2010年8月18日水曜日

Top 10 Cloud Players-その9 
       -HadoopをサポートするCloudera-        

「米国クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の9回目。
今回は並列処理のHadoopをサポートするClouderaを取り上げる。

◆ Hadoopをサポートするクラウデラ(Cloudera)

グリッドコンピューティングにとって並列処理は欠かせない。
グー グルで稼動する巨大な検索エンジンはまさに並列処理の塊だと言っていいだろう。基本となるGFSは高信頼分ディスクシステムであり、それの上で効果的に並列処理するのはMapReduceだ。そしてこのオープンソースクローンと してYahoo! Labが開発したのがHadoopである。その後HadoopはApache財団に寄贈されてプロジェクトとなり、2008年10月にはそのHadoopを商用でサポートするClouderaが動き出した。立ち上げたのはGoogle、Yahoo!、Facebookのシリコンバレー3人組である。そしてその3人を束ねてCEOとなったのはMichael Olsen氏 だ。Berkeley DBの組込み版SleepyCatのCEOだった人物である。

さて
HadoopではGoogleのGFSが「Hadoop Distributed File System」に置き換わり、その上に「Hadoop MapReduce」とGoolgeのデータ処理Big Tableに相当する「hBase」がある。また大規模データセットの並列処理言語にはこれもヤフーラボが開発したPigHiveがある。どうやってYahoo!がHadoopの開発に至ったか、このあたりの事情は以下のようである。

従来型のデータ処理では膨大か
つ多様な処理体系をもつバックエンドのデータを取り上げて順次処理する。この方式の効率改善のために処理系を並列化したコンピュートグリッドが考え出された。この時期"Nutch"と呼ばれるウェブ検索エンジンを開発していたDoug CuttingとMike Cafarellaの2人組みのエンジニアがいた。彼らはGoogleがちょうど発表したGFSとMapReduceの論文を目にし、早速飛びついて開発に没した。一方Yahoo!内部でも検索エンジンの効率化のためのプロジェクトがあり、このメンバーも論文を読んだ。選択は自力開発か外部から探すかだった。こうしてDoug (現Cloudera Architect)がYahoo!にスカウトされてHadoop開発が本格化した。

ClouderaのビジネスモデルはHadoopを普及させるコンサルテーションである。
中核となるのは分散処理を受け持つHadoop MapReduceだが、入力されたデータから最終的な結
果を得るには必要な情報を抽出する"Map"、抽出データを結合して並び替える"Shuffle"、それらをまとめて結果を出力する"Reduce"のステップがある。これらをどのように扱うかで処理効率は大きく違う。全てはエンジニアの腕前次第である。このために同社が提供するのがSoftware SetとSupport & Professional Service、そしてTraining & Certified Programだ。Clouderaの提供するSoftware SetはCloudera Distributionと呼ばれ、Hadoopに加えてCoordination Serviceの"Zookeeper"やData Integrationの"Sqoop"、Data Flow Languageの"Pig"、SQL風のQuerryの”Hive"、高速リードライトの"hBase"、Work Flowの"0ozie"、それに関連SDKとUser Interfaceを提供する"Hue"などが含まれている。

このCloudera DistributionはLinuxで普及しているRPM形式で配布されるので容易にインストールできる。さらにこの上位に、実行時のProvisioningやConfigurationなどのManagement Toolを付加したものをCloudera Enterpriseという。次にProfessional Serviceではこれらのツールを用いて企業ユーザーのデータセンターやAmazon、Rackspace、VMwareのvCloudなどへの適用を支援する。トレーニングはデベロッパーとアドミニストレータ向けがあり、資格認定制度がある。

Hadoopを使いこなすには相当のスキルがいる。
この難しさを解きほぐすのがClouderaのビジネスだ。しかしこれらのコンサルテーションサービスをこなすのは彼ら自身だけでは十分ではない。そのためのパートナープログラムがあり、主にビジネスインテリジェンスやデータハウジングを手がけているベンダーたちが多い。PentahoMicrostrategyJasperSoftGreenplumなどだ。データインテグレーションではTalendVerticaなども参加している。

2010年7月28日水曜日

Top 10 Cloud Players-その8 
             -オープンクラウドを目指すラックスペース-

「米国クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の8回目。
独立系大手ホスティング会社のRackspace(本社:テキサス州サンアントニオ市)の人気は高い。アマゾンに次いでパブリッククラウドでは2位につけているはずだ。今回はこのユニークな会社を取りあげる。

◆ 自由な雰囲気とユニークな発想
同社の前身はISP、その後Webホスティングに進出、1998年に総合的なホスティングを扱うRackspaceとなった。この流れの中で夢を追う2人のWebデベロッパーがいた。彼らは顧客の多くが自営システムからホスティングに移ってきたように、いずれは専用マシンや機器を間接的とは言え保有することを好まない時代がくると考えていた。会社は彼らの夢に賭けて2006年、実験事業のMossoを立ち上げた。これが同社のクラウドの始まりである。Amazon S3の開始は2006年3月、EC2は同8月、テキサス州サンアントニオの暑い夏の戦いである。その後、2008年にMossoブランド止め、現在のRrackspace Cloudとなったが、同社が提供する現在のCloud ServersCloud FilesCloud Sitesの3つうち、FilesとSitesは今でもMossoの技術である。ここでCloud Serversは仮想マシンのEC2に相当し、Cloud FilesはS3対応であり、Cloud SitesはWebホスティングだ。そして2008年10月、オンラインバックアップサービスのJungle Disk、続けてVirtual Machine ProviderのSlicehostを買収した。このSlicehostとは格安の仮想マシンを提供するユニークな会社である。同社のホームページには現在の仮想マシン相場料金表が掲載されており、利用するデベロッパーはその中から選んでも良いし、自分でCPUやメモリー容量を指定して申し込んでも良い。しばらくするとeメールで申し込んだ仮想マシンが準備できた旨の知らせが来る。つまり中央の大型サーバーをスライスしながら仮想マシンを作りだすが、できるだけ無駄をなくすため要望を纏めて処理したり、要らなくなった仮想マシンをすぐさま売りにだすなどの工夫がある。これによって隙間無く仮想マシンを走らせ廉価な提案ができあがる。
現在のRackspace Cloud ServersとSlicehostのプラットフォームはXenによる仮想化で同一テクノロジー基盤となり、しかもClicehostは一部親会社Rackspaceのデータセンターを利用している。Jungle Diskの方も当初はバックエンジンとなるクラウドストレージはAmazon S3だった。買収後、ここでも親会社のデータセンターを採用し現在、ユーザーはどちらか選ぶことができる。こうして親会社も子会社も出来るだけ良いものは互いに採用し合い、ファシリティも共用するユニークな経営が続いている。
同社にはもうひとつ面白い話がある。ギークのためのギークの会社、ServerBeachだ。この会社を始めたのはRackspaceを興したRichard Yoo氏。氏はMossoと同じようにこれからの時代はストリーミングに向かうとして活動していたプロジェクトをスピンアウトさせた。2002年のことである。氏の読みは当たってYouTubeのビデオホスティングに成功。YouTubeは2005年、PayPalの3人のエンジニアが考え出したアイデアで始まった。人気は瞬く間に広まり、翌2006年10月、Googleが16.5億㌦で買収したのは知っての通りである。あのわからず屋のYouTubeを相手に初めての大規模ビデオホスティングをしたのだから彼らの腕前の程は判るだろう。

◆ Amazonとはここが違う
Rackspaceを使って、Amazonとの差ですぐ気が付くのはその構造である。
Amazonの仕組みは基本となる仮想マシンのEC2にESBやS3、VPN、CloudFront、Load Balancerなどを組み合わせて使用する。AWSは必要なモジュールをビルディングブロックのように組み上げるSOAのようなものである。これに対しRackspaceはServersとFiles、それにSitesだけ、とてもシンプルな構造だ。しかしEC2に対応するServersにはAPIが公開されており、これを使えば外部から仮想マシンを制御することができる。例えばインスタンスの起動前に新たな情報を挿入して稼働環境(リサイズ、サーバーイメージの変更など)を再設定することが可能だ。同様の手法でEC2でおなじみのDrag&Dropでプロビジョニングを実行するRightScaleがRackspace Cloud用を開発、仮想アプライアンスのrPathからもソフトウェアアプライアンスで仮想マシンイメージを作成して置き換えるシステムなどが出てきた。また近々、iPhoneからこのAPI経由でRackspace Cloudのリモート監視も可能となる模様だ。
こうしてみると、Amazonは多様なモジュールを提供してデベロッパーに利便を与えているが、別な見方をすればそれらはAmazon固有のものでオープン性に欠け、ユーザーは他のクラウドには乗り換えられない。一方、Rackspaceはシンプルであるが故に自由度が高く、他のクラウドへの移行も基本的な問題は生じない。


◆ NASAのNebukaと立ち上げたオープンスタック
7月16日、Rackspaceはとうとうオープンソース化を決め、OpenStack Projectを立ち上げた。プロジェクトに寄贈したのはCloud ServersとCloud Filesのコードだ。そしてパートナーがシリコンバレーのNASA Ames Research Centerと決まった。Amesではオープンガバメント計画の一環としてNebulaが動いている。Nebulaとは“星雲”、まさにNASAにふさわしいクラウドだ。しかもこのクラウドはすべてがオープンソースで作られている。立ち上がったオープンスタックには2つのプロジェクトがある。“Compute”と“Object Storage”だ。基本検討が終わった現在、ComputeにはNebulaが採用され、Object StorageにはRacspace CloudのFilesが用いられることになった。共に初期コードのリリースは今年9月。この計画が本格化すればプブリッククラウド間の連動やアプリケーションの移動も大幅に改善される。クラウドの次世代への期待がこめられているプロジェクトの始動である。
(関連記事:連邦政府のクラウド計画(3)-Data.govからNASA Nebulaまで

2010年7月8日木曜日

Top 10 Cloud Players-その7 
                   -国防総省のRACEクラウド-

「米国クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の7回目。
今回は前回の連邦政府のクラウド計画に関連し、DoD(Department of Defense)の情報処理担当部門DISA(Defense Information Systems Agency)が始めたクラウドコンピューティング-RACE(Rapid Access Computing Environment)-について取りあげる。

RACEプロジェクト
RACEはプロジェクトは国防総省DoD傘下のDISAが始めた"Cloud Computing Initiative"が始まりである。それ以前からDISAではOnDemandサービスを提供していたが、クラウドの時流に沿って改訂した。開発パートナーはHP、本番開始は2008年10月からだ。まず、デフェンス関連の
デベロッパーに新しいアプリケーションの「開発環境」を提供すること、これが第1ステップだった。彼らの仕事で他のコマーシャルと大きく異なるのは安定性とセキュリティだ。この段階で俗にいう可用性のSLAは99.999%を達成した。この値はAmazon EC2(99.95%)やGoogle App Engine(99.9%)と比べても高いし、ほぼ100%だ。しかしこのために、自由なサイズの仮想マシンは制限され、柔軟性という面では課題もあった。提供された仮想サーバーは1CPUに1GBメモリー、そして50GBのストレージ付き、提供OSはRed HatとWindows、ソフトウェアスタックは共にLAMP (OS+Apache+MySQL+ PHP)である。ハードウェアはHPブレードサーバー、仮想化はVMWareを使用。使用料金はサーバー当たり$500/月で、利用部署はクレジットカード払いができる。第1段階では作戦指令制御システム(Command and Control System)や護送制御システム(Convoy Control System)、衛星プログラム(Satellite Program)などの開発やテストが行われた。

 RACEの第2ステップ
そして1年後の昨年10月から第2ステップが始まった。
今度は「本番環境」に向けたものである。提供環境は第1ステップと同じWindowsとLinux
のLAMP環境、しかし本番で利用できる仮想サーバーはかなり自由になり、CPUは1~4CPU、メモリーも1~8GB、ストレージは10GB単位で1TBまで拡張が可能となった。利用料は基本$1200/月~からだ。そしてユーザ-各自がカスタマイズできるStoreForntも一新して、まるでiGoogleのようになった。勿論、セキュリティは完璧である。まず基本的にターミナルからのアクセスは通常DoD職員が持つCommon Access Card(CAC)とPKI証明書によって確認される。その他、契約企業の社員などはDISAが発行する他の証明があればアクセスが可能だ。RACE自身はDoDの管理するDefense Enterprise Computing Center(DECC)のゾーンBに置かれているので、CACのチェックが終わると次にDECCのセキュリティーを受け、その後、初めてゾーンBに入ることが出来る。DECCでは利用する業務やユーザーによってゾーン管理が施され、それぞれにふさわしい設定が行われている。


◆ DoDのオープンソース、Forge.mil

オープンソースの世界ではSourceForgeが有名だ。ソースコード管理は勿論、プロジェクト管理からコラボレーションまで全てができる。現在25万プロジェクトが利用しているというから世界最大のコラボ開発システムであることは間違いない。そのSourceForgeのDoD版がForgeプロジェクトのForge.milだ。2008年、RACEと歩調をあわせるようにスタートした。RACEはIaaSだけでなくPaaSを担当し、Forge.milはSaaS領域をカバーする。実際、RACEでは仮想サーバーだけでなく、仮想デスクトップやGrid Computingも一部始まっている。これらを総称してIaaSとし、仮想サーバーではその上にLAMP、
さらにソリューションスタックを乗せてPaaSに発展させる意向である。Forge.milには“Software”、“Project”の2つのプロジェクトが現在動いているが、今後は“Test”、“Certification”、“Standards”の3つが予定されている。ここで“Software Forge”はDoD関連職員によるコラボ開発を支える機能であり、これによってSaaSアプリケーションの品揃えを図る。もうひとつの“Project Forge”はプロジェクト管理に留まらずALM (Application Lifecycle Management)を担当する。使い勝手においてSourceForgeに慣れた人なら、Forge.milがまったく同じ機能だとすぐに気がつくだろう。実際のところ、
CollabNet社のTeamForgeが採用されているからだ。


こうして見ると、DISAのRACEとForge.milには考えさせられることがある。
連邦政府が始めたApps.govとの重複だ。Apps.govでは現在、IaaSが棚上げとなっており、この取り扱いがApps.govの評価、さらには運命を決めるかもしれないからだ。RPQが再提出されていることは前回述べた。しかし、こういう声もある。DISAのシステムを一般化してApps.govに採用したらどうかと。

関連記事: 連邦政府のクラウド推進計画(3)-Data.govからNASA Nebulaまで-



2010年6月28日月曜日

Top 10 Cloud Players-その6 
               -連邦政府のクラウド計画アップデート-

「米国クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の6回目。
そして予告通りに民間ビジネスばかりでなく、今回は連邦政府のクラウド計画-Federal Cloud Computing Initiative-を取りあげた。理由は、この計画が民間のクラウド化を先取りするもので、成功すれば波及効果が大だからだ。加えて、連邦IT予算のコスト削減にも大いに寄与する。しかしながら、道のりは平坦ではなく、かなり問題も抱えている。そこでアップデートとして、その後の動きや課題などについて整理を試みた。


◆ 計画立案から実行へ(ステップ1)
連邦政府のクラウド計画が動き出したのは昨年の3月だった。
オバマ大統領就任後、連邦政府のCIO(兼ホワイトハウスCTO)となったVivek Kundra氏が精力的に動き、4月にはCIO Cloud Computing Management Officeを開設。これが連邦政府のクラウド推進部隊の原点である。その後、5月にはNISTによるクラウドの定義が終わり、これを受けて実行部隊である一般調達局GSA(General Service Administration)から各社に情報要求RFI(Request for Information)をオープン、
7月には提案依頼RFP(Request for Proposal)が出された。こうして連邦政府のクラウドApps.govが昨年9月にスタートした。短期間の離れ業である。

このシステムの受注に意欲的だったのは特に2社、Terremark WorldwideとSavvisだ。特に最大手のデータセンタービジネスSavvisを追うTerremarkは必死だった。何としてもこれを 受注し、連邦政府内での実績に弾みをつけたいところだ。そして昨年6月、TerremarkはVMwareから$20Mの投資を受けた。この資金の直接の目的は、受注のためのデータセンター投資に向けたもののようだったが、VMware側にもはっきりした理由があった。同社の戦略が企業向け仮想化ビジネスの飽和に伴い、次なる目標をデータセンターのクラウド化に定めていたからだ。所謂、vCloud Initiativeである。つまり、Terremarkにこのクラウドを受注させ、VMaware基盤を使ったモデルに仕立てることであった。これに先行し、Terremark自身は昨年5月、GSAの運営する連邦政府の総合情報ポータルサイトUSA.govと連邦政府の情報公開サイトData.govも稼動させていた。これだけの実績を持ち、かつVMwareからの投資も受け、万全の体制で臨んだが、結果はダメだった。Savvisが競り勝ってApps.govの受注に成功した。


◆ 抱える課題(ステップ2)
こうしてApps.govは鳴り物入りで始まり、9ヶ月が過ぎた。
動き出したシステムは期間的な問題もあって、幾つかの課題を抱えている。現在、ストアフロントから提供されているサービスは既存SaaSアプリケーションやWebアプリケーションの寄せ集めだと言ってもよい。ただ解っていることは、まだ過渡期にあり、評価はまだ先だということである。最大の課題はApps.govにおけるIaaS機能の提供だ。これは昨年7月末に費用見積もりRFQ(Request for Quotation)が出されたが、条件提示が上手く機能せず、今年2月にキャンセルになった。現在のサイトを見ると“Coming Soon”となっているままだ。


そして今年6月中旬、新たなRFQが示された。これと呼応するかのように、これまでのFederal Cloud Computing Initiativeは、最近名前を変えた内務省(Department of Interior)の市民サービスと革新技術事務所-Office of Citizen Services and Innovative Technologies-の一部となり、内務省CIOのSanjeev “Sonny” Bhagowalia 氏がリードすることになった。この組織とリーダーの変更がこれまでこの計画を推進してきたKundra氏の失点となるのかは定かではない。氏は首都ワシントンのあるコロンビア特別区のコンピュータ更新を監督し、連邦政府のCIOに就いたばかり、まだ若干36歳である。

◆ これからの展開(ステップ3)
Apps.govの本番が始まる際、Kundra氏は、クラウドでこれからのIT 環境が変わるだけでなく、大きな節税にもなると説明した。GSAの担当者はアプリケーションはダウンロードタイプも入れれば170になるという。しかし、実際問題として、多くの省庁の出先はまだセキュリティー不安や適用に対する懸念などから様子見の段階を抜け出ていない。ちょうどこの時期、組織のウェブサイトを改定中だった連邦通信委員会FCC(Federal Communications Commission)ですら積極的にApps.govを検討したが、最終的にはベンダーとの直接交渉へと進んでしまった。今回、推進担当となった内務省ではApps.govのWebメールの検討が始まっている。これまで同省では14の異なるメールシステムが動いていたが、これをApps.govで統一しようというものだ。このような地味な努力の積み重ねがない限り、ただ新しい仕組みだけを提示してもなかなか実行が伴わない。Kundra氏は、今年2月、Apps.govとは離れて、各省庁に廉価で具体的に現場が使えるクラウドコンピューティングの調査と1,100ヶ所ほどあるデータセンターの統合案の作成を指示する別な手を打ち出した。

目下の問題は再提示されたIaaSのRFQである。
新しいRFQは3月22日に公示され、5月に入って一部修正、回答の締め切りは未定となっている。今のところAccenture、BMC、Harris、SGI、SunGardなど20社が興味を示し、これからが本格的な検討となるが、上手く処理して実現させなければならない。
並行してこんな話もある。Apps.govのIaaS機能に関連し、NASAやDoDが進めているクラウドとの関係がどうなるかという心配だ。NASAのNebula、DoDのRACE(Rapid Access Computing Environment)は既に稼動ベースであり、Apps.govがIaaSを提供すればユーザーを取り合うことになりかねない。もし、これらと調整をつけるということになれば、Apps.govとNeburaなどが連動する可能性も残されている。

<関連記事>
連邦政府のクラウド推進計画1-Federal Cloud Computing Initiative
連邦政府のクラウド推進計画2-NISTクラウド定義とGSAの要求仕様
連邦政府のクラウド推進計画3-Data.govからNASA Nebulaまで

2010年6月14日月曜日

VMwareのSpring拡大戦略
                  -Salesforce、そしてGoogle-

このところVMwareの動きが気になりだした。
4月末にはSalesforceと組んでVMforceを発表し、5月中にはGoogleと提携した。
いずれも8月末に予定されているVMworld 2010に向けてのシナリオ作りの予感がする。思えば昨年夏、同社はJavaデベロッパーに人気の高いSpringフレームワークのSpringSourceを買収し、そのSpringSourceは昨年4月にオープンソースのシステム監視として多くのファンを持つHypericを買収、さらに同8月にはCloud Foundaryも買収、VMwareが何か大きな構想を抱えていることを伺わせた。(関連記事


-vCloud Initiativeは上手く行ったか-
VMwareが一般企業向け仮想化技術で圧勝していることは知っての通りである。
しかし米企業の宿命でこれだけでは許されない。次の大きな柱を開拓しなければいけないからだ。そして2008年のカンファレンスで発表されたのがvCloud Initiativeだった。このイニシアティブは次なる市場をデータセンター業界に定め、そのための製品開発や諸環境を整えて行くもので、簡単な話、ホスティングなどを手掛けるデータセンターにクラウド化を勧め、その中でVMware製品を使って貰おうという戦略だ。当初の参加企業は100社以上に達し、昨年6月には、Terremark Internationalに$20Mを出資し、モデルユーザ化を図った。折りしも連邦政府のクラウド計画が進んでいる最中である。

この計画が成功すれば中小企業ユーザーを囲い込むことが出来る。
大手企業にはすでにVMware製品が行き渡り、中小企業にはデータセンターを通して普及させる。さらに上手行けば大手企業の新規業務やオンプレミスのオーバーフローも拾えるかもしれない。このためのFedearationやVMware Fault Tolerance機能がvSphere 4で整備され、昨年のVMworld 2009ではクラウドユーザー向けのシステム管理vCloud Expressも披露された。しかし、その後、クラウドツールのOpenNebulaやプロビジョニングのRightScale、クラウドSIerのenStratusなどがvCloud Express APIのサポートを表明したが思ったほど加速していない。vCloud Expressはユーザー用のWebベース管理ツールだが、それとペアになるデータセンター運用は、企業向けクラウドとビジネスとして大規模に展開するプロバイダーでは大きく異なる。事実、これらの要因と仮想化の負荷を勘案し、殆どの大手クラウドプロバイダーはXenを採用し、運用管理はオープンソースのXenと連動させて開発した自社物である。5月中旬のCitrixカンファレンスでは、vCloud Initiativeのメンバーで大手ホスティング業者のRackspaceがXenServerに乗り換えると発表、VMwareにとって大きな痛手となった。
新たな模索が始まった。

-Salesforceとの提携、VMforce-
VMwareとsalesforceは両社の技術を組み合わせることで合意し、4月末、VMforceの発表会を開催した。この発表会には両社のCEOが登壇する意気込みで、Salesforceの期待はSaaSアプリのCRMから脱却して次なるビジネスのForce.comを推進すること、VMware側は同社技術を提供してVMwareの影響力を拡大することにある。両社の宣伝はともかく、ポイントはSpringだ。VMwareの買収したSpringをforce.com上でvSphereと共に展開し、一方でForce.comが提供するデータベースや各種のプラットフォームサービスを合わせて提供する。つまり新しいJava向けPaaSサービスの提供だ。対象はエンタープライズのJavaデベロッパーたち。Javaデベロッパーにとって期待の星だったサンのOpen Cloud Platformはオラクルによる買収で姿を変えてしまった。そこでファンの多い彼等にSpringに注目させて、クラウド環境でも容易に開発が続けられるようにしょうというわけである。



-GoogleとSpringで提携-
GoogleとVMwareの提携は前回Google I/O 2010の中で説明した。
Googleにとっては、Springが出遅れていたエンタープライズ市場に打って出る力となり、またVMwareとの協業で仮想環境におけるアプリケーションのポータビリティを高めることが出来る。VMware側の期待はGoogle AppEngine for Businessを通して同社の影響力を強めることだ。幸い、Googleはどこの仮想化技術も使っていない。

Springフレームワークとは、もともとオープンソースとしてJava普及のためにRod Johnson氏 がExpert One-on-One J2EE Design and Development(Wrox Pressより2002年10月に出版)と共にリリースしたのが最初である。その氏は現在、VMwareのSpringSource部門ジェネラルマネジャーとして活躍している。時代が変わり、オープンソースのSpringが今やVMwareビジネスの拡大の武器として扱われているのは何とも皮肉な話である。

2010年6月8日火曜日

Google I/Oカンファレンス

5月19~20日、今年で第3回目になるGoogle DeveloperカンファレンスGoogle I/O 2010がサンフランシスコ・モスコーンセンター西館(Moscone Westで)開催された。今回は各種のトピックスが多く、ここではクラウドだけでなく、関連する話題についても纏めてみようと思う。


◆AppEngine for Business(ビジネス向け)
まずクラウド関連ではAppEngineのビジネス向けGoogle AppEngine for Businessが発表された。この企業向けではアプリケーションの全てを管理コンソールから集中管理し、SLA=99.9%のアップタイムを保証する。利用料金はユーザー当たり8㌦/月で上限は1,000㌦/月、サポートは以下の通り。現在はプレビュー版の限定リリースだ。

またAppEngine for Businessは、これまでのGoogle Big TableやData Storeだけでなく、SQLデータベースへの対応やセキュリティ強化からSSL機能も追加する計画だ。

◆クラウドでVMwareと提携
Googleはさらに今後の強化策として、「アプリケーション・ポータビリティ」を高めるためVMwareグループとの提携も発表した。この提携によって、VMware基盤のクラウドやAmazonなどへのアプリケーションの移植性を高めることを狙う。また昨年夏にVMwareが買収したSpringSourceもポイントとなる。承知のようにSpringはJavaフレームワークとして多くのファンを持ち、開発ツールのSpring RooGoogle Web Toolkitの統合や、さらにSpringが昨年春に買収したHyperic (SpringによるHyperic買収記事)のパフォーマンス追跡ツールHyperic HQSpring InsightGoogle Speed Tracerの連携などに取り組む。

Storage Serviceもアナウンス
Amazon S3対抗のStorage Serviceもアナウンスされた。これまでGoogleのクラウドストレージはJavaやPython、さらにはGoogle Docs/Apps/Gmailなどからの専用APIだけであった。今回発表されたGoogle Storage for DeveloperはAmazon S3などとの互換ライブラリーを持つ。当面は米国内に限り、プレビュー利用は100GBのストレージと300GBのデータ転送帯域幅が無償だ。このストレージサービスの最大の特徴は、GoogleのGFS上に展開される高信頼性ファイルであり、しかもs3互換となる点である。正式リリース後の費用は、1GB当たり17¢とAmazon S3やWindows Azure Storageの15¢よりやや高い。またアップロードは10¢/GB、ダウンロードは欧米が15¢/GB、アジアは30¢となっている。
   参考記事: Googleのストレージ戦略を読む-1-GFSの改良
           Googleのストレージ戦略を読む-2-Datacenter as a Computer
           Googleのストレージ戦略を読む-3-Googleらしさとは何か

Appleは敵か!
さて話は脱線するが、このところ、シリコンバレーではiPhoneの好調を尻目に、Appleへの批判が目立つ。カンファレンス2日目のAndroidについてのキーノートは強烈だった。エンジニアリングを率いるVPのVic Gundotra氏は、AndroidチームリーダーAndy Rubin氏の話を引用しながら、なぜAndroidがオープンソースでなければならないのかを説明。現在Androidによってモバイルソフトウェアは開放され、あらゆるレベルで革新が進んでいることを力説した。一方で、「一人の男、ひとつの会社、ひとつのデバイス、ひとつのキャリアが唯一の将来への選択(a future where one man, one company, one device, one carrier would be our only choice)」なら、そんなものは要らないとAppleを攻撃し、喝采を浴びた。iPhoneへの宣戦布告である。

iPhoneとAndroidの対決の一方で、Steve Jobs氏のAdobe嫌いも有名だ。
氏は市場でもっとも普及しているAdobe Flashを嫌って、Apple製品への搭載を認めない。Apple製品の全てをコントロールするのは自分だと言わんばかりだ。そのAdobeが5月13日付けでシリコンバレーのSan Jose Mercury紙に出した前面広告「We love Apple」がある。曰く、「私たちはAppleが好き・・・Webが好き、Flashが好き、HTML5が好き・・・好きになれないのは、新しいWebエクスペリエンスや、何をどう作るかなどの選択の自由を奪う人」。この広告はシリーズキャンペーンで今後も続き、一連の対決姿勢は一段とエスカレートしそうな気配である。

WebMプロジェクト
このようなAppleとのバトルの中で、カンファレンスではGoogleが主導し、Adobe、Mozilla、Operaが参加するオープンソースWebMプロジェクト始動の発表があった。このプロジェクトは重要な意味を持つ。AppleはAdobe Flashを排除し、HTML5とそのコーデックH.246を強力に支持、全製品でサポートしている。これによってFlashは要らないというわけだ。しかしながら、H.246のパテントは動画のMPEG-LAコンソーシアムが持ち、今年2月の発表では、2015年末までは無料、その後は有料となる。WebMはこれに対抗してオープンソース(勿論無料)のHTML対応コーデックをリリースする。このため、Googleは昨年夏買収したOn2 TechnologiesのビデオコーデックOn2VP8をプロジェクトに寄贈した。HTML5対応コーデックには色々ある。例えばMozillaは現在、FirefoxのHTML5対応としてTheora(On2VP3のオープンソース版)を採用している。それはTheoraがOggフォーマットなどで有名なマルチメディアフォーマット開発のxiph.orgによって、On2VP3ベースで作られたオープンソースだからだ。その先はWebM/V8となるのだろう。これにOperaも便乗し、Adobeも賛同した。Adobeの最大の問題は、MySpace、Yahoo!、YouTubeなどの動画サイトをFlash Video (FLV)形式で独占していることだ。「私企業のビデオフォーマットが市場を牛耳っている」、これがAdobeを排除しているAppleの言い分でもある。そのFLVにコーデックをライセンス供給してきたのがOn2だからややこしい。

今回のカンファレンスでは、Android、クラウド以外に、SonyとIntelを従えたGoogle TVといいうオマケまでついた。このWeb TVはWebとTVの融合を目指すもので、組込み型とセットトップボックスがあり、共にAndroidがベースとなる。またまた、当分、Googleから目が離せないようだ。

2010年6月2日水曜日

Top 10 Cloud Player-その5
   -マルチハイパーバイザー管理コンソールのEnomaly-

「クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の5回目。
これまでAmazon、Google、Microsoft、 GoGridを取り上げてきた。このシリーズで記述にた企業の順序は初回に断ったようにランキングではない。というのはクラウドに関連する各種分野から、 実績や影響力、戦略などを加味してピックアップしているからである。今回はプロバイダー向けマルチハイパーバイザーシステム管理コンソールを開発している Enomaly(Canada, Toronto)を取り上げる。

1.  Elastic Computing Platform(ECP)とは何か
Enomalyが最初のElastic Cpmputing Platform(ECP)を出荷したのは2004年だ。サーバ向けの仮想化製品が出始めてまもない時期である。以来、ECPは大規模IaaSを運用する ためのシステム管理コンソールとして、世界中多くの企業が採用している。
周知のようにこ の分野の機能提供は、一般に仮想化ベ
ンダーが担ってきた。旧VMware Infrastructureの後継vSphere(関連記事)、Citrix XenCenterやEssential(関連記事)、さらにはNovellがSUSE向けに提供して いるPlateSpin(関連記事)、Sun xVM Ops Center、Red Hat Enterprise Virtualization for Servers、Microsoft System Centerなどだ。 しかし仮想化でVMwareが圧倒的に強いとは言え、クラウドプロバイダーの多くはXenを採用している。そして彼らもXenだけでなく、VMwareも 補足的に導入しているし、企業ユーザでもVMwareだけでなく、Windows Serverやシンクライアントとの関係からMicrosoftや Citrixの導入も進んでいる。つまり、どれか1社だけを採用しているわけでない。さらには物理的に複数のデータセンターにまたがった巨大クラウドでは これらのツールでは難しい。EnomalyのECPはこうした市場に向けて、ハイパーバイザには依存しない大規模システム管理 機能を提供する。技術的にはオープンソースのlibvirt(仮 想マシン制御ライブラリー)を介して、XenやVMware、KVMなど を制御する。その上でECPは ①ルールエンジンによる最適配置の“Automated Provisioning”、②複数データセンタ適用が可能な“Unlimited Scalability”、③ユーザ別マルチレベル・アクセスコントロールやネットワーク区分化による“Multi-Tenant Security”、④複雑なMonitoring、⑤ユーザ別のMatering/Billingなどの機能を揃え、さらに多様なニーズに対応するため にEnomaly APIを提供、これによってクラウドプロバイダーは自在なアプリケーション開発や自前システム との統合(下図参照)が可能となる。ECP製品はService Provider EditionData Center EditionHigh Assurance Editionの3つに別れ、プロバイダー向けでは、ユーザ運用にポータル経由 のセルフサービスとして ①Customer Dashboard、②VM Management、③Usage Account、④Remote Console、⑤Multi Language、⑥Advanced Disk Management、⑦Flexible Customer Hardware Profile、⑧App Center、⑨Virtual Private Cloudなどの機能を持っている。


2. Intelのクラウドビルダープログラム参加
昨年11月、 Intelはソフトウェアベンダー8社(Citrix、VMware、Parallels、Microsoft、Red Hat、Canonical、Univa UD、Xen consortium)と共に“Cloud Builder Program”を発表した。このプログラムはIntelアーキテクチャー上で、参加各社の技術を用い、サービスプロバイダーやホスティング業者、さらに は大型エンタープライズなどのクラウドを構築するガイドラインを示すものだ。Enomalyはこのプログラムに今年始め参加、その成果をIntel-Enomaly Cloud Deployment Reference Architectureと して発表した。実際の大型IaaS構築ではトレードオフとなる技術的な要件が多々あるが、それらを見極めるために、このガイドラインではIntel Xeon 5500搭載の複数サーバー機にRnomaly ECP Service Provider Edition(SPE)をインストールして各種の分析を加えている。その上で考慮すべきポイントを整理しているので、このような計画を持つプロバイダー は必読だ。

    ( Carrier Grade Deployment Architecture for Enomaly ECP SPE)

3. クラウド普及のパブリック 活動
Enomalyの創業者Reuven Cohen 氏のパブリック活動は素晴らしい。
ECP には初期のものと現行の商用プロダクトの2つがある。初期製品をコミュニティ版のオープンソースECP Community Editionとしてリリースしたのは彼だし、当時はXenを補完する運用管理としての位置づけ が強かった。パブリックな活動に造詣の深い氏は、その後もクラウド普及のた め CloudCampThe Cloud Computing Interoperability Forum などを主導。特 に、クラウドの知識や情報交換を行いながら創造的な議論を重ねることを目的としたCloudCampは人気で、現在も世界各地でクラウドのより良い普及を 目指して月数回のペースで行われている。