2014年5月27日火曜日

VMセントリックストレージのTintri!       -SDS10-


Tintriの設立は2008年。Tintriとはアイルランド語で稲妻(いなずま)、まさにFlashを意味する。同社はSSDとHDDを使ったティアリングのVMセントリックストレージを開発した。Tintri CTOで共同設立者、そして初代CEOでもあったKieran Harty氏はEVPとしてVMwareのエンジニアリングを引っ張ってきた。その彼には、長い間気になっていることがあった。ラックマウントやブレードなどのコンピュータとSAN/NASなどのストレージ間に横たわるギャップについてである。


=VMセントリックなストレージとは何か!VM Aware=
両者は長足の進歩を遂げてきた。しかし、エレクトロニクスのCPU速度と物理的なディスクアクセスには大きな差がある。この差は物理サーバー全盛期にはあまり気にならなかった。しかしVMwareなどのハイパーバイザが登場して、無数の仮想マシン(VM)が1台の物理マシン上で動き出すと問題は顕在化した。こうなればVMセントリックなストレージを開発する以外に道は無い。彼は疑わなかった。沢山のVMの中にはI/O要求が極端に多いもの、そうでないものがある。特定のVMのI/Oに引きずられるとストレージI/O性能の波が安定しない。これを解決するにはハイパーバイザから得られる情報を使い、それをもとにVMのI/O動作を分析・制御する。ストレージにはHDDとFlash SDDを組み合わせてハイブリッドとし、徹底した低価格化を実現する。これがVMに目覚めたストレージのVM Awareというコンセプトとなった。

=支えるソフトウェア、Tintri OS=
VM Awareを具現化する道具は2つ。ソフトウェアとハードウェアだ。
そのソフトウェアの柱がTintri OSである。ストレージがVMの動きを理解し、能動的に環境にフィットさせる。そのためにVMware ESXiとAPIでネイティブに接続する。これによって仮想化構成要素のすべてが可視化され、変化の兆しを迅速に把握して、VM単位の性能予約へ結びつける。後はルールに従って自動的に実行するだけだ。勿論、この過程でVMの履歴を管理し、これも性能予約に反映させる。こうしてVM毎に必要な性能を確保することで円滑な実行が保証される。Tintri OSの構造(下図)はフロントエンドとバックエンドからなる。フロントエンドにはNFSなどのプロトコルMgrとリソースパフォーマンスマネージメント(RPM)がある。Tintri OSはESXiと高速接続されたストレージの性能を最大限に引き出すために、このRPMに並行処理のレーンを用意。VMからの個々のI/O要求はこのレーンに割り当てられ、重複排除(Deduplication)とデータ圧縮(Compress)が同時並行的に行われる。これによって本来のデータは大幅に圧縮されて、ストレージのROIを大きく改善する。バックエンドは“Tintri Hybrid Filesystem”として、ホットデータのSSDとコールドのHDDを制御し、さらにVM単位のスナップショットやクローンなどの諸機能を実行する。

=コントローラはどうか=
TintriのVMセントリックストレージは、これまで述べてきたように大きくソフトウェアに依存している。一方、ハードウェアの方は市販品に徹しているようだ。勿論、SSDもHDDも市販品。SSDの前に1次キャッシュとして不揮発性メモリーのNVRAMを内臓している。サーバーからの書き出し“Write”要求は、このNVRAMにデータを書き込めばすぐにOKを返す。なぜならNVRAMは電源が落ちても消えないからだ。後は非同期でSSDに書き出す。通常のハイブリッドではSSDでのヒット率は読み書き平均で40~50%だが、Tintriの場合はこの2段階キャッシュのお陰で99%のヒットが得られるという。同社はコントローラについて詳細情報を開示していないが、想像するに特別なものではないらしい。冗長度対応はどうなっているのだろう。同社によると出荷時の設定はデフォルトでRAID6、そしてTintriの1筐体が1ボリューム、1LUNとなっている。これによって、これまでのストレージ管理の煩わしさはなく、VMから見ると必要なサイズのみが重要となる。

=最大のウリはコストパフォーマンスだ!=
Back View of T600 Series
同社のウリは何と言ってもコストパフォーマンスである。狙いは既設のHDDアレイをTintriでリプレースすることだ。VMセントリックの使い勝手を武器に費用対効果で市場開発を進める。現在、リリースされている製品は3つ。 下位モデルのT620は総容量19.44TB (6x 240 GB SSD + 18x 1 TB HDD)、中位のT540は同26.4 TB (8x 300 GB SSD + 8 x 3 TB HDD)、最上位機のT650は同 9.32 TB (9x 480 GB SSD + 15x 3 TB HDD)となっている。Tintriは現在、ハイパーバイザとしてVMwareのみをサポートしているが、KVMについてはここ2ヶ月以内、Hyper-Vについても今年下半期にはリリースされる予定だと聞く。

2014年5月12日月曜日

Flashストレージへの期待!              -SDS9-

SDS(Software-Defined Storage)を議論する際の論点は初回で述べた。 
今回はストレージの高速化について述べようと思う。これには幾つかの視点がある。
まずクラウド利用か否かは別として、ストレージそのものの高速化がある。もうひとつはクラウドでの対応だ。後者は次回以降に回すとして、今回は前者の代表的な技術Flash SSDについて触れてみようと思う。このコア技術であるFlash Memoryは東芝に在籍していた舛岡富士雄氏が発明(NOR:1980年、NAND:1986年)したものである。 

=ムーアの法則 .vs. ニュートンの法則= 
Source: Wikipedia
MPUの進化がMoore’s Lawに準じているという話は有名だが、HDDはディスク回転やアーム移動などの可動部改良が鍵となることからNewton’s Lawに従っているようだという説がある。周知のようにIntelのMPU開発は1971年に始まった。ビジコンから派遣された嶋正利氏とIntelチームが開発したIntel 4004である。1978年には現在の原型となる8086が登場し、DOS用80286(1982)、Windows用386(1985)が生まれ、その後Pentiumへ、さらにRISCや64ビット化、マルチコア化を取り込んで現在に至っている。
翻って、ストレージの進展はどうであろうか。
ストレージの代表格HDDは、MPUがIntelの開発史であったようにIBMから始まった。最初に登場したのはIBM 350、1956年のことである。IBM 350は表面が100トラックの24インチディスク50枚からなり、記憶容量は4.8メガバイト。その後、中型商用コンピュータ(IBM 1401)向けにIBM 1405(1960)が登場、ディスクは25枚と50枚の両面使用の2モデルで容量は10MBないし20MB。1973年、System/370用に読み書きアームとディスクが一体となったリムーバブルWinchester DriveIBM 3340が開発された。これはディスクパックのモデルにより容量は35MBないし70MB。こうしてHDDはIBMと共に成長して容量を増やしてきたが、1981年のIBM PCの登場によって大きな変革期へと入った。

=成長から成熟へ=
80年代前半、PCによるコモディティ化でWestern DigitalやSeagate Technologyが市場に参入、より一層の小型化、低価格化が進んだ。PC成長の裏側でメインフレームが後退、替わって登場したコモディティ技術のサーバー向けHDDも急成長。この流れは、読み取り精度の向上を目指したThin Film HeadやAMR/GMR Headなどの改良が進んだことで弾みがついた。この時期までNewton's Lawは順調に見えたが、時の流れの中で、HDDの成長は物理的装置であるが故の壁に突き当たる。下図(SNIA)で解るように、今後、まだ面密度(Areal Density)向上の余地は残されているものの、回転数はもうこれ以上あがり難く、よってSeek Timeも速くはならない見通しだ。

Source:SNIA
HDDのコモディティ化がはっきりすると、生みの親のIBMは、2002年、その技術を日立に売却、Hitachi Global Storage Technologies(HGST)となった。同社は激しい競争の中で小型HDDを断念してやっと黒字化。2011年3月、Western Digitalに再売却。同年12月にはSeagate TechnologiesがSamsung ElectronicsのHDD事業部門を買収して2強時代となる。

=Flashの時代へ=
Intel SSD 730
その後、HDD市場は主力の3.5inと2.5inが両輪となって成長したが、スマホとiPadの登場で状況は一変した。これらはSSDではないが同じNAND Flash Memoryを搭載し、その高速性と静音、省電力には目を見張った。以降、HDDと同型で同じSATAなどのインターフェースを持つSSDが次々に製品化され、コンピュータを少し弄った人なら自分でPCのHDDリプレースが可能となった。しかし課題もある。HDDの数倍という価格だ。普及による量産化と技術革新で徐々に下がっているとは言うものの、HDD陣営の追い上げ努力も大きく、激しい競争が続いている。

=Flashをどう使うか=
これまで普及してきた廉価なHDDに対して新たなFlashをどう使うか。
新たなストレージシステムを組み上げる主要コンポーネントは、コントローラ、NANDメモリ(Flash)、キャッシュ用SDRAM 、それにストレージアレイ(HDDないしSDD)。コントローラにはサーバとのインターフェースを担当するフロントエンドポートとストレージ接続を行うバックエンドポート、そしてキャッシュが内臓されている。キャッシュにはSDRAMかFlashが採用され、2層となる場合もある。バックエンドのストレージは廉価なHDDか高速のFlash SSDだ。一般にサーバからのデータ読み込み要求は、まずキャッシュでヒットさせ、ミスヒットの場合はストレージから読み込む。ストレージ書き込みの方法には2つある。サーバからの書き出し要求をキャッシュを通してストレージまでをひとつの流れとする “Write Through”方式。一方、キャッシュまでの書き込みとストレージへの書き出しを非同期で行う“Write  Back”方式がある。これらの制御はすべてコントローラ上のソフトウェアが実行する。どのようなアーキテクチャで、どのようにFlashを位置づけて製品化するかはソフトウェア次第だ。幾つかのパターンを見てみよう。

◆ Server-Attach PCI Flash
まずサーバーサイド利用の“Server-Attach PCI Flash”。これはFlash Memoryを搭載したカードをPCIeなどの標準インターフェースでサーバーに挿し込む。この場合、サーバーに挿入されたFlashは、外付けのHDDやFlash SSDと異って、RAMに準じるポジションとなり、サーバー内部に常にホットデータを保持することが可能となる。一般にメモリーが数GBなのに対し、この内臓型FlashはTB級の容量を持つことができるので、IOPSを大幅に向上させることができる。

◆ Array with Flash Cache
次にHDDアレイの高速化のためにFlashをキャシュとして組み合わせたものが“Array with Flash Cache”。このタイプの製品はHybrid Storageとして多くの製品が出荷されている。歴史的に見ると、まずHDDアレイの高速化としてSDRAMキャシュがコントローラ内に登場し、その拡張やリプレースとして大容量のFlashが採用されてきた。この方式はパフォーマンス改善には非常に効果的でIOPSは確実に1桁改善される。
◆ Array with Flash Tier
さらにFlash SSDとHDDアレイを組み合わせて階層化した製品が“Attach with Flash Tier”。この方式ではフロントはSSDでバックエンドはHDD。ここで良く利用するデータは“Hot”なものとしてフロントに置かれ、頻度の少ないものは“Cold”としてバックとなる。フロントにあったホットデータもアクセス頻度が落ちると自動的にバックに押し出され、逆にバックのデータもアクセス頻度が高くなるとフロントに引き上げられる。

◆ All Flash
そして、今もっとも注目されているのが“All Flash”である。HDDは使わず全てがFlath SSDで構成される。コントローラはHDD転用のものもあるが、より効果的な新設計のものが多い。この専用コントローラと新開発ソフトウェアでFlash SSDアレイの高速化に伴うサーバー間のボトルネックを解消したり、データ圧縮によってHDDとの価格差解消を狙う。今後、さらなる量産化と開発が進めばHDDの置き換えが見えてくる。


=Flashはギャップ解消の切り札!=
これまでHDD市場は過去2桁成長を続けてきたが、2011年(約6億台)が頂点だった。理由はHDDそのものの技術的な壁だけではない。現代は大量コンテンツ時代、そしてBig Data時代だ。このような環境にあって、コンピュータのシステムメモリーとストレージの間には大きなギャップが存在する。実際のところ、プログラム実行時のDRAMアクセスからHDDアクセスに替わったとたん、データ待ち時間が1~2桁遅くなる。この差はボトルネックとなってシステム性能を落してしまう。このギャップを埋める期待がFlashだ。Flashを上手く使えばアクセス時間は大幅に向上し、ユーザのストレスは解消される。こうして、Flashを利用したストレージアーキテクチャ(前述)の見直しが始まった。今後、どのような形に収斂するのか注視したい。


2014年4月21日月曜日

NTTコム「Bizホスティングクラウド」への期待

4月15日、NTTコミュニケーションズ(以 下、NTTコム)はクラウドの事業説明会を開催した。有馬社長自ら説明に立って、これまでの経過を概括。その上でキャリアとしてのアセットを活かしなが ら、クラウドビジネスを進める世界展開“Global Cloud Vision 2014”を力説した。キャッチフレーズは「Seamless Cloud for the World」。そして2015年度には売り上げ2,000億円を目指すと宣言。同社の一般向け“BizホスティングCloudn(クラウド・エヌ)”と企業向け“BizホスティングEnterprise Cloud”が始まったのは2012年6月末。相前後して、日本市場では多くのクラウドが登場したが、彼らが苦戦する中、NTTコムのクラウドは順調に成長している。しかし、世界市場を見るとAmazonが突出し、それをRackSpaceが追い、巨人IBMは自社開発のクラウドを捨ててSoftLayerに乗り換えた。時はまさに激動の真っ只中だ。1時間を越えた説明会の内容は、多くの記事(ITPro、ITmedia、クラウドWatch、マイナビ、サーチナ)があるのでここでは割愛したい。ただ正直のところ、終わった後、やや物足りなさを覚えた。以下は同社クラウド戦略に関する期待と提言である。

=NTTコムの優位なポジション=
クラウドプロバイダーの立ち位置は重要だ。
振り返ると、大手総合コンピュータ会社が表舞台を降りて、x86ベースのPCベンダーと群雄割拠するソフトウェアベンダーの時代となって久しい。さらに現在はと言えば、PCやサーバービジネスはモバイルに食われ、生き残ってきたLinuxとWindowsもAndroidやiOSが侵食し、多くのソフトウェ ア分野ではオープンソース製品が勢力を伸ばしている。つまり市場は成熟して、技術は民主化し、どんどん既存ベンダーの手から離れてゆく。クラウドはそのような時代背景の中で生まれ育ってきた。あのIBMのSmartCloudが上手く行かなかった理由がここにある。SoftLayerはユーザが本当に欲しているものが解っていた。Amazonはeコマースの会社だ。彼らはどのようなシステムが欲しいのか身を持って理解している。ホスティングビジネスの Rackspaceも同様だ。この流れは日本市場とて変わりはない。国内の大手コンピューター関連企業は、これまでの技術的しがらみを引きずりながらクラウドをスタートさせた。これに対して、NTTコムは比較的ニュートラルな状態からスタートできた。これが今日の成長の起点であろう。

=国際標準のクラウドへ=
このようなNTTコムへのユーザの期待とは何か。
それはクラウド採用時の短期的満足度だけではない。勿論、サポートや料金は重要である。しかしユーザが安心して長期に亘って使えることこそ、真に重要なポイントである。オンプレミスのシステムがクラウドに移行し、目の前からデータセンターが見えなくなった。今や業務システムだけでなく、開発環境もPaaSへ移行し始めている。全てがクラウドに向い抽象化が進む。ユーザにとってセンター運用の負担が減った分、不安も大きい。数年先には実際のサーバーを動かし たことが無いIT部員が増えてくる。彼らが頼るのは最早コンピュータメーカーではない。サービスプロバイダーだ。そのためには基幹技術や製品が長期間の利用に耐えるものでなければならない。これが基本だ。国際的な諸活動に積極的に参加し、コントリビュータとなって働き、「Bizホスティングこそがもっとも国際規格やデファクトに準拠している」とアピールできれば素晴らしい。それには、現在のベースとなっているCloudStackと進展著しいOpenStackとの調整がいるのかもしれない。ユーザにとって、国際標準に忠実であるという理解が進めば“Global Cloud Vision”の達成は見えてくる。

=価格競争はこれからだ=
説明会に先立って、NTTコムはクラウド料金を最大約37.5%値下げすると発表した。これは大きな弾みとなる。しかしAmazonの価格改定が20回近くに及ぶように、価格競争はこれからが本番だ。そのための鍵は要員とデータセンターである。これを改善しなければ世界では勝てない。まずキャリアとしてのアセットを活かした電話やテレビ会議、チャットなどのサポートを徹底すべきである。もうひとつの課題はデータセンター関連コストだ。有馬社長はnetmagicやRagingWireなどの買収の結果、最大手Equinixが約50万㎡(推定)程度なのに対し、NTTコムも約25万㎡になったと胸を張った。しかし、世界で戦う彼らのコスト意識は厳しい。これに対抗するには、国内外のセンターを全て自営として使うのではなく、何らかの工夫をしてスクェアコストを引き下げる模索がいる。関連して、ネットワーク機器への積極的なSDNやNFVの採用も急務である。

=NTTグループの総合力=
もうひとつ気になることがある。
それはNTTグループ全体としての動きである。NTT Dataは独自クラウドを運営しているし、親会社のNTT Holdingsも海外ではDimension Dataに投資している。南アフリカを本拠とする該社は世界展開の大手データセンターだ。2011年7月にはシリコンバレーのクラウドプロバイダーOpSource を買収してクラウドビジネスを本格化させた。勿論、種々事情はあるのだろう。しかし、これらがすぐには統合できなくても、少しずつグループとしての全体像が見えてくれば、ユーザの理解は進み、大きく前進できる。

=目指すは世界!=
IBMのCEO Ginni (Verginia) Rometty女史は2013年度決算速報時(1/21)に、2013年のクラウド関連売り上げは$4.4B(約4,400億円)、そして2015年の目標を$7B(約7,000億円)にすると説明した。これは全世界展開の数字である。翻って、NTTコムの売り上げは、2012年度が960億円(2013年度は未発表)、2015年度は2,000億円を目指す。これが達成できれば世界のIBMが見えてくる。繰り返して述べよう。そのためには「ベンダーニュー トラル」の維持と「国際標準クラウド」の推進、そして「キャリアとしてのアドバンテージ」を活かし、「NTTの総合力」発揮が必要である。

2014年4月9日水曜日

スマホ化する車(Telematicsの世界) -AppleとTesla-

San Francisco Chronicle
年初めからAppleがTesla Motorsと交渉しているという情報が飛び交った。いわく、AppleがTeslaを買収するらしい。そして、Apple株価は1月末に一時$500に下がり、その後は$520~$540前後で推移。一方のTeslaの株価は昨年来の$120から一時$250まで跳ね上がった。さらに、もしこの買収が成功したらTesla CEOのElon Musk氏がAppleのCEOになるのではないかとのうわさも流れた。Steve Jobs氏亡き後、あのカリスマ性を継承してAppleを引っ張ることができるのはMusk氏以外にはいないという期待からだ。

=もう一人の天才!=
Steve Jobs氏は天才だった。
しかし、Musk氏はそれ以上かもしれない。彼の起業歴は凄いの一言だ。スタンフォード大学院を辞めて、弟のKimbal Musk氏と始めたシティーガイドのZip2をCompaqに売却。その資金でPayPalの前身となるX.comを興したのは1999年ことだ。さらにPayPalをeBayに売り払い巨額の資金を獲得した。そして、2002年にはロケット推進のエンジニアと組んでSpaceX(Space Exploration Technologies)を起業。2012年5月、同社は自社開発のFalcon9で宇宙連絡船Dragonを打ち上げ、宇宙ステーションISSとドッキングに成功させた。このFalcon9は、第1弾ロケットが同じエンジンを9つクラスタ化したように、コモディティ技術を徹底、結果、製造コストは従来の10分の1だという。彼はSpaceXを立ち上げると、翌2003年にはTeslaを3人の仲間とスタートさせた。そのTeslaが最初に出した車がTesla Roadsterだ。価格が約1,000万円($98,000)もするのに注文が殺到した。
それもその筈、この車はコモディティ技術を使った高性能ハイテクEVというだけでなく、ボディーはあの名車Lotus Eliseそのものだからだ。この車にはノートPC用と同じ形状の専用バッテリーが6,831本搭載してある。Musk氏はTeslaのCEOというだけでなく優れたデザインセンスとエンジニアリングの知識を駆使して、Roadsterをはじめとする車の開発とデザインの責任者を務めている。彼はSpaceXでもチーフデザイナーとして活躍し、2006年からは従兄弟と一緒に太陽光発電のSolarCityも立ち上げた。これだけの多面的なセンスと技術力、そして行動力が伴えば、Appleファンならずとも、彼ならきっとAppleとTeslaを組み合わせた凄いことをやってくれるのではないかという期待が膨らむ。 

=Telematicsの世界= 
さてTelematicsの世界に話を進めよう。 
Telematicsとは自動車などの移動体に通信システムを組み合わせた情報サービスシステムのことだ。解り易い話、カーナビがその代表である。この分野はどんどん進化し、今やカーナビのハードウェアはディスプレイオーディオとなり、表示だけでなく、素晴らしいサウンドとも連動するし、タッチスクリーンも登場。そして、スマホと繋いだ連携アプリも登場する時代となった。世界中のインターネットラジオを聞いたり、近くのガソリンスタンド探しやレストランの予約、映画のチケット購入などが運転しながら出来る。スマホが出来るものなら技術的には何でもOKだ。これをインフォテーメントInfotainmentという。インフォメーションとエンターテイメントを組み合わせた造語である。
 



◆ MirrorLink規格
このような本格的なTelematicsが登場したのはもう4-5年も前のことだ。しかし問題もある。テレビの視聴が運転中はブロックされているように、スマホのアプリによってはドライバーの気を散らす。運転しながら安全にスマホアプリを楽しむにはどうすれば良いのか。またスマホと言っても、iPhoneもあればAndroidもあるし、Windowsだってある。しかもこれらは次々にバージョンアップをする。さらに、カーナビ(以下、ヘッドユニット-Head Unit)メーカーは日本勢を中心に10社以上あり、自動車会社は車種毎に複数のヘッドユニットモデルを出している。複数種類のスマホと多様なヘッドユニットを永続的に接続する方法、そして安全にアプリを使う条件とは何か。ひとつの回答は、業界コンソーシアムCCC(Car Connectivity Consortium)が制定したMirrorLink規格だ。これはNokiaが開発したTerminal Modeを発展させたもので、スマホとヘッドユニット間のプロトコルである。これを採用すれば、スマホと同じ画面がヘッドユニット上に現れて、タッチスクリーンも使える。さらに、昨年11月、CCCが発表した最新版のMirrorLink 1.1では、スマホのアプリに対して、“Base”と“Drive”の認定制度が決まった。“Base”カテゴリーと認定されたアプリは停車時に利用可能で、“Drive”認定のものは運転時でもOKだ。安全運転に関する認識は世界中で異なる。欧州では殆どがユーザの個人責任だ。つまり、スマホアプリだって、基本的には何でも構わない。しかし、日本の場合は異う。規制が厳しく、動画表示は勿論、写真なども規制される場合が多い。米国はその中間か、少し欧州寄りだ。MirrorLink1.1の定めたこの認定制度は、自動車会社の地域別採用基準の指針となり、アプリ会社には製作ガイドとなる。

◆ Tesla Model-S
Teslaの場合はどうか。2006年に米国で発表されたModel-Sを見て驚いた。
ディスプレイが大きい。何と17インチの縦型のタッチスクリーンだ。全ての操作を集合させたデジタルインスツルメントパネルである。車のドアを開けて乗り込むとディスプレイはすぐにONになり、バッテリーの状況や車全体のステータス表示、ドアロックは勿論、全面ガラスのパノラミックルーフ開閉、エアコン調整、ヘッドライトのON/OFF、サスペンションの上げ下げ、そしてカーナビゲーション、音楽、AM/FM/インターネットラジオなど全てがタッチ操作で可能だ。Webのブラウジングもお手のもの。必要な情報入力にはソフトキーボードが現れる。ディスプレイの最下段には良く使われる機能ボタンが配置され、全体は上下2段に分かれて表示されたり、New York Timesなら一体の全紙サイズで読める。システムのOSはLinux、インターネット接続装置は標準搭載だ。このようにModel-SのTelematicsは車のミッションクリティカルアプリケーションとスマホのアプリやWebが完全に組み込まれて一体化されている。このシステムではスマホは要らない。いちいちスマホを持ち込んで繋ぐのは美しくないからだ。

◆ Apple CarPlay
3月3日、とうとうAppleがCarPlayを発表した。これは以前から“iOS in the Car”と言われていたものである。仕組みはiPhone5とヘッドユニットをLightningケーブルで接続し、ハンズフリー電話やミュージック、カーナビ、メッセージングiMessageなどが利用出来る。勿論、Siriを使った音声応答が基本で、電話や音楽検索には便利だ。ミュージックにはiPhone内のものを聴くだけでなく、PodcastやインターネットラジオのStitcherやSpotify、iHeart Radioなどが利用できる。しかし、現時点で市場に出ているインフォテーメントと比べ、特別な優位性は見出しにくい。音声応答は既に市場に幾つか出ているし、アプリケーションも多くはない。さらにカーナビはマップと交通情報システムVICSが統合されなければ日本のユーザは見向きもしないだろう。それでもAppleの威光はまだ絶大だ。発表時点で世界中の殆どの自動車会社が参加を表明し、一部は既に製品投入をリリースした。

=Apple iCarは出るのか?=
車とスマホ、その両最先端を行くAppleとTesla。
iPhoneは2007年に発表され、その後、3G、4、4S、5、5s/cと進化した。
しかし、もうそろそろ次の目玉が欲しい。一方、TeslaはスポーツカーのRoadsterから次にセダンModel-Sを送り出し、近々SUVとミニバンを組み合わせたModel-Xのデリバリーが始まる。目下、両社の共通テーマはCarPlayのようなインフォテーメントだが、もっと大きな夢がある。生前、Jobs氏は車のデザインに興味津々だった。ライバルのGoogleは車の自動運転システムを開発中だし、プラットフォームとなるOSの競争も激しい。きっと、Musk氏なら噂のiCarのような素晴らしい車を開発してくれるかもしれない。

2014年4月2日水曜日

Office 365は新生Microsoftを救えるか!   -DaaS4-

新CEOを選出したMicrosoftは生まれ変わろうとしている。
このところMicrosoft Office 365に関する発表が(後述)相次いだ。しかし、このDaaSシリーズ(1/2/3)ではOffice 365を取り上げてこなかった。Office 365をDaaSと言うかどうかはともかく、これは不公平だという声がある。なぜなら、OfficeこそDaaSの定番アプリケーションだからだ。そこで今回はこれを取り上げようと思う。Office 365を一言でいうなら、①Office Suite(Office 365 ProPlus)と、②メール/スケジュール(Exchange Online)、③Webカンファレンス(Lync Online)、④コラボレーション(SharePoint Online)の4つをセットにしたクラウドサービスである。Office 365は米国で2010年10月(日本では昨年2月)に発表され、Government Plan(公共機関向けディスカウント)と相まって、米地方自治体での導入が広がった。特に、New York州では12万人職員が移行したと伝えられ、最大のユーザとなった。

◆ Office 365 ProPlusの仮想化アプリケーションとは何か
このクラウドサービスの要は、勿論、Office 365 ProPlus(以下、ProPlus)だ。ProPlusとはWord、Excel、PowerPoint、OneNote、Access、Outlook、Publisherを含むOffice Professional 2013にプラスαのメリットがあることから付けられた名前だ。その動作を見てみよう。ProPlusの各アプリケーションはストリーミング技術を使った特別な仮想環境で実行される。この技術は2007年にMicrosoftが買収したSoftricityのSoftGridと呼ばれていたものである(現 Microsoft Application Virtualization-以下、App-V)。この方法ではあらかじめユーザに配信する各アプリケーションを分割加工処理を施す。ある調査によると、我々が通常使用するアプリケーションではソフトウェアの全体の20%程度があれば十分で残りは例外処理など特殊なものだという。つまり、よく使う部分を切り出して、最初にこの塊を送ればこと足りる。後は必要に応じて、小出しに送れば良いわけだ。
  • クイック実行 ・・・ さてApp-Vのクライアント側にはこの塊を実行させる環境が要る(App-V Client)。例えばWordを要求するとインストールが始まり、最初の塊のダウンロードが終わればすぐに実行ができる。この間少し待たなければならない。残りはバックグラウンド処理となり、これをクイック実行という。このようにProPlusのアプリケーションはApp-Vの分離環境で実行されるので、ローカルにMSIでインストールされている旧バージョンがあっても並行して実行できる。一度インストールが終われば、使い勝手も、レスポンスも、慣れ親しんだこれまでとほぼ同様だ。この点、クラウド上で実行される通常のDaaSアプリケーションより優れている。次にライセンスだが、ProPlusではどのプラン(後述)でも1ユーザに付き5つ与えられる。仕事で使うデスクトップPC、ノートPC、さらに自宅のPC、そしてモバイル(スマホやタブレット)に適用するといったイメージだ。これらのライセンスはApp-Vでダウンロードした各種のデバイスに適用されるが、ProPlus自体が月単位のサブスクリプションなのでこれが切れれば使用が出来なくなる。
  • Officeオンデマンド ・・・ 次にOfficeオンデマンドという機能がある。これは自分のデバイスだがProPlusをダウンロードしていないものを使う場合やホテルのビジネスセンターなどにあるPCを借りる際に有効だ。例えばゲストでログインし、Officeオンデマンドにアクセスすると必要なアプリケーションがストリーミングされて通常と同じように使うことが出来る。ただ、利用が終わるとアプリケーションは完全にそのPCから除去されてしまう。この利用にはサブスクリプションは必要だが、ライセンス数は消化されない。                      
  • Office Online ・・・ さらにOffice365にはOffice Onlineというサービスもある。これは前二者と違って、ブラウザベースのWebアプリケーションだ。利用できるのは Word Online、Excel Online、PowerPoint Online、Outlook.com、OneNote Online、OneDriveで、しかも全て無償である。7GBまで無償のクラウドストレージOneDriveと連携して、Office Onlineで作成したファイルをOneDriveに保存したり、OneDriveからローカルPCにダウンロード&アップロードさせて利用する。上手に使うにはOffice 365ないしはOffice 2013との連動が必要となる。                                              

◆ 使い勝手と価格優位は揺るがない
Office 365の強みは、何と言っても世界中で膨大な数のユーザがいること、そして彼らが好む使い勝手、加えて低価格戦略である。同社はこれまでのライセンスビジネスからOffice 365ではサブスクリプションに変更した。これによってユーザはバージョンアップ時の更新から開放され、経理上も資産から経費計上となった。用意さ れているけプランは、①ユーザ数25名までのSmall Businessが$5(¥410)/人/月、②同じく25名までのSmall Business Premiumは$12.5(¥1,030)/人/月、③ユーザ数300名のMidsize Businessが$15(¥1,230)/人/月、④ユーザ数無制限のEnterprise E1は$8(¥660)/人/月、⑤同ユーザ数無制限のEnterprise E3は$20(¥1,800) /人/月となっている。(詳細は1と2を参照)


◆ 家庭向けと個人向け
3月13日、米Microsoftは個人向けOffice 365 Personalを発表、利用は今春(未定)。また日本では提供されていないが、英語版にはOffice 365 Home Premiumがある。これにはOffice 365 ProPlusが含まれ、家族で5ライセンス、料金は最安値の$9.99/月だ。今回発表されたPersonalは、それよりも安くたった$6.99/月。詳細は未発表だが、これには多分Offoce 365 ProPlusが含まれるはずだ。自分1人で十分(ライセンスは1人)、家族も1台のPCを共用している。そのような人たちにはぴったりのサービスである。適用はPCかMac、もしくはタブレットでも構わない。そしてPersonalが正式に利用可能となった時点で、Office 365 Home PremiumはOffice 365 Homeに呼称変更する。このHomeとPersonalには、①Skypeが60分/月と、②OneDriveが20GB追加というおまけがつく予定だ。(日本でのリリースは未定)

◆ Microsofr Office for iPad登場
続いて3月27日、米MicrosoftはApple iPad向けMicrosoft Office for iPadを発表した。この発表ではiPadだけが目立っているが、同時にiPhoneやAndroidのスマホ向けもOffice on Mobileとしてリリースされている。まずiPad版だが、基本的にOffice 365と連動したサービスでサブスクリプションが必要だ。用意されたWord、Excel、PowerPointのアプリケーションはApp Storeから無償でダウンロードでき、閲覧(Read Only)だけなら無償利用も可能である。



同日リリースされたiPad版は、現在、日本語版としてはリリースが未定だ。しかし、米App Storeからダウンロードしたアプリケーション(右図)は日本語処理は出来るし、各種のテンプレートも用意されている。利用は基本的にOffice Online同様OneDriveと連動させる。ライセンスがあれば、“アクティブ化”ボタンをタップしてサインすれば良い。一方、iPhoneやAndroid向けのOffcie on Mobileは、昨年6月発表したOffice Mobile for Office 365 subscribersを改定したものだ。今回の改正によってライセンスが無くても個人ユーザに限り全ての機能が無償で利用できる。

◆ 新CEOへの期待
今年2月4日、新CEOに選任されたSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏への期待は大きい。初代CEOのBill Gates氏からSteve Ballmer氏が2代目CEOとなったのは2000年1月。彼の任務はGates氏の作り上げた巨大なソフトウェアライセンスビジネスを永続性のあるサブスクリプションビジネスへ移行させることだった。ビジネスはBallmar氏にまかせ、Gates氏は自らChief Software Architectとなって技術の舵取りをした。そして氏が大きな期待を寄せたのはRay Ozzie氏だ。2006年6月、Gates氏は引退を宣言するとともにOzzie氏にChief Software Architectを引き継いだ。そして時代はクラウドへ突入した。この年、Amazon Web Servicesが登場し、2008年にはMicrosoftもWindows Azure(4/3よりMicrosoft Azureに名称変更)を投入した。Ozzie氏はAzureを上手くテイクオフさせるかに見えたが、Ballmar氏と衝突して2010年10月、実務から手を引き、年末に退社。皮肉にもOffice 365の発表は同じ2010年10月だった。パブリックβは翌2011年4月、そしてジェネラルリリースは2011年の6月28日である。3代目CEOとなったNadella氏の直近の役職はCloud & Enterprise GroupのEVPだ。MicrosoftにとってAzureとOffice 365はサブスクリプションビジネスに向う両輪となる。何としても成功させなければならない。3月27日、Offcie 365 for iPadの発表ではNadella氏自ら登壇し、熱のこもったプレゼンを展開した。この日が彼自身のデビューでもある。

2014年3月27日木曜日

DaaSアップデート!(Amazon & Citrix)       -DaaS3-

昨年11月のAmazonの参入を受け、DaaS市場が脚光を浴びつつある。
その状況はDaaS-1、DaaS-2で報告した。今回は、その後の動きや判明したことを元に、AmazonとCitrixについてアップデートをしよう。

=Amazon WorkPlacesアップデート=
Amazon WorkPlacesの スケジュールが少し見えてきた。現在、WorkPlacesはLimitedリリースの段階である。この後、Publicベータ、そして2Q後半か夏には 正式版となるだろう。ただ課題は幾つかある。ひとつは現在の機能/性能範囲がマーケットに受け入れられるかどうかだ。技術的なポイントは既報で 説明した。特にオンプレミス連携時などのレスポンスが許容範囲内かどうかは確かめられたい。WorkPlacesはAmazonが徹底したマーケット調査 の上で投入したサービスである。従って、世界的にはそれなりの市場が見込めるのだろう。しかし、日本市場となると気になるところだ。次にコスト。これは大 いに問題である。
      • Standard - $35 / user / month.
      • Standard Plus - $50 / user / month.
      • Performance - $60 / month.
      • Performance Plus - $75 / user / month.
WokrPlacesでユーザが使えるOSはWindows 7 Experience。これはどのバンドルでも同じだが、実際にはWindows ServerをDesktop Experienceオプションによって、Windows 7に見せかけたもので、費用対効果はどうか。バンドル中2つのStandard PlusとPerformance Plusには、Microsoft Office Professionalが 含まれる。この差(Standard → Standard Plus、Performance → Performance Plus)は共に月$15(約1,500円)である。実際に稼動するEC2のインスタンスは、StandardとStandard Plusが1 vCPU+3.75GB Memory+50GB Storage、PerformanceとPerformance Plusは2 vCPU+7.5GB Memory+100GB Storageとなっている。つまり、簡単な話、WorkPlacesは特別設定のEC2インスタンスに必要なソフトウェアを乗せてパッケージにしたサー ビスだ。DaaSにとって重要なことは、複数ユーザを束ねた上での柔軟性や使い易さ、そして総コストが如何に低いかである。次回に予定する Microsoftと比べてWorkPlacesは費用的に決して廉くない。とすると、EC2という実行環境からくる柔軟性などに活路を見出せるかにかかっている。


=Citrixアップデート(Xen Desktop & App Orchestration)= 

前回、日本市場では、Citrixの提携クラウドプロバイダーの殆どがXenDesktop 7をホスティングしていると述べた。 これはユーザ別のシングルテナントだが、DaaS (通常はマルチテナント)の一形態としよう。NTT CommのBiz Desktop ProやIIJ GIO、DoCoMoのMobile Secure Desktopなどがそうだ。これには理由があって、VDIに対するカスタマイズ要望が高いことから来ているという。そして出来れば運用もやりたくない。結果、VDIホスティングが、それなりの日本風DaaSビジネスになっている。頷ける話だ。Citrixによると、米国では既にマルチテナントの本格的なDaaSもCitrix App Orchestrationと して投入されており、VDIホスティングと並存している。Citrixはこの世界での歴史が長く、経験も豊富だ。彼らにとって、ユーザは様々で、管理の行 き届いた個別導入のVDIを好むユーザ、IT要員の問題からVDIホスティングを望む場合、さらに汎用のDaaSまでと幅広い。DaaSを好むユーザはコ ストメリットを重視している。従業員の職務分掌がはっきりしている米国でVDIは発達した、そうでない日本。この辺りがDaaSが普及するか、VDIホス ティングかの分かれ目なのかもしれない。



2014年3月12日水曜日

OpenStack Swiftを使いこなす、SwiftStack!-SDS8-

今回はOpenStack Swift(以下、Swift)を使ったプライベートクラウドストレージの普及を目指すSwiftStackについて追ってみよう。Swiftはオブジェクトストレージとして最も普及が進んでいるもののひとつだ。周知のように、OpenStackはシリコンバレーのNASA Ames とRackSpaceが共同でスタートさせた画期的なプロジェクト。主な構成要素はComputeエンジンとなるNASA NebulaのNova、そしてストレージのエンジンSwiftの原型となったのはRackSpaceのCloud Filesだ。共にプロジェクトに寄贈されたものである。世界中で利用が進むOpenStackの中でも、Swiftは単独導入が出来る。SwiftStackはここに目を付け、その普及のための鍵となるプロダクトを開発した。

=念のため、Swiftとは=
念のため、Swiftについて纏めておこう。
SwiftはAWS S3やRackSpace Cloud Files互換のREST APIでアクセスする。その構成はまず、①ユーザからのアクセスを振り分けるProxy Serverと ②ユーザ認証のAuthentication Serverがある。Proxyはユーザ認証後、必要に応じてAccount/Container/ObjectのServerと連携する。③Account Serverはユーザ情報と関連するコンテナーのマッピングを行い、④Container Serverはオブジェクトのリストを保持し、⑤実際のオブジェクトは複数あるObject Serverに分散保存される。分散配置の仕組みを理解するポイントはRingとZoneだ。Ringはアカウント毎にP個(Defaultは32)のパーティションに分割し、オブジェクトのハッシュ値を計算して、どのObject Serverに配置するかを決める。この際、保存オブジェクトは3つ(Default)の複製が作られる。もうひとつのポイントのZoneはObject Serverをラックや電源系統、できれば地理的に分離させて複製を置くもので、これによって障害対策を確実にする。

=RackSpaceという会社=
OpenStackの言い出しっぺのRackSpaceとはどんなスタートアップだろう。
一言で云えば、とても先見性のある会社だ。1996年、ISPとして創業した当時の社名はCymitar Network Systemsだった。その後、1998年、ホスティングも手がけるようになって現社名RackSpaceに変更した。創業者のRichard Yoo氏は時代を読んでいた。これからは単なる企業アプリケーションのホスティングだけではなく、映像や音楽などのストリーミングが重要となる。そして2002年、社内のグループをスピンアウトさせたのがServerBeach (現Peer1傘下)だ。時代は彼の読みどおりに推移し、2005年、YouTube が登場した。この設立2年に満たない急成長スタートアップをGoogleが$1.65B(1,650億円)で買収した話はあまりに有名だが、ServerBeachがビデオホスティングを担当していたことは知られていない。つまり、この時代からRackSpaceはオブジェクトストレージの重要性を認識して、開発を進めていたのである。AWS(Amazon Web Services)が登場した2006年、同社も初期の実験クラウドサービスMossoをスタートさせた。ここで使われていたのがCloud Filesだ。そして時代が進み、2010年7月19日、NASA Amesと共にOpenStackをスタートさせた。この発表後、すぐに社内の精鋭エンジニアが集められSwiftの開発が始まった。このチームのPTL(Project Technical Lead)がJohn Dickinson氏である。


=SwiftStackとは何か=
SwiftStackの創業は2011年。創業者はCEOのJoe Arnold氏を中心にCOOのAnders Tjernlund氏、アーキテクトのDarrell Bishop氏の3人だ。2012年6月、RackSpaceから待望のJohn Dickinson氏がやってきた。年の若いJohnの肩書きはDirector of Technologyだが、実質はCTO、そしてSwiftを熟知した同社の表看板である。彼らの製品はSwiftを使い易くし、広めることである。Swift自体はいじらない。それはOpenStackの仕事だからだ。SwiftStackはWebインターフェースでSwiftノードのプロビジョニングや運用、管理機能を提供し、必要があればトレーニングやサポートも提供する。開発した製品の主なコンポーネントは2つ。前述のようにSwiftのストレージは複数のObject Server(以下、ノード)から構成される。それらにインストールするのがSwiftStack Runtime(下図右)、もうひとつはこれらノードのRunetimeを制御するSwiftStack Controller(下図左)だ。まず、出来れば占有できるサーバーにこのControllerをインストールし、次にObject ServerのノードにはRed Hat/CentOS/Ubuntuのどれかを用意してSwiftStackのコマンドセットをダウンロードする。これを実行すれば、そのノードには、自動的に最新版のSwiftとSwiftStack Runetimeのインストールが始まる。
インストールが済んで、使い出して解る最大の特徴は、パーフェクトなコンソール機能である。OpenStack自身にもダッシュボードはあるが、これはOpenStack全体を見るためのものだ。正確なストレージノードの運用管理には詳細な情報が欠かせない。マルチノード構成の利用状況(アクセス/負荷)、障害対策のためのアラートやトラブル対応、各種システム統計、キャパシティープランニング用レポートなど、これら全てがリアルタイムでビジュアル表示される。これらの情報はストレージノード側にインストールされたRuntimeから送られたものだ。各ノードにはMonitoring Agentが搭載され、これがノード側の詳細情報を収集してコントローラに送り出す。またノードにはLDAPと連携した認証や負荷分散のためのLoad Blancerも搭載されている。SwiftStackのコンソールは、通常オンプレミスとして利用されるが、必要があれば、Firewallの外側で彼らがホスティングすることも可能だ。ノードにはWebベースのDrag & Drop機能もある。これを使えばDropBoxやGoogle Driveのように簡単にファイル管理が出来る。

以上見てきたように、SwiftStackを利用すれば、Swiftを使いこなし、プライベートなクラウドストレージの完全で容易な構築と運用が出来る。現代はWebアプリケーションが全盛の時代だ。そしてクラウドの普及と相まって、そのコンテンツを保存するオブジェクトストレージの需要は高い。狙いはエンタープライズ市場だ。