Googleが始めたGoogle Self-Driving Car Projectを機に各社の開発が本格化した。Self-Driving CarやDriverless Carは日本人には馴染み易い英語だが、一般的には‶オートノマスビークル″Autonomous Vehicleと言う。このところ押され気味の米国勢にとって、自動運転車-オートノマスビークル-の開発は打倒日独の絶好のチャンスだ。まさにAIの勝負、ITで勝る米国が巻き返すのか、状況を追ってみた。
=9.5兆円の自動運転車市場と要素技術!=
5月20日、Lux Researchが発表したレポートによれば、自動車メーカーとテクノロジーデベロッパーによって開発されるオートノマスビークル(自動運転車)の市場は、2030年までに$87B(約9.5兆円)に達し、レーダーやマップなどオートノマスビークルを構成する技術要件の中で最大の勝者はソフトウェアだと分析している(下図)。
しのぎを削るオートノマスビークル開発の要素技術(上図)には、下からみると、①レーダー、②光リモートセンシングのLiDAR、③オプティカルカメラ、④ワイヤリング、⑤コンピュータ、⑥ワイヤレス、⑦ソフトウェア、⑧マップ、⑨コネクティビティ&アプリなどがあり、個々の市場規模(売上)では、ソフトウェアが一番大きく、コンピュータとカメラが同規模、そしてレーダーと続く。このレーダーには、自動ブレーキ用のミリ波レーダー、衝突防止の各種センサー、位置情報のGPS、タイヤの回転から走行距離を測るDMI(Distance Measuring
Instrument)などが含まれる。カメラもこれまでのものに比べてより高性能だ。そして、これら全てを纏めあげるのが制御ソフトウェア。もうひとつ大事な技術がある。オートノマスビークルに欠かせないLiDAR(右写真)。これはリモートセンシングで3D空間を読み取るイメージング装置だ。通常、オートノマスビークルの屋根に取り付けられて、クルクル回り、車の目となる。次にオートノマスビークルの分類はどうか。下図は米運輸省のオートノマスビークルを定義したLevel of Autonomous Vehicleである。Level-0は自動運転機能のまったくない車(No Automation)、Level-1は横滑り防止や衝突軽減ブレーキなどを装備した車(Function-Specific Automation)、Level-2はレーン走行(Lane Centering)と定速走行/車間距離制御(Adaptive Cruse Control)などの複数機能を組み合わせた車(Combined Function Automation)、Level-3は車の走行変化を常時モニターし、ハンドルやアクセル、ブレーキなどを総合的に制御する車(Limited Self-Driving Automation)、Level-4は全ての走行制御だけでなく、路面状況もモニターして、両面からより完全な自動運転(Full Self-Driving Automation)を目指す車だ。そして、Level-3は2020年以降、Level-4は2025年以降に市場に登場予定だとしている。
Lux Researchのレポートに戻ると、同レポートでは、2030年までに、Level-2は出荷された自動運転車の92%を占めて主流となり、Level-3はたったの8%、Level-4はまだ登場しないだろうと、時期に関して、米運輸省よりやや厳しい予測している。
Source: Ministry of Transport |
- さらに同レポートでは、現在までのところ、オートノマスビークルは米国と欧州市場がリードしているが、いずれ中国市場が追い越すと予測する。2030年時点で、全世界に出荷される1億2,000万台のうち中国市場が35%を占めて金額では$24B(約2.64兆円)、対する米国は$21B(約2.31兆円)、欧州は$20B(約2.2兆円)だ。
- そして、オートノマスビークル開発ではソフトウェアが差別化のポイントとなる。GoogleやIBMのようなパワーハウスが提供する様々などう使うかが差別化の鍵となり、この分野の売り上げは、現時点では$0.5B(約550億円)だが、2020年には$10B(約1.1兆円)、2030年には$25B(約2.75兆円)と予測する。
- 同レポートは最後に、真に自立性のある車は現時点でまだ捉えようがなく、2030年までには表れないとし、もっとも楽観的に見ても、2030年に出荷されるLevel-4とおぼしき25万台が段階的にブレークスルーしていくのではないか、と締めくくっている。