2016年9月3日土曜日

AutoTech(11) Uberの野望!
    -自動運転トラックのOtto買収とVolvo提携-

全米最大手の配車サービスUberが俄然動き出してメディアを賑わしている。
8月18日、米フリーウェイを走る大型トラックをオートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車)に仕立てるスタートアップOttoを買収したと発表。この技術で自社用のオートノマスビークルを作り、さらに将来、これらを全面展開してドライバーレスを目指すという。

=Uberの大いなる野望!=
Morgan Stanleyによると、世界的な自動車生産の総量はもはや伸びず、一方Shaered Carは2030年には全体の15%超える。まさに「車は所有するものから利用する時代」に移り始めたようだ。GoogleがUberに258M(約283億円)を投資したのはちょうど3年前の2013年8月だ。Series-Cだった。そしてGoogle SVP David Drummond氏がUberのボードに就任。当時のForbesによると、GoogleはGoogle CarとUberを組み合わせたキラーアプリを目指していた。しかし状況は変わった。Uberが独自路線を歩み出したからだ。昨年2月、ピッツバーグのカーネギーメロン大学(CMU-Carnegie Mellon University)と組んでAdvanced Technologies Center発表した。この組織を核に同社向けのオートノマスビークルを開発するという。Uber CEO Travis Kalanick氏の大いなる野望だ。CMUのRobotics研究は超一流である。初期のGoogle Self-Driving Projectを率いたSebastian Thrun氏も、この8月始めまでGoogle Self-Driving ProjectのCTOだったChris Urmson氏も在籍していた。とはいえ、Uberの自力開発はそう簡単ではない。実際のところ5月中旬、同社はFordと提携してFord Fusion Hybridによる公道テストをピッツバーグ市内で開始すると発表した。 しかしUberの野望はそれでは終わらなかった。今年6月2日、Uberサウジアラビア政府系公共投資ファンドから$3.5B(約3,800億円)という巨額投資を受け入れて我々を驚かせた。これで集めた資金総額は14.11B(約1.5兆億円)。その評価額は$68B(約7.5兆円)となった。この巨費をどのように使うのか。それは全世界の市場開発だけではない。もちろん独自のオートノマスビークル開発が含まれている筈だ。そしてUberはひそかにOttoとの本格的な買収交渉に入った。買収の合意はかなり前だと言われ、その金額はUberの市場評価額のたった1%にあたる$680M(約680億円)である。 


Otto team and Uber's CEO Travis Kalanics

=Ottoという会社=
Ottoの創業者は4人。4人とも元Googleの社員だ。Anthony Levandowski氏はGoogle Self-Driving Car Projectのオリジナルメンバー、Lior Ron氏はオートノマスビークルには欠かせないGoogle Mapsのヘッド、Don Burnette氏はGoogle Carのオンボードソフトウェアのエンジニア、そしてClaire Delaunay女史はGoogle XのRoboticsをリードしてきた。Ottoの創業は今年1月、社員は現在約90名。それにしても、いくらスタートアップとは言え、たった8ヶ月のエキジットは最短というほかない。彼らがGoogleを離れた動機は、オートノマスビークルのインプリに関する意見の相違だと言う。Otto組はいち早く実用化しなければ負けてしまうと主張。Googleのプロジェクトは市販車への適用ではなく、本格的な開発にこだわった。独立したOttoが目を付けたのはコンボイと呼ばれる大型輸送用のトラックだ。フリーウェイを走るトラックドライバーの仕事は過酷だ。長時間をたった1人きりで走り、各種のペーパーワークもある。加えてこの業界は排ガス汚染や死亡事故などの社会問題も抱えている。段々とドライバーのなり手がいなくなる。これらが背景となって、Ottoはバンパーや運転席の屋根にLiDARや各種センサーを装備した改造キットをVolvoと提携して開発することを決めた。


 
=Uberの目指すもの!=
Uberが目指すものは何か。彼らがTeslaのように自動車産業に直接参入することはない。目指すは配車サービスに使う初の商用オートノマスビークルだ。そのために選んだのはOttoの提携先のVolvo XC90。これをオートノマスビークルに改造し、当面100台程度を用意する。各車両には即座に運転を代わることが出来るドライバーと記録係のナビゲーターの2名が乗車。このうちの一部車両は近々ピッツバーグ市内に登場する。これまで通り、顧客がUberアプリで配車を要求すると、ランダムにオートノマスビークルがアサインされる。当面は試行ということもあり無料らしい。Uber CEOのTravis Kalanick氏は、「他社との大きな違いは同社アプリによるデータ収集だ」と明言する。氏はどんなオートノマスビークルだって、人間無しでは完全なソフトウェアシステムとはならない、問題はデータだという。現在、約100万人とも言われる全世界のUberドライバーと利用客によって、1日で集められるデータは約1億マイル(1.6億Km)。このとてつもないデータがUberの武器だ。これによって正確な交通情報を得て、やがてはドライバーレスのオートノマスビークルが安全運転できる日がやってくる。