2016年6月9日木曜日

AutoTech(4) -米Big 3の対応!-

Google Carはあまりにも有名になった。
他方、Appleが自動運転車(オートノマスビークル/Autonomous Vehicle)を開発している噂は尽きないし、TeslaもLevel-2(Combined Function Automation)の完成を目指したAuto Pilotをこのほど正式にリリースした。ところで米Big 3はどのようにオートノマスビークルに対応しようとしているのか。今回はこれを追ってみた。

=Fordの開発は本気だ!=
Big 3の中ではFordが一番進んでいるように見える。
Fordの開発センターはデトロイトにほど近いディアボーン(Dearborn)にある。ここでの開発はFord Fusion Hybridがベースだ。他社のオートノマスビークルと比べ、Fusionには屋根に4つのLiDARが見える。2つは左右に直立に、もう2つはその外側に角のように斜めに取り付けられている。より広い範囲を確実にカバーしようというわけだ。これによって、かすれた車線やぼこぼこ道、良くない天候でも運転が可能となる。実際のところ、Fordでは夜間走行や雪道走行なども実施した。現在、10台のテスト車が公道を走っているが年末までには3倍の30台体制となる予定だ。そして、さらに高性能の新型LiDARのULTRA PuckがVelodyneから6月4日発表された。最初のユーザーはFordだ。目指すは今後5年以内にLevel-4のフル自動化オートノマスビークルの出荷である。

=GMの段階作戦!=
GMの開発センターはFordの拠点からたった20マイル離れた同じミシガン州のウォーレン(Warren)だ。GMの採った戦略は、Fordとは異なる。彼らのオートノマスビークル開発は進んでいるとは言い難い。しかしテレマティックスでは他社よりも進んでいる。飛躍より着実に、そして段階的に、それがGMの戦略のようである。目下、第1ステップとして開発しているのはCadillac向けのSuper Cruiseだ。この技術はLevel-2(Combined Function Automation)に該当するもので、高速道路の走行時にスピードの増減を制御し、走行レーンを識別してクルマを走らせる。ただしGMは「それでもドライバーは必要だ」と完全な自律型ではないと説明、出荷は2017年の予定だ。半自動だが来年出荷のGMか、5年後の完全自動化のFordか、市場はどう反応するだろう。この開発と並行して、GMは今年3月11日、オートノマスビークル用のキットを開発するスタートアップCruise Automation買収した。他の報道によれば$1B(約1,100億円)を超える買い物らしい。第2ステップに向けた対応なのだろうか。The Wall Street Journalによると、これまで、同社はカリフォルニア州内運転限定のAudi A4/S4向け半自動化キットCruise-PR1を$10,000(約110万円)で出荷してきた。ここまではGM Super Cruiseと同じ範疇である。しかし、昨年9月、$20M(約22億円)の資金調達以降、次なる成長を目指して優秀な人材を集め出した。さらに酷暑にも耐えるテストに向けてアリゾナにも事務所を開設した。当面、同社はGM内の独立部隊として活動する。その後、Cruise PR1とSuper Cruiseが統合するのか、はたまたCruise Automationの次世代技術が登場するのか、要注意である。


=GoogleはFiat Chryslerと協業へ!=
さて最後のひとつ、Fiat Cheyslerは、Googleと協業することが決まった。
Google Carは現在までに140万マイル(≒2,253,082km 約地球56周)を走破。そして、次なる段階に進むため、Googleは実際の自動車会社との交渉に入った。 もちろん、種々の利便性から相手となるのは米メーカーである。5月3日のBloombergの報道によると、GMとの交渉は各種の所有権問題で上手く行かず、落ち着いたのはFiat Chryslerだ。車種は実績のあるファミリー向けミニバンChrysler Pacificaである。これにGoogle Carの専用ハードウェアとソフトウェアを搭載し、実用化に向けた本格テストを実施する。作られるのは限定100台だ。

=Financial Timesの予測!=
今年4月中旬のFinancial Timesの予測記事は面白かった。
何しろ、1908年に登場した世界初の量産車Ford Model-T、これこそ米運輸省が規定する元祖Level-0(No Automation)だと認定。さらにLevel-1の初めての車は、1998年製でAdaptive Cruise Control付きのJugar XKだという。次いでLevel-2(Combined Function Automation)はActive Lane Keeping Assist付きの2013年製Mercedes-Benz S-Classだ。ここまでは過去の話、ここからが同紙の予測である。まず、Level-3(Limited Self-Driving Automation)は来年(2017)登場予定でSuper Cruise付きのGM Cadillac CT6そして、米運輸省規定の最高位Level-4(Full Self-Driving Automation)に選ばれたのは全く人間による介入のないFord Fusion Hybridで、4~5年先の出荷見通しとした。さらに米運輸省の規定にはないが、番外として、その上のLevel-5には、夢のGoogle Carが選ばれた。もしかしたらハンドルもペダルもないかもしれない。出荷は10年先だという。