2014年9月16日火曜日

続) Rackspaceはどうなるのか! -CenturyLink浮上か-

RackspaceのExit Story=Rackspaceはどうなるのか(8/1)=に関する続編をお伝えしたい。同社がMorgan Stanleyを雇ったのは5月中旬のこと。当時の株価は5月9日が最安値で$26.28、それが出口戦略の模索が伝わると、一気に42%ジャンプして$37.37となった。このような大幅な値動きは2008年11月以来のことである。6月10日には最高値の$37.88をつけた。このころRackspaceは強気で幾つかの提案を受けたが纏まらなかったという。その後は夏相場に突入して低迷。しかし8月12日の$29.50を底に反転し、この時期重要な休日Labor Dayを挟んでも続伸、9月8日来、現在は$38~39台で推移している。どうやら状況は再度好転し始めたようだ。

=好調だった2Q報告=
この反転の理由ははっきりしている。 同社の2Q業績が改善したからだ。8月11日、SECにファイリングされたForm 8-Kによれば、2Q売り上げは前期比4.8%アップして$441となった。これは前年同期比では17%アップ、同社は今年の3Qも3~4.5%アップの$454~$461が見込まれるという。売り上げの伸びに伴い、サーバ数も1Q末の106,229台から2Qでは107,657台に伸び、6月末現在の従業員数は全世界で5,798人、1Q時の5,743人から僅かながら増加している。

=新戦略OnMetalへ=
今年3月、GoogleのAmazonに対する挑戦で始まった価格破壊を覚えている人は多い。この動きはクラウド市場を困惑させたが、Rackspaceは独自路線を進むことで、その難題から逃れてきた。元来、同社はHostingの会社だ。その経験で身につけたサービスの良さには定評がある。巨大なパブリックIaaS市場を相手にした薄利多売のAmazonやGoogleには出来ない芸当だ。これこそ、Managed Cloud Companyと自負する同社の財産であり、その結果が2Qの業績につながった。そして、この流れを加速させるOnMetalサービスが7月から始まった。このサービスは、誰にも邪魔されることのないBare MetalにOpenStackを乗せ、Single Tenantとして提供される。RackspaceはHPやDellから購入してきたサーバ群を現在、Open Compute Project仕様に切り替え中であり、このBare Metalも同仕様のものだ。つまり、ハード(Open Compute)もソフト(OpenStack)も徹底したオープン路線を採っている。勿論、OnMetalにはマネージドサービスも可能だ。同社は言う。クラウドを使いこなしてきたユーザは、他VMの振舞いによるしわ寄せやインスタンスの増加に起因するオーバーヘッドなど、マルチテナントであるが故のWork-loadの不安定さを嫌う。安定したレスポンスと責任ある運用、これこそクラウドの方向だ。AazonやGoogleと一線を画したこの戦略は、クラウドを知り尽くした同社の知恵である。  

=予想外のCenturyLinkが一歩リードか=
2Qの業績と新戦略を受けて、パートナ探しの状況が変わった。8月11日以降、株価は反転し、市場筋によると、CenturyLinkとRackspaceの話し合いが熱気を帯び、買収価格決定のための価格調整に入った。CenturyLinkの株価は、事実、9月5日の$41.47から9月9日には$39.99と下げ、一方のRackspaceは30%以上底上げして同9日には$39.62とほぼ同水準となった。しかし株価は横並びとなったが、CenturyLinkのMarket Capは$23.4B、Rackspaceは$5.33である。企業規模ではCenturyLinkが数倍大きい。この状況にどう折り合いをつけるのか。前回レポートを思い出して欲しい。Rackspaceの新しいパートナーを業界別に探ると、キャリアではAT&Tが最も有望で、元気なのはCenturyLinkだと述べた。買収候補として浮上したCenturyLinkは、業界3位だったQwestを当時5位の同社が買収して大きくなった。同社はその後クラウドで2つの大きな買い物をした。データセンタのSAVVIS (2011/4)とIaaSプロバイダのTier3 (2013/11)だ。そのため、今回の買収には資金的かつ技術的な問題がつきまとう。つまり、CenturyLinkからの具体的な買収提案は、もしかしたらRackspaceにはメリットが少ないのかもしれない。これを裏付けるように、これで決着という雰囲気ではないと言う市場関係者もいる。

=3つのヘッジファンド(Third Point, Blue Harbour & Point72)=
厄介なことも起こっている。2QのSECファイリングでヘッジファンド3社の新規投資が明らかになった。機関投資家リスト4位のThird Pointと、7位となったBlue Harbour Group、11位のPoint72 Asset Mangementだ。彼らは物言う投資家(activist investor)である。Blue Harbourは比較的穏健だが、億万長者のDaniel Loeb氏が率いるThird Pointは、かなり悪名高い。6月末までに同ファンドは全体の約5%にあたる725万株を取得、まだ少ないが暴れだすと手が付けられない。Blue Harbourは期中2回投資し352万株を保持したとのことだ。Point72も同水準の324万株を手に入れた。既存の機関投資家は今回のパートナー探しにどう反応したのだろうか。総じて言えば、買い増し傾向にある。気になるのは、大手資産運用投資のCapital Worldと全米3位の銀行Wells Forgoの2社は売りに回ったことである。 
=本命たちはどうしているのか=
さて前回レポートで挙げた本命企業はどうしといるのだろうか。
まずHPだが、かなり早い時期から交渉していたと伝えられている。真偽のほどは定かではないが最終的に1株$43、大よそ$6B(約6,000億円)の提案をしたとの噂だ。しかしRackspace側が強気で受け入れられなかったらしい。そして7月初め、RackspaceのSenior VPでProduct & Engineeringの責任者だったMark Interrante氏がHPに入社することが伝わった。彼のHPでのポジションは同じSenior VP、担当はクラウドビジネス部門のエンジニアリングである。まさにクラウド開発の責任者だ。同氏はExecutive VPでCTOのMartin Fink氏に直接レポートする。さらにびっくりすることに先週末(9/12)、HPはEucalyptusを買収すると発表した。この買収でCEOのMarten Mickos氏はInterrante氏と同じクラウドビジネス部門となり、Senior VP兼GMとしてビジネス全般を担当、HP CEOのMeg Whitman女史にレポートする。なぜ、この時期、HPにとってEucalyptusが必要なのかは解らない。ただ、同氏はMySQLのCEOを務めた実力者だ。人材面では大きな補強となる。この2つの出来事で、Rackspace買収の芽は無くなったかに思えたが、そうでもなさそうだ。同社の2Q業績回復報道後、再度、水面下で交渉が始まったとの情報もある。もしかすると、Interrante氏は買収先に派遣された斥侯なのかもしれない。
さてCiscoはどうなったか。該社についての情報は多くない。5月末の同社カンファレンスCisco Live 2014でJohn Chambers氏は何人かのレポータと会話した。流れてきたのは、氏は「現在クラウド市場はAmazonとGoogle、そしてMicrosoftの3社が激しい競争を繰り広げている。Ciscoの判断はその市場で40%以上のシェアが取れる見込みがあれば動くが、現状ではとても条件が整っていない」というものだった。つまり、これを額面通りに受取れば、興味がないということだが、ポーカーフェースだという人も多い。Ciscoは現在$50B(約5兆円)のキャッシュを持っていること、最近の決算内容はIntelやMicrosoft同様思わしくないことなどが理由だ。意外に水面下で交渉が進んでいるのかもしれない。

=この買収の意味するところ=
今後、このパートナー探しはどう決着するのだろう。現在、一歩リードしていると見られるCenturyLinkがパートナーとなるのか。はたまた、HPが巻き返すのか。Ciscoの裏ワザか。これ以外にも前回述べた幾つかの企業の秘密交渉もないわけではない。いずれにしても、前半戦は終わった。今はベストな条件を引き出す後半戦の真っただ中だ。この買収の決着によってはクラウド市場の今後の動きが変わる。筆者の個人的な意見だが、CenturyLinkが最良のパートナーだとは思い難い。この組み合わせから、Racspaceがこれまで見せてきた先進性やユーザセントリックな戦略が加速されるだろうか。できれば、資金力があり、インフラやグローバル展開などの力を持った大きな傘のもとで自由に戦わせてみたい。ただ、これはヘッジファンドも絡んだマネーゲームでもある。

2014年9月10日水曜日

OpenStack最強SI軍団のMirantis! -Cloud OS-2-

=Mirantisという会社= 
Mirantis、日本では馴染みがないがOpenStackの最強SI軍団である。
久しぶりに車を走らせMountain Viewに向かう。該社の道の向かいはHonda Research Instituteだ。Mirantisは社員数約520名、ほとんどがエンジニア。ここシリコンバレーには顧客対応のフロントエンジニアが多く、エンジニアリングのバックオフィスはロシアとウクライナにある。彼らのOpenStackに賭ける意気込みは大したものだ。

OpenStackの次期版Junoにおける企業別貢献度は、トップがHP(21%)、2番はRed Hat(16%)、そして3番手Mirantis(12%)、4番はRackspace(10%)だ。大手に伍して大健闘である。これだけではない。同社の共同設立者で現在会長のAlex Freedland氏と、同じく共同設立者でありCMO (Chief Marketing Officer)のBoris Renski氏の2人はOpenStack Foundationのボードメンバだ。こうした努力で力をつけ、SIビジネスの信用を得てきた。

=Mirantis OpenStackの強み!=
ともかく、同社は徹底したOpenStack企業だ。その力はOpenStackのコンサルから教育・構築支援までをフルカバーする。企業がOpenStackを導入しようとする際、躊躇する点は2つ。ひとつはこれまでのエンタープライズシステム同様の開発運用が出来るかという不安。もうひとつはバージョンアップだ。OpenStackは成長途上にあり、さらにコンポーネントが多岐にわたるため、一般企業のIT部門には負担が大きい。ここにSuSEやUbuntu、Red Hat、HPがディストリビューションを手掛ける理由がある。しかしそれだけでは十分ではない。実はデプロイメントが厄介なのだ。同社はOpenStackをコアに独自開発のFuelを用意し、さらに3rdパーティなどのドライバやプラグインを加えたディストリビューションMirantis OpenStack(最新版5.0)を整備。これを顧客にコンサルティングと共に提供している。OpenStackには運用管理のダッシュボードHorizonがあるが、FuelはOpenStackの各種設定などのデプロイメントを自動化する。これを利用すれば初期設定はあっという間に終わり、しかも内部的に自動チェックが行われて正確に出来てしまう。またFuelにはOpenStackデプロイ後や運用時にも使うことのできるHealth Check機能も備えている。

=Ciscoの考え方とWebEx Cloudの事例=
Renski氏は同社がこれまで手掛けてきたOpenStack関連作業は100社に近いと言う。中でも特筆はCiscoとの協調関係だ。Cisco傘下のWebExの切り替えは勿論彼らの仕事。Webカンファレンスシステムは今でこそ多様化されたが、WebExこそ市場を切り開いてきた元祖である。このムーブメントを仕切ったのはCiscoクラウド部門CTOのLew Tucker氏だ。氏はクラウドの世界では有名な人物だ。Sunから当時まだASPと呼ばれていたSalesforceに移り、衰退気味の同社CRMにアプリケーションのマーケットプレイスAppExchangeを考え出して見事に復活させた。その後、Sunに戻りSun OpenCloudを指揮。SunのOracle買収後、しばらくしてCiscoのクラウド責任者として迎えられた。また現在、Tucker氏はOpenStack FoundationのボードVice Chairとしても活動し、Mirantisの2人とは昵懇の仲である。この活動を通して、CiscoがMirantisとの関係を築いてきたことは想像に難くない。個人的なことだが、以前からTucker氏のことは好きだった。カンファレンスで何度も彼の話を聞く度に、彼が見ている技術の先、そして広さに関心した。特にSunのOpenCloud時代の彼のビジョンと今のOpenStackが重なって見えるから不思議だ。以下のビデオではCisco ONEの考え方、そのベースとなるOpenStack、さらにWebExの適用事例を見ることが出来る。

                                                     
=PayPal、そしてeBayの場合=
OpenStackに乗り換えた企業の中でPayPalの場合も参考になる。PayPalは知っての通り、TeslaとSpaceXを興したElon Musk氏が仲間と興した会社だ。その後、2002年、eBayに買収されて子会社となった。eBayの狙いはオークション取引の決済をPayPalで行うもので、この目論見は見事に成功。このため、2つはシステムとしても密接な関係にある。実際のところ、OpenStackプロジェクトがスタートしたのはPayPalが先だった。その後、両社のPlatform Operationが統合されて、共にOpenStack化に向かった。PayPalによるOpenStackプロジェクトの試行は2012年秋。限定されたアプリで6週間テストが行われ、その後パイロットシステムが動き出した。昨年4月からは複数センターへの展開、さらに開発やQA、管理用などのサブシステムをOpenStackに移行。現在、PayPalの全ワークロードの20%近くが新たなOpenStackプラットフォームで稼働しており、当面、80%まで引き上げる予定だ。


          
=成功の秘訣!=
OpenStackコミュニティは急拡大し、現在、約16,200人、世界138ヶ国から382社が参加している。これはLinux Foundationの 185社と比べ2倍に近い規模だ。Renski氏によると、ここベイエリアにはMirantis主導でOpenStackのトレーニングなどを行う約 2,000名のユーザグループもある。OpenStackビジネスの成功は人材だ。そのための人材育成には努力を惜しまない。そして自社エンジニアによるOpenStackプロジェクトへのコントリ ビューション。これらが上手く回りだせばユーザもついてくる。その経験から生み出されたFuelやコンサルティングサービス。これらはまさに理想的なeCo Systemとなった。これこそOpenStackビジネス成功の秘訣である。日本市場の開発も動き出した。

2014年8月18日月曜日

オープンクラウドならCloudscalingだ!
                                -Cloud OS-1-

Randy Bias氏に会いたいと思っていた。
しかし、忙しい氏とスケジュールが合わず、止む無くメールでのインタビューとなった。氏はCloudscalingの共同設立者であり、現在CEOだ。その一方で、多くの人がBias氏をOpenStackのEvengelistだと考えている。それは彼の永年のオープンソースへの貢献、そして到来したクラウド時代の主唱者としての活動が素晴らしかったからだ。勿論、氏はOpenStack Foundationのボードメンバーでもあるし、プロジェクト発足時からの関わりは深い。氏は以前、同社と同じサンフランシスコが本拠のクラウドプロバイダGoGridの技術戦略担当VPをしていたことがある。この時代の彼の仕事を覚えている人は多い。彼はGoGridをよりオープンなクラウドにするため、全APIをOpen Licenseとして公開した。その後、RackspaceやVMware、Sunなどが同じ流れに続いたのは有名な話である。そして2006年、Cloudscalingが動き出した。

=Cloudscalingの生い立ち=
同社の初期について、氏はこう語った。会社設立後、しばらくは模索し、そして大企業やクラウドプロバイダ向けのプロフェッショナルサービスを手掛けた。その中にはクラウドプロバイダのEngine Yardや仮想化技術のVMwareも含まれていた。特に記憶に残っているのは、2010年末から始まった韓国初のパブリッククラウドKT uCloudだという。このシステムはCloudStackベースとして日本では知られているが、実際には2010年から始まったOpenStackのSwiftも持ち込まれている。コンピュートはCloudStackだが、ストレージはOpenStackという構造だ。これは時間的な流れから生じたものである。さらに翌2011年初めには、米国内でRackspace以外で初めてOpenStack Swiftを採用したInternapのストレージクラウドを手掛け、同9月にはコンピュートNovaも適用した。そして同じ2011年にはAT&Tのクラウドも動き出した。まさにOpenStackのプロフェッショナル軍団である。 

=エラスティックなOpenStackクラウドが必要だ!=
こうしてCloudscalingの初期ビジネスは成功した。2012年からは、それまでの経験を活かしたOpenStackのプロダクトビジネスへと進展。氏はクラウドには2つのタイプがあるという。“Enterprise Virtulization Cloud”と“Elastic Cloud”だ。簡単に言えば、下図から解るようにEnterprise Virtulization Cloudはこれまでの企業アプリを単に仮想化されたクラウドに乗せるだけのもの。一方、Elastic Cloudは水平にスケールアウトするクラウド向けに開発されたアプリ用のものである。具体的な対応クラウドは、前者はVMware vCloud Hybrid Serviceであり、後者はAmazon Web ServiceやGoogle Compute Platform(GCP)、Microsoft Azureなどだ。この新クラウドアプリにとって、「障害対策とスケールアウト」は命である。レンタルビデオからオンライン配信に転身した米最大手のNetflixは、このクラウドネイティブアプリの代表だ。彼らはアップタイム99.95%のAmazonを利用しているが、エラスティック型アプリの作り込みによって、99.99にも99.999%にもすることが出来る。エラスティックなアプリは障害に即座に反応し、生きているプラットフォームで業務を継続する。つまり、スケールアウトの拡張性と障害対策は表裏一体の関係にある。これこそOpenStackベースの彼らの製品目標だ。

=オープンクラウドシステム(OCS)とは!=
Bias氏のOpenStackに賭ける情熱は凄い。
氏はターゲット顧客をFortuneリスト企業に定めた。これらの顧客は既にAmazonやGoogleなどのパブリッククラウドを利用している。このためOpenStackを売り込むにはハイブリッド化が必要だ。クラウドアプリのためのスケールアウトとフェールオーバー、さらにハイブリッド化を成し遂げなければならない。沢山の作業が必要となった。氏の開発部隊が手掛けたのは、Bin Packing Scheduler、CinderベースのAmazon EBSやS3/Swift対応、EC2のClassic Networking ModelをエミュレートしたNova Layer 3プラグイン、Amazon VPC(Virtual Private Cloud)をエミュレートしたNeutronのVPCやSDNプラグイン、さらにAWSやGCPの設定などだ。

この基本となる新しいアーキテクチャはOCS(Open Cloud System)という。
OCSは勿論100% OpenStack API準拠だ。そして、RightscaleやSCALR、Dell Cloud Managerを利用して、AWSやGCE(Google Compute Engine)とハイブリッド化を可能とする。氏はハイブリッドクラウドの実現にはAPIだけでなく、他の要素の整合性も重要だとし、このようなプロバイダ交渉もOCSを使うことで有利に進めること出来ると説明する。氏はまた、プライベートハイブリッドOCSの導入費用は、初期を除いた2年目以降のTCOで、パブリッククラウドの約半分程度だと推測する。これらOpenStackを用いたOCSへのアプローチ、OCSの技術、その効果などについては以下のビデオを参照されたい。

Cloudscalingのこれまでのクラウドユーザは、10社。内2社はFortune15以内の大企業である。実システムとして見ると、それらは600台以上のサーバ(8,000コア+)で9PBのストレージという大型のものだ。そして、現在さらに、同社が手掛けているのは2社、これもFortune 15の顧客だ。それら新OCS適用システムが動き出すのも遠くない。
 

2014年8月1日金曜日

Rackspaceはどうなるのか!

RackspaceのExitに関するニュースがBloombergから流れたのは5月16日。
以来、2ヵ月半が過ぎた。そこで今回はRackspaceの今後を占ってみようと思う。 Rackspaceと言えばAWSを追ってすぐにクラウド事業を開始し、その後NASA Amesと共にOpenStackを始めた会社である。その老舗がMorgan Slanleyと契約し、今後の出口戦略オプションを検討する事態となった。こうなった直接の要因はAmazonとGoogleの値下げ競争だが、もうひとつはこのままでは事業の拡大が難しいという事情がある。このあたりはAnnual Reportを見ればすぐに解る。  右図のように同社売り上げ(Net Revenue)は比較的順調だ。しかしよく見ると昨年度の伸び率は17%とやや鈍化、ただServer台数は伸びている。収益(Net Income)は昨年度18%下がり、これにともなって投資効果(Return on Capital)も落ちた。つまり市場の価格競争が原因でユーザは増えても収益は上がらず、設備投資が厳しい状況が見て取れる。

=Rackspaceという会社=
Windsor Park Shopping Mall
Rackspaceについて改めて説明しよう。同社の本業はホスティング業であった。前身は1996年にISPとしてテキサス州サンアントニオで起業。その後、Webホスティングに進展し、1998年、現社名Rackspace Hosting Inc.となった。この流れの中で夢を持つ2人のデベロッパがいた。彼らは顧客の多くが機器保有を嫌って自営からホスティングに移ってきたように、いずれホスティングにも満足しなくなるだろうと信じていた。会社は彼らの夢に賭け、2006年初めクラウド実験事業のMossoをスタート。時はまさに同じ、AmazonがS3を始めたのは2006年3月、EC2は同8月である。その翌年2007年には将来の事業拡大を見越し、サンアントニオ郊外で閉鎖となったWindsor Park Shopping Mallを買い上げた。 この巨大なモールの広さがあればサーバなら何万台だった置けるし、建屋の堅牢さも申し分ない。奇想天外な話である。同社のクラウドは、2008年、現サービス名Rackspace Cloudとなった。サービス内容は、仮想マシンのCloud Servers、ファイルストレージのCloud Files、WebホスティングのCloud Sitesの3つ。Rackspaceには他にも面白い話がある。同社を興した共同創設者の一人Richard Yoo氏は、これからの時代はWebだけでなくビデオなどのストリーミングに向かうとして、社内で活動していたプロジェクトをスピンアウトさせた。2002年のServerBeachという会社だ。氏の勘は見事に当たって、この会社が何とあのYouTubeを顧客にすることが出来た。YouTubeの設立は2005年、3人の元PayPalのエンジニアが考え出したアイデアだ。人気は瞬く間に広がり、翌2006年10月、設立2年に満たないスタートアップをGppgleが$1,65B (1,650億円)という高額で買収。つまり、この時期、Rackspaceはクラウドとストリーミングの2つの新しいホスティングビジネスを同時に追っていた。そして2010年7月19日、Rackspaceはオープンソース化に踏み込んだ。OpenStackプロジェクトの設立だ。相手はシリコンバレーのNASA Ames研究所。当時、同研究所ではオープンガバメント政策の一環としてNebulaクラウドが進行中だった。NASA AmesからはこのNebulaのコンピュートエンジンNova、RackspaceからはCloud Filesのコードが寄贈されてプロジェクトが動き出した。Rackspaceという会社はエンジニアを中心に、常に時代を読み、そして挑戦し続けてきた。それがこの会社のDNAである。

=考えられるシナリオ!=
さてRackspaceはどうなるのだろうか。米メディアではこのところ様々な報道が続いている。ここではそれらも参考にしながら、彼らはExitにあたり、何を望んでおり、その相手となる企業はどこなのか、推測してみようと思う。まず彼らの考えている要求とはどのようなものか。
  • この会社のDNAが引き継げるか。つまり彼らに経営の自由度が残るか。
  • OpenStackへの理解は高いか。
  • プライスタグ(買収額)はどの程度か。(Market Valueは$4-5B)
  • この取引のビジネスミックスは将来の事業拡大に貢献するか。
◆ ハードウェアベンダ
考察にあたり、分野を幾つかに分けてみた。HWベンダの中でRackspaceに興味のあるところはどこか。Dell、HP、(そしてIBM)あたりだ。まずDellが一番有望だと言う人がいる。2社は共に本社がSan Antonioで気心も知れているし、Dellはもともとエンタープライズビジネスの柱にクラウドを置いていた。しかもOpenStackには未だかなり興味がある。同社は現在、ビジネスパートナを多面的に結んでクラウドをカバーしている。しかし出来れば自分で手掛けたいとの思いも強い。ただ良いことだけでなく、Dellがどの程度ビジネスを引っ張ってこれるのか。これは未知数だ。そして何よりもCEOのMichael Dell氏がプロバイダへの進出をどう判断するかである。次にHPだが、HPはかねてからOpenStackベースのクラウドを手掛け、今年5月にはHelionとリブランドして発表したばかりだ。その意味ではタイミングは良くわない。果たしてそうだろうか。或る情報ではCEOのMeg Witman女史はかなり興味を示して、$4-6Bで考えていると伝えられているし、もしHelionとRackspaceが統合するようなことになればHPのクラウドは一挙に最前列に躍り出る。言い換えればHelion単体では成功が危ぶまれるのだ。ビジネス面からみると、HPの企業ユーザへの売り込みのチャンスは多く、2008年に買収したEDSのエンジニアリングパワーを使って、Rackspaceが出来なかった世界展開も見えてくる。もう1社、可能性は殆どないがIBMもいる。IBMは昨年のSoftLayer買収時に噂ではRackspaceも評価したが高額で諦め、結果、SoftLayerを$2Bで手に入れたらしい。ただ、IBMがRackspaceを買っていればベストミックスだったように思うのだが、歴史に"if"はない。

◆ ネットワークベンダ
NWベンダではCisco、Brocade、NetApp、Juniperなどがあげられる。ただBrocadeはVyatta、JuniperもContrailを買収してSDNに注力しているし、NASの得意なNetAppも企業体力的に考えにくい。残るはCiscoだけだ。これはかなり可能性が高い。Ciscoのクラウド戦略はまずOpenStackがベースである。そしてプライベート向けで、UCS(Unified Computing Systems)販売の支援策といったところだ。つまりRackspaceのPublic Cloudとはコンフリクトしない。この組み合わせがあるとすれば、キーマンは同社クラウドCTO兼OpenStack FoundationのボードVice ChairのLew Tucker氏だ。彼がOpenStackプロジェクトで昵懇のRackspaceとCEOのJohn Chanbers氏を引き合わせて説得し、Chambers氏が新規事業に飛び込むかどうかだ。ビジネス的には、Ciscoの持つ企業ユーザ群はRackspaceにとって魅力である。以前からネットワークの巨人Cisco、そしてストレージのEMCと言われて久しいが、EMCの方はVMwareなどを買収して未知の世界を切り拓いてきた。今度はCiscoの出番かもしれない。

◆ ストレージベンダ
ここで可能性のある企業はEMCとSeagate、そしてWestern Digitalだ。この業界はHDDからSSDへの転換期にあり、何かが起こる予感はある。例えばSeagateは長年オープンスタンダードに情熱を注ぎ、昨年Open StorageプラットフォームKineticを発表した。ただRackspaceから見たらメリットは少ない。Western Digitalも大型買収でHGSTを手に入れたばかりで余裕はない。可能性のあるのはEMCだけだ。本業の伸び悩み、そしてVMwareの手詰まり感が強くなった今、もう一度、大型買収はあるのか。

◆ ソフトウェアベンダ
SWベンダで可能性を取沙汰されているのは表向きOracleやRed Hatなどだ。これまでクラウドに見向きもしなかったOracle CEOのLarry Elison氏も変わってきた。昨年11月、OpenStack FoundationのCorporate Sponsorになったのだ。同社にとって、本業のデータベースはBigData時代を迎えて新たな技術提案を要求されている。この状況をブレークスルーする可能性は否定できない。しかしわがままな氏と自由奔放なRackspaceの取り合わせは容易ではない。Red Hatの場合がどうか。可能性はかなりある。該社は昨年OpenStackのディストリビューションRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platformを出荷。これはプライベート構築用だが費用やサポートなどが普及の足かせとなっている。同社がLinux同様、OpenStackでも勝ち残る可能性はある。ただ、現在のMarket Capは$10B程度で資金体力に不安もある。もう1社、気になるのはMicrosoftだ。同社がRackspaceを買う理由がないと思う人が多い。しかし考えてみれば、クラウド3強であるAmazon、Google、MicrosoftはいづれもOpenStackをサポートしていない。Amazonは検討外だし、Googleも我が道を行くだろう。そこで新CEOとなったSatya Nadella氏が奇想天外な手を打つ可能性はある。もしAzureとOpenStackが共存統合できたとしたら、Microsoftの企業ユーザにとっても、同社自身にとって大きなブレークスルーとなるのは確かだ。

◆ キャリア
この分野はAT&TとVerizon、そしてCenturyLinkだ。東のVerizonは既にVMwareと関係の深いTerremark Internationalを傘下に収めているので動かないだろう。一番元気なのはCenturyLinkだ。この会社は3位だったQwestを当時5位の同社が買収して大きくなり、その後、クラウドでは2つ大きな買い物をした。データセンタのSAVVISとIaaSプロバイダのTier3だ。そのため、買収には資金的かつ技術的な問題がないかの見極めが要る。残りは西の雄、AT&Tである。AT&TはかつてASPのUSiを買収してこの世界に飛び込んだが地味な活動が続いた。そして2012年初め、心機一転、OpenStackを新たなサービスとして採用。今や同社の世界中のセンタでDeveloper CentricなOpenStackクラウドが動き出している。データセンタと通信網を世界中に展開し、企業ユーザを抱えるAT&Tは、Rackspaceにとっても魅力的だ。また一部米メディアでは北米市場の開発に熱心なNTTも可能性を秘めていると報じている。

◆ その他
以上の分野とは別に、2つ要注意企業がある。ひとつはFacebook、もうひとつはデータセンタファシリティサービスのEquinixだ。Facebookがどう動くのかは未知数だが、同社がクラウド市場に進出する噂は以前からあった。この分野に後発として飛び込むからにはRackspaceの買収は手っ取り早い。実際のところ、Rackspace上でFacebookアプリを開発する環境は整備されている。しかし、Rackspace側から見たビジネスミックスは難しく、相乗効果は期待し難い。となると、Facebookの提示額がどれ位になるかにかかってくる。もうひとつのEquinixは言わずと知れた世界展開の貸データセンタ屋だ。この世界では殆どのプロバイダが世話になっている。つまり買収は、仕事が高じてユーザ企業のビジネスに手を出すという話だ。この話がまとまればRackspaceはデータセンタをほぼ無償で展開出来ることになるが、彼らのユーザには競合相手も多く、この点で難がある。

=そして、どうなるか!=
Rackspaceは体は小さくとも注目に値する企業だ。
同社はこれまでNASA AmesのNovaを実際に開発していたAnso Labsやクラウド関連のCloud Kick、 JungleDisk、Slicehostなどを買収してきた。しかしこのところはプライスタグが高くなかなか手が出ていない。手持ち資金の問題からだ。何とか自社のアセットを最大限に活かして次なるパートナを見つけたい。この争奪戦というか、パートナ探しは結局どうなるのだろう。以下はまったくの外野席から見た私見である。当たるも八卦、当たらぬも八卦なので予めご了解頂きたい。  
  • 第1グループ  ・・・  もっとも可能性が高いのはHPかCiscoだと思う。理由は、HPについてみれば、この取引がHelionを成功させる秘薬であること。eBayの成功を引っ提げてHPのCEOに就いたMeg Witman女史にとって、何とかHPで重要な実績を残したい。加えてこのディールは相互補完も大きいし、両社共にOpenStackに賭けている。Ciscoについては、NW事業からの脱却として始めたUCS販売、その延長線上にクラウドがある。OpenStackとの結びつきも大きく、ビジネスミックスも効果的だ。課題があるとすれば、HPに比べてシステムエンジニアリング力が乏しいところである。
  • 第2グループ  …  次に挙げられるのはAT&TとDell。AT&Tなら資金力もあり、グローバルオペレーションなどRackspaceができなかった展開が出来る。キャリアの業務の中でインターネットはまさに土管化して収益性が低い。モバイルが行き渡った現在、次なる戦略展開が望まれている。DellはCEOの判断次第だが、環境は良く、動く可能性は高い。
  • 第3グループ  …  こうしたディールにはいつも「まさか」が付きまとう。今回のまさかを挙げるとすれば、FacebookとMicrosoftだろう。理由は前述の通りだ。
以上、私見を述べてきた。これ以外に気になる記事もある。ある投資家の意見は「Amazonと完全に競合する買い物は誰も手を上げないのではないか」と言うのだ。そうかもしれない。さらに値段が折り合わない可能性もある。その場合、どこかのファンドなどが一旦引き受けて数年資金を繋ぎ、その後、転売する。この線も大いにあり得ると思うのだが、貴方の読みはどうだろう!



2014年7月22日火曜日

コグニティブコンピューティングを追うIBM!
         Googleはクォンタム(量子)コンピュータか!

=Watsonの登場=
IBMのWatsonを核に、その後を展望した本「スマートマシンがやってくる(原版-Smart Machines)」が出た。その出版記念で共著者のIBM Steve Hamm氏と同東京基礎研究所所長の森本氏から話を聞くことが出来た。この本は実際にはIBMの研究部門を担当するSenior VP John E. Kelly Ⅲ氏がスケルトンを描き、ライターのHamm氏が多くの関連者をインタビューして書きあげたもののようである。Hamm氏によるとプロジェクトの名前はIBMの初代社長Thomas John Watson, Sr.氏にちなんだものだ。それだけIBMの賭ける思いは強い。氏はコンピュータの変遷の初期は簡単な計算機、第2期は現在広く使われているプログラマブルなコンピュータ(Von Neumann)だ。しかしこの方式は次第に行き詰まりを見せ始め、これからは認知・認識や推論ができるコグニティブコンピューティング‐Cognitive Computing(CC)へと進展していくとし、世界中の同社研究所で研究中だと力説した。IBMはこのCC技術をリードし、業界の主導権をかつてのように取り戻したいように見える。初のWatsonは全米で人気のクイズ番組Jeopardy!に挑戦するために開発したもので、IBM Power 750のラック10本分に15TBのメモリーと2880個のPOWERプロセッサを搭載したLinuxのHPCである。処理性能は80TFLOPS、インターネットには非接続でWikipediaなど2億ページ分のスキャンデータを抱えてい た。IBMではこのような社内の技術的士気を鼓舞する取組みをGrand Challengeという。チェスの世界チャンピオンを破ったDeep Blueが前例だ。そして2011年1月14日、IBM Researchのホールでデモを披露し、2月の本対戦(15‐16日)では元グランドチャンピオンのBrad Rutter氏とKen Jennings氏を相手に初日は引き分け、翌日を合わせた総合でWatsonが勝って賞金100万ドル($1M)を獲得した。

=スマートマシンがやってくる!=
この成果を受け、IBMは多面的に動き始めた。クイズ番組でのWatsonに次いで、医療やコールセンタなど様々な分野の専門家の協力を得てソリューション開発を進めた。これらのソリューションは、人間にとって替わるのではなく、医師や専門要員の補助をするコグニティブアシスタントを目指している。 Jeopardy!では自然語処理と検索技術や推論が主だったが、今度はBigDataの対応がポイントとなった。森本氏によれば、我々の周りでは日々5 億枚の写真が世界でシェアリングされているし、日本だけ見てもコールセンターの累積記録は70万時間/日、さらにセンサーによるデータの機械作成が進んで2020年には全体の40%強を占めるようになるという。この本では、このような膨大なBigDataの対応には4つのV(Volume、 Variety、Velocity、Veracity)を越えなければならないと説いている。そのためには新たな分析技術であるEntity AnalysisやPervasive Analysisの確立、またVon Neumannコンピュータとは異なるデータを基本とした処理体系への変更が重要だとして、Data Centricな処理DC²(Data Centric Deep Computing)の開発にも着手。さらにハードウェア分野では脳の神経細胞のニューロンとそれらを連携させるシナプスをチップ化し、人間の五感を感じ取る新しいコンピュータの開発も始まった。

=GoogleはNASAと共同でクォンタム(量子)AIラボを開設=
CC対応ではMicrosoftなども動き出したが、要注意はAppleと共に音声認識に力を入れているGoogleだ。Googleの場合、一般に知られているこの分野のプロジェクトにGoogle Self-Driving Carがある。これこそCognitive Assistantの進化形といっても良い。これとは別にGoolgeは今年に入って興味ある関連企業を幾つか買収した。圧巻はチェスの天才少年だったDemis Hassabis氏創業のDeepMind Technologies (推定$625M-625億円)だ。この会社はニューロサイエンスを利用したAIを手掛けており、画像などのイメージ検索に使うのではないかとの噂が高い。そして今年5月16日、GoogleはQuantum Artificial Intelligence LabをシリコンバレーのNASA Ames研究所と共同で開設すると発表した。プレスによると、このラボではクォンタムコンピュータ(Quantum Computer‐QC‐量子コンピュータ)を開発するカナダのスタートアップD-Wave Systemsのマシンを使い、全体をNASA Amesがリード、宇宙関連研究組織USRAを通して世界中の研究者を招待し、医療や検索などのより良いモデルを開発する予定だ。



=どちらが勝つのか=
Googleの
アプローチはマシンこそQCだが基本は機械学習のAIのようだ。そのために
DeepMindを用意した。これらを素材として世界中の研究者に色々弄ってもらい、QCの実用化の可能性や新たなモデル開発を目指している。
これに対して、 Hamm氏は、CCはAI(Artificial Intelligence-人口知能)の一種ではなく、それを超えたIA(Intelligence Augment-知性増加)だと説明する。つまりAIには静的(機械的)なものと動的なものがあるが、CCはそれらを凌駕するとIBMは期待している。しかし初代のWatsonはLinux上で動くプログラムとしてJavaとC++で作られている。即ちWatsonは多分マシンラーニングの静的AI段階のApplication Architectureであって、まだComputer Architectureを変更する域には達していない。勿論、近未来にCCが確立されればVon Neumannを超えるものになるかもしれない。はっきりしていることはBigData時代のコンピューティングは変わらなければいけないということだ。現IBM CEOのロメッティ女史(Ginni (Verginia) Rometty)は、BigData時代はゴールドラッシュのように数年で終わるものではなく、これこそ現代の天然資源でどうやって掘り起こすか、その回答がWatsonへの期待だという。IBMは既にWatson APIをデベロッパに公開し、SoftLayer上への展開を決めている。一方、GoogleはGoogle I/O 2014でこれまでのMapReduceを止め、新たにストリーミング分析にも対応できるCloud DataFlowを発表した。ともあれ、CCやQCの開発は簡単な道のりではない。かつてTim  Berners-Lee氏が提唱したセマンティックWebは上手くいかなかったし、6月中旬のGoogleのテストでD-Wave Two機は期待するスピードが出なかった。今後は、東海岸のストライプタイ派が総合力を発揮するのか、西海岸のジーンズ組が実利を手に入れるのか、彼らの健闘を注視したい。


2014年7月8日火曜日

OpenStackはクラウドのAndriodになれるか!

「AWSはiOSでOpenStackはAndroidのようだ」と言う人がいる。
上手い表現だ。考えてみればAmazonは多くのサービスを独自開発してきた。一方、OpenStackはオープンソースの徹底した公共プラットフォーム化を目指す。Amazon Web Serviceがクラウド市場をリードするiPhoneのようだとすると、果たしてOpenStackはクラウドのAndroidになれるだろうか。
  
=企業貢献度にみる各社の戦略=
年2回OpenStackのアップデートを行うメンバー各社の熱い思いは変わらない。2012年、OpenStack Foundationが設立され、より民主的な組織運営が進んだ。作業のコントリビュータには沢山の個人デベロッパー、企業メンバーにはBrocade、Cisco、Dell、 EMC、HP、IBM、Intel、Juniper、NetAppなどのメーカーを始め、Canonical、Red Hat、SuSEなどのLinuxディストリビュータ、IT企業からはYahoo、VMware、PayPalなど、さらにRackspaceを筆頭にVirtrustream、Mirantisなどの関連スタートアップが集まっている。現在は次期版Junoに向けた開発が急ピッチだ。図はJuno/OpenStackに関する各社の貢献度を示す。どの会社(さらにはどのエンジニア)がどの分野でどの程度貢献しているかはStackalyticsで全てが公開されている。ここを見れば各社の戦略もある程度想像できる。例えばOpenStackの4番目のリリースだったDiabloではRackspaceの貢献度は約3/4(78%)、つまり彼らの仕事が殆どだった。しかし5番目のEssexでは半分(51%)になり、次のFolsomでは1/4(25%)に、さらにGrezzlyでは1/5(20%)と同社の比重は下がってきた。これは言い出しっぺの企業が頑張らなくても、参加各社が各々の戦略に沿って開発を支援しながら製品化を進めているからだ。現在、Junoで最も貢献度が高い会社はHP。彼らは5月にHP Helionを発表した。これはOpenStackベースの同社クラウドのリブランドとして$1B(約1,000億円)を投入するプロジェクトである。その前はRed Hatだった。同社は昨年夏、Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platformを発表。この発表を受けて、昨年10月にリリースしたHavanaではRed Hatが最大のコントリビュータだった。 IBMについてもしかりだ。同社の貢献度はGrizzlyでの15%からHavanaでは13%となり、Icehouseでは10%、現在開発中のJunoでは7%と減少している。これは従来のOpenStack重視からSoftLayerへの路線変更と見事に一致している。

=エンタープライズへの普及が始まる=
ともあれ、OpenStackの開発は順調だ。これからの課題はエンタープライズ市場への浸透である。ベンダーからはOpenStackディストリビューションも始まった。今年4月にリリースしたIcehouseは9番目のメジャーバージョンとして本格的な普及を目指している。そんな矢先、今年4月2日、Wall Street Journalからビッグニュースが流れた。報道によると、OpenStackベースのCloud OS MirantisとスエーデンのEricssonとの間で5年間総額$30M(約30億円)の契約がなされたのだ。勿論、これはOpenStack関連では過去最高の取引金額だろう。この契約でEricssonは携帯電話ネットワークのバックエンドインフラを構築する。これより早くOpenStackを用いてプライベートク ラウドを手がけた企業も沢山ある。その中のひとつがサンフランシスコを本拠とする大手銀行のWells Fargoだ。 日本はもとより米国ではIT部門のコスト管理は厳しく、仕事の多くは外注化の方向だ。それでも尚多くの銀行はIT業務を自営したがる傾向にある。勿論、マ ネージドホスティングによる外部委託の方が廉価であることは解っている。この課題への回答がプライベートクラウドだ。リーマンショック後、米金融界の混乱の中、Wells FargoはWachoviaを救済合併。そして3年がかりでシステムを統合した。この中でOpenStackベースのクラウドを採用。サポートに役立ったのはHP Cloud Servicesだ。HPもこの仕事で力をつけた。つまりこれまでのHPクラウドはWells Fargoと共に歩んできたといっても過言ではない。他にも直近ではWalt Disneyのパイロットプロジェクトが動き出している。このDisneyのコンテンツ保管用プロジェクトではオブジェクトストレージのOpenStack Swiftを使い、たった3ヶ月でシステムを立ち上げた。

=普及前夜となるか=
5月13日、OpenStack FoundationはOpenStack Summit 2014(Atlanta)で、OpenStack導入に関するトレーニングやコンサルテーション、プロバイダ、各種ディストリビューションなどを纏めたOpenStack Marketplaceの運用開始を発表。いよいよこれからがOpenStackにとって正念場である。しかし、状況は良い。幾つかのプロバイダからOpenStackベースのクラウドが提供され、各種ディストリビューションの配布も始まった。2012年、最初に登場したのはUbuntu OpenStackとSuSE Cloudだ。次がRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(RHEL OPS)、リリースは昨年7月だった。最新版はIcehouse対応のRHL OPS5、次期JunoはRHL OPS6となる予定だ。年間サブスクリプションは無制限利用のGuest OSを含む場合と含まない場合、さらにサポート種別により「Standard(ビジネスアワー)」と「Premium(24H)」がある。価格はGuest OSなしのStandardサポートでは$2,149/socket-pair/year、Guest OSありのPremiumサポートでは$4,499/socket-pair/yearとなる。これに対して後発のHP Helionは現在無償Community版のみが利用可能だが有償の商用版は8月中にリリースが予定されている。さて価格はどうか。RHL OPSは”socket-pair”が単位、しかしHP Helionでは物理サーバが単位となり、$1,400/year/serverだ。これには「Foundation Care Support(ビジネスアワーサポート)」が含まれる。24Hサポートへのアップグレードオプション有。さらに複数年利用割引やボリュームディスカウントがある。Guest OSは別途。また商用版にはHPが開発したSDN Controllerと分散ストレージStoreVirtual VSAが含まれる予定だ。
時はまさにOpenStackの普及前夜である。

2014年7月2日水曜日

価格破壊が始まった! -Googleはクラウドで勝ち残る-

Google I/O 2014(6/25-26)が終わった。
 思い起こせばGoogle Cpmpute Engine(GCE)が登場したのはGoogle I/O 2012だった。GCEはすぐに限定リリースが始まったが、一時期、社内基準をクリア出来ずサービスを停止。そして2013年4月正式リリースとなった。このGCEサービスはGoogleが満を持して投入したIaaSだ。そして前回レポートのGartner Magic Quardrant分析でもはっきり頭角を現して来た。しかしAmazon EC2が登場して7年以上が経つ。完璧な周回遅れだ。果たしてGoogleはこの劣勢を挽回できるだろうか。答えはYESだ!彼らには秘策がある。思い出してほしい。あの一世を風靡したBlackberryがApple iPhoneの登場と共に首位の座を奪われると、すぐにGoogleからAndroidが出た。これによって市場は再度シャッフルされてAndroidが首位に立ったことを。

=Googleはどのくらい劣勢なのか=
ともあれ、Googleはどれくらい劣勢なのだろう。
Synergy Research Groupの報告によると、昨年度、MicrosoftとIBM、Googleの3社の売り上げはほぼ倍増したが、この間Iaas/Paas市場は世界で46%成長し、 Amazonはシェアを55%伸ばしたと言う。下図で見ると、3社合計にSalesforceのPaaSを加えてもAWSに15%程度足らない。つまり、現時点では、Amazonが独り勝ちの状況なのだ。

これほど離されると挽回は不可能なのか。いやそうではない。前回触れたようにクラウド市場はやっと裂け目を超えて、本格市場の開拓に入ったところだ。これまでの市場はAmazonが作り出し、そのレールを突っ走ってきた。つまりEarly Adopterが対象だった。これからの本格市場の中心はエンタープライズだ。ここでは大きな実績を持つIBMやMicrosoftが有利だし、さらにはVMwareだってかなりの実績がある。Googleの場合は、大企業は多くはないがスタートアップなど中小企業を中心としたシェアを持っている。それにデベロッパがGoogleに寄せる信頼は絶大だ。シリコンバレーでは有償のGmailに企業ドメインを使い、Google Documentでドキュメントやスプレッドシート、プレゼン資料を作成するのは当たり前のことである。
=秘められた作戦=
口の悪いアナリストは、「今は絶好調だがAmazonは所詮はインターネットの本屋。それに比べてGoogleはインターネットのオールラウンドプレイヤだ。彼らが本気になれば、その実力と総合戦略には歯が立たない」と主張する。GCEが発表された次のGoogle I/O 2013でGoolge Cloud Platformが登場した。このプラットフォームは、GCEをIaaS、App EngineをPaaS、それにCloud Storageを加えて体系化したものだ。そして今年2月のGoldman Sachs Technology and Internet ConferenceでGoogle CFOのPatrick Pichette氏がGoogle Fiberの世界展開について言及した。Google Fiberとは2011年からKansas Cityで始まった高速インターネットプロジェクトのことだ。氏は現在の1GBから10倍の10GBに上げ、ここ3年で世界展開を目指すと説明した。これこそが市場奪還の起爆剤なのだ。知っての通り、Googleのデータセンタ群は専用の高速ネットワークで繋がれ、検索やMapsなどあらゆる地域に住む我々の要求を瞬時に満たしてくれる。彼らのデータセンタはひとつのセンタがひとつのコンピュータに見える設計だ。このようなセンタを超高速で結合することにより、全てのリソースは論理的にひとつとなって、世界最大のクラウドとなる(詳細はここ)。Google Cloud Platformはこの超高速ネットワークの中に他のサービスと共存する。勿論、Google Fiberの目的は、先週のGoogle I/OでAndroid関連の話題(Android L、Wear、Auto、TV、One)が賑やかだったように、テキスト/画像から動画/音楽などのストリーミングに向かうユーザ/デバイス性向を満足させるためのものである。しかし、これはGoogleクラウドにとっても最高のプレゼントだ。これが出来れば、まさに在りし日のSunが社是とした「The Network is the Computer」そのものとなる。こうなればGoogleのクラウドは、①もうリージョンやコンテンツ配置はあまり気にならないし、②クラウドアプリはMapsやBigQueryなどのサービスとバックエンドで高速連携ができる。そして、近い将来デベロッパはGoogleサービスの全てを利用することが出来るだろう。③幾つかのベンチマークによる結果(例1、例2)はGCEの圧倒的な高速性を示している。特にPersistent Diskの効用やI/Oの高速性は素晴らしい。④さらにオープンソースのDockerやFluentdなどの整備も進んでいる。念のため、DockerはUnixやSolarisでは一般的だった軽量のコンテナ型仮想化技術、Fluentdはログ収集管理に威力を発揮するシステムだ。そしてクラウド戦略で、⑤もっとも重要なのは費用だ。Amazonに比べ、課金時間単位(Amazonは1時間、Googleは10分)やその利用料でもGCEは絶対優位にあるし、メータリングの観点からみてもVMのBootやRestartはGCEが圧倒的に早い。

 

=Amazonの戦略=
Googleが勝ち残るには何としてもAmazonの上を行かなくてはいけない。
Source: SiliconANGLE
Amazonのこれまでの成長過程を見ると、まずインフラを整備し、低価格でユーザを呼び込み、便利な機能を提供して利用を促進させ、さらにインフラを増強する。そして設備の効率化を図り、さらにコストを下げる。Amazonはこれまで価格改定を42回行ってきた。ということは、このサイクルをそれだけ回したということだろう。Googleがこの戦略に打ち勝つには決定的なアドバンテージがいる。ひとつはGoogle FiberやPersistent Diskに代表される高速性。もうひとつは徹底した低価格化だ。
  
 =価格破壊が始まった!=
今年3月25日、Google Cloud Platform Liveで30~85%という大幅なPrice Cutが断行された。これに即応し、翌日、Amazonからも新価格が出た。まさに価格戦争の始まりである。Googleの発表内容は、通常利用の値下げ(On Demand Price Reduction)と継続利用時の割引(Sustained Use Discount)の2つだ。まず前者(On Demand Price Reduction)を個別にみると、①Compute Engineの全インスタンスで32%値下げ、②App Engineは料金体系を簡素化し、インスタンスあたり37.5%、Dedicated Memcacheは50%、Datastore Writeは33%の各値下げ、さらにSNI SSLやPageSpeedなどの機能は無償。③Cloud Storageは¢2.6/GBとなり平均ユーザでは約68%の値下げとなる。④ビッグデータ解析で有効なGoogle BigQueryは85%カットだ。後者は、⑤継続利用割引プログラム(Sustained Use Discounts)となって、1ヵ月の25%以上の期間でVMを使用すると自動的に同割引プログラムが適用される。もし1ヵ月間使用し続けるとさらに新価格より30%の値引きだ。これは旧価格に対し合計で53%の値引きである。つまり、Webアプリなどの常時アップしている業務では半値となったのだ。完全にAmazonに対する挑発である。このGoogleの値下げは今回だけにとどまらない。先週、MapReuceの後継と目されるCloud DataFlowを発表したクラウド担当Senior VPのUrs Hölzle氏は言う。「クラウドは、本来、前金なしで使用料だけ払えばVMを使えるシンプルなものであるべきだ。ハードウェアはここ数年で20~30%下落している。しかしPublic Cloudは6~8%程度しか下がっていない。つまり、普通で考えてももっとカットすべきである。」
そして、「クラウドの機能を複雑にするのはデベロッパを縛ることになる。それより重要なのは、CPUやディスク、ネットワークの早さや革新的技術の提供、そしてユーザ本位の課金だ」と暗に指摘する。
Googleが仕掛ける価格戦争にAmazonがどう対応するのか。
エンタープライズを得意とするプロバイダはどのように市場開発を進めるのか。
いよいよ本格的な第2ラウンドが始まった。