2016年7月1日金曜日

AutoTech(6) そしてクラウドに繋がる!
  -ライドシェアリング(Lyftの場合、そしてGettは?)-2-

車は所有する時代から、利用する時代に変わり始めた。
ライドシェアの配車サービスがこの流れをけん引している。そして、彼らと自動車メーカーの協業が動き出した。前回紹介したUberの場合はFordと組んだ。Reutersによると、オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車-Self Driving Car)開発の噂のあるAppleも今年5月、中国のライドシェアリングDidi Chuxingに$1B(約1,100億円)という巨額投資を行った。今回紹介するLyftの相手はGMである。

=LyftにはGMが$500Mを投資!=
Lyftの創業は2012年、本社はUberと同じサンフランシスコだ。何故だろう。それは、この地域がRide Sharingに馴染んでいるからである。ライドシェアは最近始まったことではない。カリフォルニア州だけではないが、特にベイエリアのように、人口密度が高く、多くの人々が働く地域では、フリーウェイの乗り合い自動車レーンCar Poolが発達している。日本のバスレーンのようなもので、決められた時間帯は2人以上の乗車でなければ走れない。シリコンバレーの工場の操業は朝6時。移民系の従業員は車を融通し合って、早朝、フリーウェイの専用カープールレーンを飛ばしてやってくる。飛行場には乗り合いの廉価なシャトルバスもあり、同じ方向の客を乗せて、次々に下ろしながら目的地に送ってくれる。こうした背景から、ライドシェアリングとスマホが融合するのは自然の流れだった。後発のLyftの狙いは2つ。利用者にはUberより低額で便利であること。ドライバーにはUberより稼げることだ。既存のタクシー料金の殆どはドライバーの人件費だという。これまでのタクシーより安く利用が出来て、ドライバーには自由な時間に自分の車で稼いでもらう。実際のところ、契約したドライバーの多くがUberとLyftを掛け持ちしていると聞く。そしてLyftの取る手数料はUberよりやや低めの設定だ。
さてUberとFordの協業を横目に、LyftとGMの新しい関係が始まった。今年1月のCES 2016でGM CEOのMary Barra女史が$500M(約550億円)を投資すると発表。続いて3月にはExpress Drive Programをリリースした。このプログラムはLyftのドライバーに向けたもので、当初はシカゴ、その後はボストンやワシントンDCなどに拡大され、車の保険やメンテナンスを含めて週$99(約1万円)でGMのレンタカーが借りられる。これでアルバイトをしてくれというわけである。さらにドライバーが週65回以上、Lyftのお客を乗せればGMのレンターカー代はタダとなる。そして5月10日、ついにオートノマスビークルに関するLyft提携が発表された。適用車種は本年下期出荷のGM Chevrolet Boltだ。少しややこしいがGMには2011年モデルとして発表されたChevrolet Voltという車種がある。エンジンとモーターを積んだHybrid EV(Electric Vechicle-電気自動車)だが、日本でおなじみのハイブリッドと違い、エンジンはバッテリー充電のみに使い、車自体はモーターだけで動く。つまり基本はEVだ。この技術はその後Cadillac ELRに引き継がれたが、今は生産停止である。今回、Lyftに提供するBoltはこれらの流れの受けながら、しかし完全なEV車として登場する。Wall Street Journalによると、Boltの自動運転技術の詳細は検討中とのことだが、想像できるのは、3月にGMが買収したCruise Automationの技術の採用だ。そして、新型Boltによるオートノマスビークルのテスト地は、Uberがピッツバーグなら、Lyftは本社があり、配車サービスの発祥の地のサンフランシスコとなるかもしれない。

=欧州Gettの米上陸、VWが$300M投資で傘下に!=
もう1社、気になる会社がある。ヨーロッパを中心にライドシェアサービスを展開してきたイスラエル生まれのGettだ。2009年から開発が始まり、当時の社名はGetTaxi。その後、2011年にはテルアビブで試行が始まり、すぐにロンドンで正式にローンチして、モスクワへ、そして2012年ニューヨークに上陸し、本社もニューヨークに移設した。このGettからビッグニュースが飛び出した。5月末、独Volkswargen(以下、VW)が$300M(約330億円)を投資したのである。同社への投資を見ると、創設資金となった2010年のシーズは$2M、2011年はSeries-Aで$7M、以降2014年のSeries-Dまでの累計は$200M、昨年は$20M追加され、総額$220Mとなった。今回の投資額はこれを大きく上回る。つまり、実質は買収による子会社化である。勿論、VWグループもオートノマスビークルには大きな関心を寄せている。今年3月のGeneva Motor ShowでVW CEOのMatthias Müller氏は、自動運転車のようなデジタル車開発を加速するため、ドイツ、米国、中国にある3ヶ所の開発センター投資を増やすと説明し、2025年までに何とか出荷したいとの意欲を示した。
=そしてクラウドに繋がる!=
UberやLyftなどの配車サービスはすでに多くの顧客を獲得し始めた。
彼らが目指す次なる戦略は、オートノマスビークルの導入だ。それによって一段と利用料金の引き下げを狙う。こうして普及競争は、Uberを筆頭とするライドシェアリング会社とGoogleなどのIT企業、さらにはGMやFordなどのメーカーが三つ巴の様相となってきた。各グループ共何としても主導権を握りたい。Uberは独自技術の付加を模索し、GoogleはAIを武器にFordは実際の車づくりでのアドバンテージを主張する。IT企業はGoogleだけではない。噂のAppleやLocal Mortorsと組んでIBMはWatosonを提供(関連記事はここ)し、さらにはMicrosoftだって何らかの参入を狙っている。実用化はもう足元までやって来た。最後の壁は、LiDARによる全天候型の認識技術と高度なDeep Learningを駆使したAIだ。高性能なLiDARは何万というスポットを広角度で高速にスキャンし、車の目となる。視界から見えるものを確実にし、安全な運転に結びつけるには、LiDARだけでなく、外部からの天気や交通情報などの取り込みが必要となる。出来ればその路線を走るドライバーの運転傾向や事故情報も欲しい。これらをクラウドから取り込んでAIで処理し、その結果はクラウドに戻す。こうして、Cloud Connected Carは、データ蓄積と学習を繰り返しながら、真の自律システムへと進化する。