=Google CarとAI技術!=
この分野には2人の天才がいる。
ひとりは現在のGoogle Self-Driving Carの原型となるオートノマスビークルを開発したSebastian Thrun氏だ。Thrun氏はスタンフォード大学のロボット開発者兼コンピュータ科学者として、砂漠のコースを走るDARPA Grand Challengeに挑戦、第1回の2004年は完走車はなく、翌2005年の第2回目で氏のスタンフォード大学チームのStanleyが優勝した。次いで2007年の改造市販車で市街地を走るDARPA Urban Challengeでは、カーネギーメロン大学とGMチームが開発したBOSS(Chevrolet Tahoe)が優勝し、スタンフォード大学のJunior(Volkswagen Passat)は2位となった。これらの技術を引っ提げて、Thrun氏はスタンフォード大学の準教授のままGoogle CarのためのGoogle Xを立ち上げ、GoogleのVP&Fellowとなった。その後Thrun氏はスタンフォード大学に戻ったが、Google Xは、Google Carだけでなく、月にロケットを打ち上げる(Moonshot)ような革新的な技術研究機関として活躍している。
=アルファ碁=
もうひとりの天才はチェスの天才少年だったDemis Hassabis氏である。
昨年11月、Googleは自社で使用中のDeep LearningのAIライブラリーTnesor Flowをオープンソースとして公開した。そして先日(5/18~20)開催されたGoogle I/O 2016では、このライブラリー向け専用のAIプロセッサーTPU(Tensor Processing Unit)がとうとうベールを脱いだ。この一連の流れは2014年に買収した英DeepMind Tecnologies(現Google DeepMind)から始まっている(既報)。このDeepMindの創業者がHassabis氏だ。あのElon Musk氏も初期投資家の一人である。同社が開発した畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)は素晴らしい。この3月、世界最強の囲碁棋士の一人と対戦し、4勝1敗で撃破したアルファ碁-AlphaGo-は同社製だ。もちろんニューラルネットワーク理論と実行ライブラリーTensor Flow、そしてエンジンのTPUが使われている。アルファ碁は囲碁のルールや定石がプログラミングされているわけではない。これまでの膨大な棋譜を読み取って学習し、そこから打つ手を考え出す。実際の対戦では我々の考えられないひどい手が結果的に功を奏して勝ちに結びついたり、相手の勝負手に動揺して突然乱れだすという失態もあった。無の状態から、Big Dataの中のルールを読み解き、学習しながら進化する。これがGoogle Deep Learningだ。現時点ではGoogle Carとの直接の結びつきはない。しかし近未来、この技術が車に適用されればLevel-4の完全自動運転車が出現するのも夢ではない。