2月23日、連邦取引委員会FTC(US Federal Trade Commission)の審査が終了したからだ。しかし両社の合併作業はこれからが正念場である。当面の課題は膨大な買収資金の調達だ。次に新生Dell-EMCの資産をどのように生かして、どのように運営していくのだろうか。1回目は買収の仕組みと資金調達ついて見て行こう。
=巨額資金の調達は上手く行くのか=
昨年10月12日、Dellが$67B(約8兆円)という史上最大規模の金額でEMCを買収すると発表した。この買収でEMCの株主は、DellがEMCの評価を$33.15としたことで、当時の株価より高いメリットを受けとるはずであった。内訳はEMC株1株当たり$24.05の現金とEMCの子会社VMwareの業績連動株(Tracking Stock)の0.111株を加えたものである。当時のEMC株は約$24程度で、VMware株は$82位だった。しかし現在の株価は違う。EMC株は昨年9月29日の$23.13を底に、発表当日の10月12日には$28.35まで跳ね上がり、そしてゆるやかに下降し、1月27日は$23.90、その後は持ち直して3月31日現在$26.65である。問題なのはもう一方のVMware株だ。同社株は発表前の10月6日は$81.28、当日の12日は$82まで値をつけたが終値は$72.27と下がり、その後10月21日に$55.42、今年2月9日には$43.84と下がり続け、3月31日現在で$52.28と低調なままだ。
この状況はEMCの株主をやきもきさせる以上に買い手のDellにとっては大問題だ。というのは、Dellは優良会社のVMwareを武器に資金調達をしなければならないからである。この買収では、Dell側はMichael Dell氏の資金(MSD Capital)を使い、さらに投資会社Silver Lake Partnersと組んでいる。このSilver Lakeとは2013年、Carl Icahn氏などの投資家からDellが買収を仕掛けられた時、MBOで対抗して乗り切った相手である。しかしDellとVCが組んだとはいえ、$67Bは桁外れな金額だ。2月11日付のNew York Postによれば、Dell側は、現時点で$45B(5兆4千億円)の外部資金が必要だという。そのうち、まず最初の$10B(1兆²千億円)の調達が始まった。しかしJP Morgan筋の情報として、ハイテク株の不調、特にVMware株の低調から、すぐにはまとまらず10日間の延長となったらしい。これと並行して、米大統領候補にもなったRoss Perot氏からDellが買収したPerot Systems(現Dell Systems)の売却も動いていた。Dell側は当初$5B(6,000億円)を見込んでいたが、有力見込先だった仏Atosとの交渉は上手く行かず、その後インドのTataとNTT Dataのオークションとなり、結果は報道されたようにDell Service部門の3社(Dell Systems、Dell Technology & Solutions、Dell Services)をNTT Dataが買収金額$3.05B(約3,660億円)で競り落とした。この取引を見ると、Dellは資金調達にやっきである。なにしろ2009年に$3.9Bで買ったPerot Systemsにおまけを付けて、それらを約20%もディスカウントして売ったのだから。。。
=これからどうなるか!=
Dell-EMCの合併は反トラストはクリアーした。しかし欧州や中国などはこれからだ。さらにEMCの株主からの訴訟も幾つか起こっている。これらは何とか収まるだろう。難関はやはり資金調達だ。買収発表時と異なりVMwareの株価は大きく下がった。最近の株価を$52.28と仮定すると現在のマーケットキャップは$22.15B、約35%の下落である。こうなると、EMC株主の不満はともかく、調達予定のCredit SuisseやBarclays、Bank of America、Citi、Goldman Sachs、JP Morgan、Deutsche Bankなどの反応は鈍くなる。つまり、これら銀行団にとっては優良企業のVMwareが担保のようなものだからだ。VMware株価の低迷で資金調達の行方が見えにくくなってきた。