部分を切り出して、最初にこの塊を送ればこと足りる。後は必要に応じて、小出しに送れば良いわけだ。
- クイック実行 ・・・ さてApp-Vのクライアント側にはこの塊を実行させる環境が要る(App-V Client)。例えばWordを要求するとインストールが始まり、最初の塊のダウンロードが終わればすぐに実行ができる。この間少し待たなければならない。残りはバックグラウンド処理となり、これをクイック実行という。このようにProPlusのアプリケーションはApp-Vの分離環境で実行されるので、ローカルにMSIでインストールされている旧バージョンがあっても並行して実行できる。一度インストールが終われば、使い勝手も、レスポンスも、慣れ親しんだこれまでとほぼ同様だ。この点、クラウド上で実行される通常のDaaSアプリケーションより優れている。次にライセンスだが、ProPlusではどのプラン(後述)でも1ユーザに付き5つ与えられる。仕事で使うデスクトップPC、ノートPC、さらに自宅のPC、そしてモバイル(スマホやタブレット)に適用するといったイメージだ。これらのライセンスはApp-Vでダウンロードした各種のデバイスに適用されるが、ProPlus自体が月単位のサブスクリプションなのでこれが切れれば使用が出来なくなる。
- Officeオンデマンド ・・・ 次にOfficeオンデマンドという機能がある。これは自分のデバイスだがProPlusをダウンロードしていないものを使う場合やホテルのビジネスセンターなどにあるPCを借りる際に有効だ。例えばゲストでログインし、Officeオンデマンドにアクセスすると必要なアプリケーションがストリーミングされて通常と同じように使うことが出来る。ただ、利用が終わるとアプリケーションは完全にそのPCから除去されてしまう。この利用にはサブスクリプションは必要だが、ライセンス数は消化されない。
- Office Online ・・・ さらにOffice365にはOffice Onlineというサービスもある。これは前二者と違って、ブラウザベースのWebアプリケーションだ。利用できるのは Word Online、Excel Online、PowerPoint Online、Outlook.com、OneNote Online、OneDriveで、しかも全て無償である。7GBまで無償のクラウドストレージOneDriveと連携して、Office Onlineで作成したファイルをOneDriveに保存したり、OneDriveからローカルPCにダウンロード&アップロードさせて利用する。上手に使うにはOffice 365ないしはOffice
2013との連動が必要となる。
◆ 使い勝手と価格優位は揺るがない
Office 365の強みは、何と言っても世界中で膨大な数のユーザがいること、そして彼らが好む使い勝手、加えて低価格戦略である。同社はこれまでのライセンスビジネスからOffice 365ではサブスクリプションに変更した。これによってユーザはバージョンアップ時の更新から開放され、経理上も資産から経費計上となった。用意さ れているけプランは、①ユーザ数25名までのSmall Businessが$5(¥410)/人/月、②同じく25名までのSmall Business Premiumは$12.5(¥1,030)/人/月、③ユーザ数300名のMidsize Businessが$15(¥1,230)/人/月、④ユーザ数無制限のEnterprise E1は$8(¥660)/人/月、⑤同ユーザ数無制限のEnterprise E3は$20(¥1,800) /人/月となっている。(詳細は1と2を参照)
◆ 家庭向けと個人向け
3月13日、米Microsoftは個人向けOffice 365 Personalを発表、利用は今春(未定)。また日本では提供されていないが、英語版にはOffice 365 Home Premiumがある。これにはOffice 365
ProPlusが含まれ、家族で5ライセンス、料金は最安値の$9.99/月だ。今回発表されたPersonalは、それよりも安くたった$6.99/月。詳細は未発表だが、これには多分Offoce 365
ProPlusが含まれるはずだ。自分1人で十分(ライセンスは1人)、家族も1台のPCを共用している。そのような人たちにはぴったりのサービスである。適用はPCかMac、もしくはタブレットでも構わない。そしてPersonalが正式に利用可能となった時点で、Office 365 Home PremiumはOffice 365 Homeに呼称変更する。このHomeとPersonalには、①Skypeが60分/月と、②OneDriveが20GB追加というおまけがつく予定だ。(日本でのリリースは未定)
◆ Microsofr Office for iPad登場
続いて3月27日、米MicrosoftはApple iPad向けMicrosoft Office for iPadを発表した。この発表ではiPadだけが目立っているが、同時にiPhoneやAndroidのスマホ向けもOffice on Mobileとしてリリースされている。まずiPad版だが、基本的にOffice 365と連動したサービスでサブスクリプションが必要だ。用意されたWord、Excel、PowerPointのアプリケーションはApp Storeから無償でダウンロードでき、閲覧(Read Only)だけなら無償利用も可能である。
同日リリースされたiPad版は、現在、日本語版としてはリリースが未定だ。しかし、米App Storeからダウンロードしたアプリケーション(右図)は日本語処理は出来るし、各種のテンプレートも用意されている。利用は基本的にOffice Online同様OneDriveと連動させる。ライセンスがあれば、“アクティブ化”ボタンをタップしてサインすれば良い。一方、iPhoneやAndroid向けのOffcie on Mobileは、昨年6月発表したOffice Mobile for Office 365 subscribersを改定したものだ。今回の改正によってライセンスが無くても個人ユーザに限り全ての機能が無償で利用できる。
◆ Microsofr Office for iPad登場
続いて3月27日、米MicrosoftはApple iPad向けMicrosoft Office for iPadを発表した。この発表ではiPadだけが目立っているが、同時にiPhoneやAndroidのスマホ向けもOffice on Mobileとしてリリースされている。まずiPad版だが、基本的にOffice 365と連動したサービスでサブスクリプションが必要だ。用意されたWord、Excel、PowerPointのアプリケーションはApp Storeから無償でダウンロードでき、閲覧(Read Only)だけなら無償利用も可能である。
同日リリースされたiPad版は、現在、日本語版としてはリリースが未定だ。しかし、米App Storeからダウンロードしたアプリケーション(右図)は日本語処理は出来るし、各種のテンプレートも用意されている。利用は基本的にOffice Online同様OneDriveと連動させる。ライセンスがあれば、“アクティブ化”ボタンをタップしてサインすれば良い。一方、iPhoneやAndroid向けのOffcie on Mobileは、昨年6月発表したOffice Mobile for Office 365 subscribersを改定したものだ。今回の改正によってライセンスが無くても個人ユーザに限り全ての機能が無償で利用できる。
◆ 新CEOへの期待
今年2月4日、新CEOに選任されたSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏への期待は大きい。初代CEOのBill Gates氏からSteve Ballmer氏が2代目CEOとなったのは2000年1月。彼の任務はGates氏の作り上げた巨大なソフトウェアライセンスビジネスを永続性のあるサブスクリプションビジネスへ移行させることだった。ビジネスはBallmar氏にまかせ、Gates氏は自らChief Software Architectとなって技術の舵取りをした。そして氏が大きな期待を寄せたのはRay Ozzie氏だ。2006年6月、Gates氏は引退を宣言するとともにOzzie氏にChief Software Architectを引き継いだ。そして時代はクラウドへ突入した。この年、Amazon Web Servicesが登場し、2008年にはMicrosoftもWindows Azure(4/3よりMicrosoft Azureに名称変更)を投入した。Ozzie氏はAzureを上手くテイクオフさせるかに見えたが、Ballmar氏と衝突して2010年10月、実務から手を引き、年末に退社。皮肉にもOffice 365の発表は同じ2010年10月だった。パブリックβは翌2011年4月、そしてジェネラルリリースは2011年の6月28日である。3代目CEOとなったNadella氏の直近の役職はCloud & Enterprise GroupのEVPだ。MicrosoftにとってAzureとOffice 365はサブスクリプションビジネスに向う両輪となる。何としても成功させなければならない。3月27日、Offcie 365 for iPadの発表ではNadella氏自ら登壇し、熱のこもったプレゼンを展開した。この日が彼自身のデビューでもある。