2016年5月22日日曜日

AutoTech(1) 
     PivotalにFordが投資、Volkswagenとも提携! 

自動車とITの融合がすごいスピードで加速している。
現代の車はまさにITの塊だ。今や車載マイコンの数は100個に近く、車載用LANのCAN(Car Area Network)だってある。命を預かる車、そのためのシステム開発は正確が絶対条件だ。電子制御のエレクトリックカーやハイブリッドカー、モバイル統合のテレマティクス、さらにAIを駆使した自動運転など、車はもはやコンピュータにタイヤがついて走っているようである。

=FordがPivotalに200億円投資!=
5月5日、Ford MotorsがPivotalに$182.2M(約200億円)を投資するニュースが流れた。3回目のSeries-Cである。発表によるとSeries-Cの総額は$253M。つまりFordの投資額はその72%にあたる。こうしてMarcy Klevorn女史がボードメンバー入りする予定となった。史は2013年9月にFord CIOオフィスのディレクターになり、昨年1月にはCIOに就任。女史は自身のキャリアの多くをFord IT部門と共に過ごしてきた。昨年12月、PivotalとのTeam upを指揮したことで注目を集め、提携の目的を「自動車のIT開発に正確性とスピードをつけるためのものだ」と説明した。Pivotalのウリは大きく3つある。まずPivotal CF。これはPaaSのデファクトで、同社が所有するオープンソースCloud Foundry適用のプラットフォーム。次にPibvotal Labsが提供するソフトウェア開発コンサルティングサービス。3つ目はビッグデータスィートだ。 Fordはこの提携後、Cloud Foundryの導入とPivotal Labsのサービスを受けてきた。結果は予想以上だった。特にCloud FoundryはAWSでもMicrosoft Azureでも走らせることが出来る。クラウドによるIT開発、これが、これからの自動車開発に欠かせないというのがFordの判断である。

=VolkswagenもPivotalと提携=
Fordの提携を追うように、今年3月末、VolkswagenはベルリンにDigital Labを開設して、PivotalとStrategic Partnership締結し た。このラボにはセールスからテクニカルエンジニアまでの社内専門家が集まり、ユーザをネットワーク化したモビリティ関連のソリューション開発を行う。これによって、新たなユーザエクスペリエンスを作り出そうという訳だ。開発拠点となるラボは、ベルリンとミュンヘン、そしてサンフランシスコの3ヶ所。社内にシリコンバレー流思考を定着させる目的である。


=自動車会社だけではない=
Pivotalに入れ込んでいるのは自動車メーカーだけではない。
Pivotalは2012年にEMCからスピンアウトし、翌2013年にはGEから$105M(約115億円)の投資を受け入れている。この投資目的は総合電機メーカーとしての産業用インターネット開発や大規模データ分析のためである。今日で言うIoTやBig Dataだ。実際の作業部署はシリコンバレーの対岸にあるサンレイモン市のGE Software。GEはこの投資と提携を睨んで2012年、GE Softwareの本社をグローバルなソフトウェア開発センターとしてこのベイエリアに移した。

=総額は700億円、そしてIPOへ=
今や米大手企業のクラウド利用は一般化した。IaaSをマルチプロバイダー環境で使い、その上でPaaSを統一する。こうすることでIaaSのリスク分散を行い、開発環境を統一して、AutoTechを加速させる。そこにPivotalの価値がある。Fordによる200億円の投資には後日談がある。Forbesの報道によれば、その後の米証券取引委員会へのファイリングで、総額はとんでもなく跳ね上がり、最終的に$653M(約718億円)に達した。これにはパブリッククラウド市場でAmazonを追うMicrosoftからの投資も含まれている。Dell-EMCの合併がらみで、PivotalのIPOという期待がある。とは言え、何とも凄い金額になったものである。