2016年6月3日金曜日

Auto Tech(3)  Google AIをリードした2人の天才!

前回は自動運転車(オートノマスビークル/Autonomous Vehicle)の市場見通しとテクノロジーについて紹介した。今回はその先頭を走るGoogle Carとはどのようなものか、そしてGoogle AIをリードする人物についてまとめた。

=Google CarとAI技術!=
この分野には2人の天才がいる。
 ひとりは現在のGoogle Self-Driving Carの原型となるオートノマスビークルを開発したSebastian Thrun氏だ。Thrun氏はスタンフォード大学のロボット開発者兼コンピュータ科学者として、砂漠のコース走るDARPA Grand Challengeに挑戦、第1回の2004年は完走車はなく、翌2005年の第2回目で氏のスタンフォード大学チームのStanleyが優勝した。次いで2007年の改造市販車市街地を走るDARPA Urban Challengeでは、カーネギーメロン大学とGMチームが開発したBOSS(Chevrolet Tahoe)が優勝し、スタンフォード大学のJunior(Volkswagen Passat)は2位となった。これらの技術を引っ提げて、Thrun氏はスタンフォード大学の準教授のままGoogle CarのためのGoogle Xを立ち上げ、GoogleのVP&Fellowとなった。その後Thrun氏はスタンフォード大学に戻ったが、Google Xは、Google Carだけでなく、月にロケットを打ち上げる(Moonshot)ような革新的な技術研究機関として活躍している。

Google Carに話を戻そう。前回、オートノマスビークルにとって、車の目となる3次元リモートセンサーLiDARの重要性は触れた。実際のところGoogle Carに採用されているVelodyne HDL-64E64個のレーザーセンサーを内蔵し、水平360°、垂直26.8°の三次元イメージングに対応している。そして、秒あたり2,200万ポイントを測定し、誤差は2cm以下、測定距離は約120mまで可能という優れものだ。この高性能LiDARから測定される3次元データとマップ、さらに各種センサーからのデータを使い、AIソフトウェアで制御する。これこそオートノマスビークルの心臓だ。Google Carも一般のロボットと同様、基本的には、①まずLiDARなどで周囲の状況を把握し、さらに誤差を調整して、②次にどう行動すべきかのプランを作り、③それを再度調整しながら実行する。その流れを制御サイクルと呼び、Google Carでは0.1秒毎に高速実行する。前回、米運輸省のオートマスビークルの定義Level of Autonomous Vehicleを紹介した。現在、Google Carが目指しているのは、この中のLevel-3だ。今後LiDARだけでなく、各種のセンサーやカメラも高性能化する。そしてAIソフトウェアも進化し、Google Carがどのような形であれ、市場に登場するのは間違いない。

=アルファ碁=
もうひりの天才はチェスの天才少年だったDemis Hassabis氏である。
昨年11月、Googleは自社で使用中のDeep LearningのAIライブラリーTnesor Flowをオープンソースとして公開した。そして先日(5/18~20)開催されたGoogle I/O 2016では、このライブラリー向け専用のAIプロセッサーTPU(Tensor Processing Unit)がとうとうベールを脱いだ。この一連の流れは2014年に買収した英DeepMind Tecnologies(現Google DeepMind)から始まっている(既報)。このDeepMindの創業者がHassabis氏だ。あのElon Musk氏も初期投資家の一人である。同社が開発した畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)は素晴らしい。この3月、世界最強の囲碁棋士の一人と対戦し、4勝1敗で撃破したアルファ碁-AlphaGo-は同社製もちろんニューラルネットワーク理論と実行ライブラリーTensor Flow、そしてエンジンのTPUが使われている。アルファ碁は囲碁のルールや定石がプログラミングされているわけではない。これまでの膨大な棋譜を読み取って学習し、そこから打つ手を考え出す。実際の対戦では我々の考えられないひどい手が結果的に功を奏して勝ちに結びついたり、相手の勝負手に動揺して突然乱れだすという失態もあった。無の状態から、Big Dataの中のルールを読み解き、学習しながら進化する。これがGoogle Deep Learningだ。現時点ではGoogle Carとの直接の結びつきはない。しかし近未来、この技術が車に適用されればLevel-4の完全自動運転車が出現するのも夢ではない。